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『シビル・ウォー』ルッソ監督、スパイダーマン役トム・ホランド起用のためソニーを説得 ─ 「もはや戦いだった」

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム バリ 記者会見 トム・ホランド
©THE RIVER

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のスパイダーマン役を決めるオーディションは、ある意味では映画史上まれな出来事だった。MCU作品を手がけるのはディズニー傘下のマーベル・スタジオだが、スパイダーマンの映像化権を持っているのはソニー・ピクチャーズ。両社の事業提携によってスパイダーマンのMCU登場が実現したわけだが、トム・ホランドの起用決定までには紆余曲折があったという。

GQでキャスティングの経緯を振り返ったのは、MCU版スパイダーマンの初登場作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)を手がけたアンソニー&ジョー・ルッソ監督だ。ジョーいわく「特別な体験でした。ふたつのスタジオがスパイダーマンをなるべく有益な形でシェアするなんて、映画史上考えられないことだから」。なにしろ当時は、“誰がキャスティングの責任を持つのか”ということさえ問題になっていたというのである。

「アンソニーと僕は、自分たちの意見にこだわっていたし、すごく頑固でした。僕らはキャスティングに関する意見を大切にするし、仕事のスタイルにはこだわりがあるんです。だけどスパイダーマン役にホランドを起用したことは、すべてサラ・フィンの手柄でしょう。」

サラ・フィンとは、アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.、ソー役のクリス・ヘムズワース、ドクター・ストレンジ役のベネディクト・カンバーバッチ、ブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンなど数々の名配役に携わってきたキャスティング・ディレクター。早くからトムに魅力を感じていたというサラは、ルッソ兄弟に対してトムを推薦した。実際に二人はオーデイションを経て、すぐさまサラに連絡を取ったという。「スターの要素をすべて併せ持つ人が現れるなんてことはめったにない。だけど、ホランドはそうだった」

ところがルッソ兄弟やケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオ社長)らの意志とは裏腹に、ソニー側はすぐさまトムの起用にゴーサインを出さなかったという。ジョーいわく、ソニーは「もうちょっと考えたい」との応答によって起用の即決に反対。これを受けて、ルッソ兄弟らはトムを何度も呼び出してソニーの説得にかかったという。「もはや戦いでしたが、それでもソニーは決断しませんでした」

ジョー監督は、当時のソニーが「寡黙に、神経質になっていた」ことを証言する。「スパイダーマンを手渡すことは、数十億ドルとは言わずとも数百万ドルの損失を受ける可能性があるということだから」。またアンソニーは、ソニー側に「ただスパイダーマンを貸し出すだけなのか、それとも自分たちにも利益が生まれるようキャラクターを再開発するために預けるのか」との疑念があったとも語っている。ピーター・パーカー役に本物のティーンエイジャーを起用するという前例がなかったことも不安を招いたようだ。

それでもルッソ兄弟とマーベル・スタジオ側がこだわりを貫き、トムは無事にスパイダーマン役を手にすることとなった。ジョー監督は現在、「映画業界が混乱する今、トム・ホランドはギリギリ間に合った最後の映画スター」だと言っている。ヒーロー映画を含め、ハリウッドでは映画スターではなくブランドを重要視するようになった。配信サービスの台頭によってコンテンツの多様化が進み、コロナ禍がその流れを押し進めていることも事実だろう。「今後の10年間、物語とメディアは混乱することになるでしょう。車やエネルギーの問題と同じです」。

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Source: GQ

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。外部寄稿に『TENET テネット』『ジョーカー』『シャザム!』『ポラロイド』劇場用プログラム寄稿など。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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