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『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ピーターにとってアイアンマンはベンおじさんのような存在か ─ 『エンドゲーム』後の物語が生まれた秘密、監督&トム・ホランドが解説

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
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マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作スパイダーマン:ファー・フロム・ホームは、空前の超大作となった『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の“その後”を描く物語だ。もちろん、ピーター・パーカー/スパイダーマンとトニー・スターク/アイアンマンの“その後”もしっかりと扱われることになる。

全世界を熱狂させつつ、多くの謎を残した『エンドゲーム』から物語を受け継いだのは、スパイダーマン映画の前作『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)に続いての登板となったジョン・ワッツ監督。主演のトム・ホランドとともに、監督はこの難題にいかにして挑んだのか。そして、本作のピーターにとって、トニー・スタークという存在とはいかなるものか?

この記事には、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレが含まれています。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

『エンドゲーム』後を描くという重責

ComicBook.comのインタビューにて、ワッツ監督は自分自身を「選ばれし者」と呼んだ。『エンドゲーム』のラストでトニー・スタークが命を落とすことを早い段階で聞かされていた、とても数少ない人物の一人だからだ。その事実を知ったのは、前作『ホームカミング』がちょうど劇場公開された頃だったという。

もともとワッツ監督が構想していたものを、『エンドゲーム』後の世界でいかに描くか。ワッツ監督は、『エンドゲーム』で起こる出来事を聞かされた当初は困惑したことを隠していない

「『ホームカミング』は楽しくて愉快なトーンになりました。だから『エンドゲーム』の計画を知った時、“どうしよう、どうやって僕たちのトーンとバランスを取ればいいんだろう、こんなに重大な問題が出てくるなんて”と。ルッソ兄弟が『エンドゲーム』について話しているインタビューを読みましたよ。MCUの今後のことは心配しなかった、とおっしゃってました。もうね、“ありがとう!二人ともありがとう!”ですよ(笑)。」

しかし、ワッツ監督は『エンドゲーム』が残していった課題に挑むことも「クリエイティブな挑戦ですから、楽しかったですね」とも語っている「僕たち自身がやりたいトーンやスタイル、物語に従って、まだ解決していない物事を全部さばいていくわけです」。それでも『エンドゲーム』の影響はあまりにも大きく、そのすべてを描き切ることは難しいと判断されたようだ。監督は「“指パッチン”の影響を純粋に描くだけで一本の映画が作れます。今回の物語を描くため、必然性のあるものを選ばなくてはいけませんでした」とも口にしているのである。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

カギになったのは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)からピーター・パーカーの師匠として振る舞ってきたトニー・スタークの死だった。『ホームカミング』で二人の関係を掘り下げた時点では、まだワッツ監督はトニーの死を知るよしもなかったわけだが、『エンドゲーム』の結末を聞いた際に監督の意志は固まったという

「トニーの死を知った時、(次回作で)“ちょっと触れるだけで先に進むわけにはいかないな”と思いました。“それこそを描く映画にしよう、そのほかに道はない”と。そうやって、描きたいストーリーの焦点が合ったんです。」

もちろんマーベル・スタジオは、『エンドゲーム』後という巨大なミッションを与えつつ、ワッツ監督の創造性もきちんと確保していたようだ。『エンドゲーム』の結末を聞かされた際、監督も次回作の構想をすべて話したとのこと。『エンドゲーム』の結末によって、そこに変更が加わったのは「少しだけ」だったという。『エンドゲーム』の出来事でさえも、ワッツ監督の目論みにはさほど大きな影響を与えなかったとみられる。

トニー・スタークは「MCU版ベンおじさん」か?

MCU版スパイダーマンの物語からは、コミックや過去の映画版で描かれてきた“重要エピソード”がまるごと割愛されている。それは、ピーターの愛するベンおじさんが、ピーター自身の見逃した強盗によって殺されてしまうという展開だ。スパイダーマンのオリジンに欠かせない名言「大いなる力には、大いなる責任が伴う」にも繋がっているものだが、前作『ホームカミング』でも、ベンおじさんの死は示唆こそされたが直接は言及されなかった。

しかし今となっては、MCUのピーター・パーカーとトニー・スタークの物語は、この“ベンおじさんの死”にも代わりうる大きな喪失に到達したといえる。『ホームカミング』で描き込まれ、『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』でさらに深まった両者の関係は、師匠であるトニーの死をもって、ひとつの幕を下ろすのだ。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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