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「シークレット・インベージョン」製作費は2億ドル以上、視聴者数はワースト2位 ─ ディズニー&マーベルの戦略見直しが影響か

シークレット・インベージョン
© 2023 MARVEL.

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」に、製作費2億ドル以上の巨額が投じられていたことがわかった。米Forbesが報じている。

「シークレット・インベージョン」はサミュエル・L・ジャクソン演じるニック・フューリーが、容貌を自在に変化させて社会に紛れ込んだスクラル人の地球侵略を防ごうとするMCU初の本格スリラー。しかし報道によると、製作費には2億1,160万ドルが費やされたにもかかわらず、6月21日に配信された第1話『復活』の視聴者数(5日間)はMCUのドラマ作品としてワースト2位だった。

米SambaTVの調査によると、MCUのドラマ作品で最も第1話の視聴者数が多かったのは「ロキ」シーズン1(2021)。続いて「ムーンナイト」(2022)「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」(2021)などが続き、ワースト1は「ミズ・マーベル」(2022)だった。

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近ごろ『ソー:ラブ&サンダー』(2021)や『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2022)などユーモア偏重気味だったMCUにおいて、「シークレット・インベージョン」はきわめてシリアスな作風、かつスーパーヒーローの名前をタイトルに冠さない異色作。“しかし”というべきか、あるいは“それゆえに”というべきか、現時点では予算に見合った視聴者数を掴みそこねている状況だ。

シークレット・インベージョン
© 2023 MARVEL.

製作費2億ドルといえばハリウッドの大作映画1本ぶんに匹敵する予算だが、本作のコストがここまで膨れ上がったのには2つの理由が考えられる。ひとつは、サミュエル・L・ジャクソン、ベン・メンデルソーン、マーティン・フリーマン、ドン・チードル、オリヴィア・コールマン、エミリア・クラークら豪華キャストの出演料。もうひとつは、2022年4月の本撮影終了後、新たに脚本家を起用して実施されたという約4ヶ月の再撮影だ。これがさらなる製作費の増大を招いたと考えることは容易だろう。

もともと「シークレット・インベージョン」は、ディズニー前CEOのボブ・チャペック氏による計画のもと、ディズニープラスのビジネス的成功、すなわち契約者数増加のために企画されたプロジェクトだった。一方でMCUを統括するマーベル・スタジオは、2021年からの“フェーズ4”で作品のクオリティ低下がたびたび指摘されており、より丁寧な作品づくりと計画が求められていたのだ。

おそらくはこうした経緯のもと、本作は立ち上げられ、そして2億ドルのコストを要するプロジェクトとなった。しかしその後、ディズニーはコスト削減の新戦略に乗り出すことになる。本作の再撮影が終了した後の2022年11月、チャペック氏に代わってCEOに復帰したボブ・アイガー氏は、コンテンツの製作費を抑える方針を決定、現在はMCU作品の本数を減らす方針を宣言しているのだ。

最近、アイガー氏はMCUについて「テレビのビジネスに大きく関与した経験がなかったのに、映画の本数を増やしただけでなく、多くのテレビシリーズを製作することになった。その結果、集中力と注意が削がれた」と指摘。「集中するためだけでなく、コストを抑えるためにも撤退する」と語っている。

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Source: Forbes, The Direct

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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