オスカー不遇『ワンダーウーマン』監督、『ブラックパンサー』作品賞ノミネートの快挙よろこぶ

第91回アカデミー賞のノミネート作品が出揃った。今年も粒ぞろいだが、大きな話題のひとつとなったのが『ブラックパンサー』の作品賞ノミネートだろう。2018年3月、米国で社会現象ともいうべき大ヒットとなった同作は、アメコミ映画として史上初の作品賞を含む7部門でノミネート。以前「人気映画部門」の創設が発表された際、「『ブラックパンサー』を作品賞から排除するための部門ではないか」と激しい反応が生まれたことがあったが、作品賞へのノミネートによって本作はアカデミー賞の歴史に名を刻むこととなった。
アメコミ映画とアカデミー賞
これまで、アメコミ映画はアカデミー賞において不遇の立場にあった。ここ数年では『スーサイド・スクワッド』が第89回(2016年)にメイクアップ/ヘアスタイリング部門を受賞したばかりで、主要部門からは見向きもされていない。2000年以降の作品としては、かろうじて『ダークナイト』ヒース・レジャーが第81回(2008年)で助演男優賞を、『スパイダーマン2』が第77回(2004年)で視覚効果賞を授かったほどのものである。(視覚効果賞のノミネートは複数あり。『LOGAN/ローガン』は脚本賞ノミネートを果たしたが、受賞は逃していた。)
『ブラックパンサー』は作品賞のほか、作曲賞(ルドウィグ・ゴランソン)、歌曲賞(「All The Stars」)、美術賞(ハナー・ビーチラー)、衣裳デザイン賞(ルース・E・カーター)、録音賞、音響編集賞の7部門にノミネート。同作は黒人中心のキャスト・黒人監督による作品として社会現象を巻き起こしたが、女性監督作品として同じく大きな話題を呼んだ作品があった。2017年公開、パティ・ジェンキンス監督の『ワンダーウーマン』である。
ノミネート逃していた『ワンダーウーマン』

『ワンダーウーマン』は、アメコミ映画史上初の女性監督作品であり、女性監督作品および女性が主役のアクション映画として歴代1位の興行収入記録を打ち立てるなど大ヒット。しかしながら第90回(2018年)アカデミー賞ではまったく候補に入らず、予想外の結果に終わっている。主演のガル・ガドットは当時「決して賞のために映画を作ったわけではないんです。全てを手に入れることはできないと思います」と謙虚な姿勢を語っていた。
それから1年。同じくアメコミ映画から『ブラックパンサー』が、大本命とも言える作品賞に堂々のノミネートを果たしたのだ。主演チャドウィック・ボーズマンも「歴史的な偉業を成し遂げました」と喜ぶこの快挙に、『ワンダーウーマン』パティ・ジェンキンス監督も賛辞の言葉を贈っている。
「どんなジャンルであれ、この(映画という)芸術はたくさんの人の素晴らしい仕事によって出来ているもの。スーパーヒーロー映画がようやくノミネートされたことは素晴らしいことだと思います。それが『ブラックパンサー』であったことも、特に嬉しいです。」
ジェンキンス監督は、ジャンルによってノミネートの扱いにバラつきが見られることに「理解しかねる」と疑問を呈している。この度の『ブラックパンサー』のノミネートは、ジャンル問わず全ての作品に平等な評価を与える前例を作り、新たな潮流を生むことだろう。もちろん、めでたく受賞を果たせばその流れはいっそう強いものになる。
ジェンキンス監督は『ワンダーウーマン』続編『ワンダーウーマン 1984(邦題未定、原題:Wonder Woman 1984)』を2020年6月5日の全米公開として控えている。願わくば、こちらの続編でオスカー像に手をかけて欲しいものである。
Source:Yahoo