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『ローグ・ワン』でも“帝国のマーチ”流れる?怒涛の音楽製作秘話、巨匠たちの影響は

約2ヶ月前、驚きのニュースが飛び込んできた。映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の音楽を担当する予定だったアレクサンドル・デスプラがスケジュールの都合で降板し、代わりにマイケル・ジアッキーノが急遽登板することになったのである。

「ある日電話をもらったんだ。『ドクター・ストレンジ』のスコアリング(作曲)がロンドンで2日間あったから、翌日には飛行機に乗る予定だった。スコアリングの翌日にパインウッド・スタジオに来られないかっていうんだ。その通りスタジオに行って、みんなと会ったよ。彼らは映画を観せてくれた。その映画を持って家に帰ったよ」

『ドクター・ストレンジ』がアメリカで11月4日に公開されたことを考えても、『ローグ・ワン』がいかにギリギリのオファーだったかがよくわかる。現にジアッキーノがオファーを受けた時点で、残された時間は4週間半しかなかったというのだ。

4週間半、怒涛の音楽製作

いまや数多くの大作映画を手がけるジアッキーノにも、4週間半という時間は、映画音楽を1作ぶんつくるには短すぎた。そこで彼は、戦略的に『ローグ・ワン』の作曲に臨んだようだ。

「僕は課題に集中して取り組むのが得意なのさ。作品はとっても、本当に、スゴく楽しかった。アイデアやひらめきが足りなくなることはなかったよ。ずっと心配だったのはスケジュールのことだけだ。だから僕は緻密に計画を立てて考えたよ。“えっと、これが1日で大体できれば、ここが余裕をもって終わるから、必要ならオーケストレーション(編曲)の前に改良の時間がとれるぞ”ってね」

ジアッキーノは自らの誕生日も休まず作曲に打ち込んでいる。しかし楽曲製作そのものは、スケジュールや「スター・ウォーズ」というシリーズのプレッシャーを時に忘れるほど楽しかったらしい。

「毎朝仕事に来て、スクリーンを見ると、ストーム・トルーパーが走り回ってるんだ。すごく楽しかったよ、とてもいい気分だった。僕の一部はスケジュールでイライラしてたけど、残りの部分は“史上最高の仕事だ!超楽しい!”って思ってたね。だからネガティブなことからはすべて距離をおこうと努めたし、そうできたし、楽しかったよ。自分がハッピーになるものを作りたかったんだ。たとえ僕が、ふだん何をしようとハッピーじゃない人でもね(笑)。少なくとも、常にそう努力して作ってるよ」

http://www.ew.com/article/2016/06/28/star-wars-rogue-one-high-resolution-photos
http://www.ew.com/article/2016/06/28/star-wars-rogue-one-high-resolution-photos

『ローグ・ワン』は「すごくエモーショナルな映画」

ジアッキーノは作曲にあたり、ギャレス・エドワーズ監督や、再撮影で大きな役割を果たしたとされるトニー・ギルロイ、ルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディと話し合いを持っている。しかし4人は音楽の話題よりも作品のエモーション(=感情)について語ったようだ。

「いろんな意味で、これはとても素晴らしい“第二次世界大戦の映画”だよ。そこが大好きなんだ。でもその中心には、すごく大きな“ハート”がある。僕が無視したくなかった唯一の部分だ。もちろんアクション映画だし、「スター・ウォーズ」だし、みんなが期待してるものも、愛してるものも全部入ってる。でも忘れたくなかったのは、これがものすごくエモーショナルな映画でもあるってことだ。そこに僕はすごく惹かれたんだよ」

コンセプト・アート http://starwars.wikia.com/wiki/File:Rogue_One_Concept_Art_Celebration.png
コンセプト・アート
http://starwars.wikia.com/wiki/File:Rogue_One_Concept_Art_Celebration.png

その上でジアッキーノは、『ローグ・ワン』の音楽を作る上で心がけたことを話してくれた。

「この映画には嘘を感じなかったのがよかった。リアルだと思ったんだ。僕はそのエモーションを利用できたんだよ、悲しかったり、孤独だったりね。音楽が流れるなか、そうした(エモーションの)すべてが全員の仕事を包み込むのさ。ギャレスやトニー、キャスリーンにとってもそれが大切だった」

やはり映画のエモーションとは、彼にとって重要な要素らしい。ジアッキーノはこう述べている。

「真ん中にエモーションのあるプロジェクトで仕事するのが大好きさ。それも人の手で作られたエモーションじゃないのがいい。でも変な話だよ、まさに僕らはエモーションを作ってるんだから(笑)」

音楽で「スター・ウォーズ」の源流をたどる

キャスリーン・ケネディは、『ローグ・ワン』を従来の「スター・ウォーズ」とは一線を画する作品にしようと試みている。シリーズでおなじみのオープニング・クロールを採用しないというアプローチは、まさにその最たるものだろう。

しかし、それでも『ローグ・ワン』は「スター・ウォーズ」である。そこでジアッキーノは、自らの方法で『ローグ・ワン』の音楽にシリーズの息吹を与えようと考えたようだ。そこで彼が意識したのは「スター・ウォーズ」というシリーズの源流であり、ジョン・ウィリアムズという巨匠の存在だった。

ジョンとジョージ(・ルーカス)が、オリジナルの「スター・ウォーズ」に取り入れたものを拝借したよ。ジョージは『フラッシュ・ゴードン』の古いシリーズ(1930年代版)を参考にしたし、ジョンは自らの基準を手に入れるまでに、グスターヴ・ホルストや多くの作曲家を参考にしてる。オリジナル版の映画で、ジョンは驚くべき“音楽言語”を組み立ててるんだ」

ジアッキーノは、かつてウィリアムズの作り出した“音楽言語”に「敬意を払いつつ、新しさをもたらしたかった」という。しかしその一方で、彼は『ローグ・ワン』にジョン・ウィリアムズによる音楽を自ら選曲しているようだ。

「過去の曲を使いたいって何度か思ったよ。ファンとして、“このアイデアが実現すればスゴい。「スター・ウォーズ」を観るとしたら、これはきっと見たいだろうな”って思ったのさ。子供の頃にジョンの音楽で育ち、彼の仕事でこの道に進んだんだよ。僕にはどの曲をどう使いたいっていう具体的なアイデアがあった。だから95%はオリジナルの曲だけど、わずかに(ジョンの曲が)あちこちでアクセントになっている。もし僕がシートに座って聴いてたら、きっと鳥肌ものだと思うな」

ちなみにインタビュアーに「インペリアル・マーチ(帝国のマーチ)は使ったの?」と聞かれると、ジアッキーノは笑いながら「た、ぶ、ん、ね」と答えている。真相は劇場で確認しよう。

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は2016年12月16日公開

source: http://www.ew.com/article/2016/11/23/rogue-one-composer-michael-giacchino-music-star-wars-standalone
Eyecatch Image: http://www.bostonherald.com/entertainment/arts_culture/2014/10/storm_troopers_darth_vader_crash_stage_as_la_philharmonic_honors (Photo by Mathew Imaging / remixed by THE RIVER)

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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