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『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』米予告映像2種類を読み解く ― 未知なる冒険、その始まりを徹底分析!

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
© 2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

2018年2月4日(現地時間)、米国最大のスポーツイベント・第52回スーパーボウルの中継放送にて、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の最速スポット映像が公開された。翌5日午前(現地時間)には、テレビ番組にて初めての予告編も解禁されている。
様々な製作エピソードが聞こえてくる中、世界中の『スター・ウォーズ』ファンは本作の映像を今か今かと待ちわびていた。ハリソン・フォードが演じたハン・ソロ、その若き日の冒険はいかにして描かれるのか……。

未だ物語の詳細が明かされていない『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』だが、幸いにして、今回公開された2種類の映像は、それぞれ内容がやや異なるものだ。本記事ではその細部に目を光らせながら、この2種類の予告映像を読み解いていくことにしよう。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』米予告編を徹底分析!

「10歳の時から、俺は街で人を騙してた」。オールデン・エアエンライク扮する若きハン・ソロの言葉から、米国版予告編は幕を開ける。スポット映像と共通するのは、ミレニアム・ファルコンを起動する映像が冒頭に用意されていることだ。
ハン・ソロとキーラ(エミリア・クラーク)を乗せたランドスピーダーは、追手のトルーパーを振り切って疾走する。「自分なりの考えのせいで、フライト・アカデミーを追い出された」という言葉は、幼少期から現在まで一匹狼だったハンの生き様が象徴されているだろう。「俺はパイロットになるんだ。そう、宇宙一の。」

ここまでで注目したいポイントは複数あるが、まずはハン・ソロとキーラの乗るランドスピーダーの前面に、ランド・カルリジアンとのエピソードで知られるゴールデン・ダイスが光っていることを押さえておきたい。のちにミレニアム・ファルコンにも同様に引っ掛けられたダイスは、シリーズ最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)でも重要な役割を果たしていた。
また、雪に包まれた土地を見下ろす、コートに身を包んだハンの後ろ姿や、まだ真新しいミレニアム・ファルコンの内装も見逃せない。ちなみに「俺はパイロットになるんだ」というセリフは、予告編に先がけて公開されたスポット映像を参考にするかぎり、ハンが帝国軍の人物へと語る言葉のようだが……。

つづいて登場するのは、ハンの師匠(メンター)として活躍するというベケット(ウディ・ハレルソン)だ。海の見える砂浜のような場所にて、彼は「仲間を集めてるんだ」と口にする。次々に姿が映し出されるのは、ドロイドL3-37を引き連れて現れるキーラ、笑顔を見せるランド・カルリジアン(ドナルド・グローバー)、タンディ・ニュートン演じる女性兵士らしき人物、4本の腕を持つエイリアン。「入るか?」というベケットの言葉にチューバッカは唸り声を上げ、それを聞いたハンは「入る、ってこと」と一言。

しかしこの一連のシーンには、明らかに繋がっていないポイントが認められる。まずはベケットが映し出される直前、映像の30秒目で砂浜を歩いているのは男女の二人組とみられる。その後の衣装からしても、ハンとベケットの組み合わせではなさそうだ。ちなみに「仲間を集めてるんだ」の場面と「入る、ってこと」の場面では、完全に背景の場所が変わっている。どうやら完全に別のシーンを繋ぎ合わせたものであろう。

その後、コックピットでハンドサインを示すのはL3-37(フィービー・ウォーラー・ブリッジ)とランドのコンビ。ハイパースペースへ飛び込む時、その後ろに乗っているのは誰だろうか。クラブらしき場所にはエイリアンたちと女性の姿があり、そのかたわらには小さなクリーチャーが詰め込まれたカプセルがある。なおポール・ベタニーが撮影を終えた際、ロン・ハワード監督が投稿していた写真の背景はこの場所だとみられる。ここでキーラは何をしているのだろう?

さらに砂浜に立っている仮面の集団を前にして、おなじみのブラスターに手を伸ばすハンの右手や、複数の敵を相手にしている黒ずくめの人物、爆発のような光に包まれるオペレーション・ルームとL3-37、雪の積もった断崖の前を飛ぶ船の数々や、その惑星が爆発する様子。キーラの「本当のあなたを知っているのは、私だけかもしれない」という言葉を、ハンは笑いながら「……何それ?」とあしらう。

予告編の後半では全貌が掴めない場面が続くが、仮面集団のリーダーと思しき人物は、スポット映像の31秒目において、列車の上で戦闘を繰り広げている(ただし、そこで彼と戦っているのが誰なのかはわからない)。また、ハンと思しき男がブラスターに手を伸ばすところからは、長年議論されている『エピソード4/新たなる希望』(1977)のカンティーナにおける銃撃シーンを思い出すファンも少なくないだろう。もしや、喧嘩っ早いハンのキャラクターが強調されることになるのだろうか?

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』というタイトルのあとに映し出されるのは、スター・デストロイヤー&TIEファイターに追われるミレニアム・ファルコンを操縦するハンと、コックピットに乗っているチューバッカやキーラ、ランドの姿だ。「ちょっとヤバいと思ったけど、もう大丈夫」と余裕の表情を見せるハンの前に現れたのは、何やら巨大な触手を持ったクリーチャーである。
ここで再びスポット映像を参照するなら、同9秒目に、雲の中から現れるスター・デストロイヤーの場面は、このシーンと同一のものと思われる。ちなみにファンの間では、この場面こそが、かの「ケッセル・ランを12パーセク」エピソードなのではないかという予想もあるが、真相やいかに。

ミスリードの可能性、スポット映像だけのショット

むろん今回の予告映像については、ミスリードが仕掛けられている可能性についても留意しておかねばならないだろう。
たとえばスポット映像の場合、帝国軍をハンが訪れると思しき冒頭の場面には、ハンのセリフこそ使われているが、そこに座っている男の顔は一切見えないのだ。今のところ、彼がハンであると断定することはできない。また、仮面の集団を前に立っているブラスターの持ち主がハンであるとも限らないだろう。さらに列車上で戦っている人物や黒ずくめの人物も含めて、2つの映像には“正体が誰なのかわからない”という場面があまりにも多いのである。
なお前述したように、ミスリードとは言い切れないものの、予告編のベケットに関する場面では明らかに異なるシーンが繋ぎ合わされており、本編の内容を忠実に踏まえたものかどうかは疑問が残る。

ちなみにスポット映像には、予告編にはまったく含まれていないショットが複数存在する。たとえば26秒目のキーラの単独ショット、31秒目の列車上での戦闘(前述)、33秒目の明滅する光を見上げるランド、37秒目の扉越しに登場するハン、そして43秒目のハン&チューバッカの後ろ姿などだ(同じシーンが予告編に登場するものの、スポット映像のショットが使われなかった場面も多い)。これらの映像はのちに公開される予告編で再び現れるのか、それとも?

フィル・ロード&クリス・ミラー監督が撮影終盤にプロジェクトを降板し、のちにロン・ハワード監督が後任を務めている本作は、予告編を観るかぎり、ともすれば両者のエッセンスがうまく混ざった作品になっている可能性がうかがえる。だとすれば、洒脱なユーモアと地に足の着いた演出の橋渡しとなったのは、『メッセージ』(2016)などに携わった撮影監督ブラッドフォード・ヤングなのではなかろうか……。

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は2018年6月29日より全国ロードショー

Sources: https://screenrant.com/solo-movie-trailer-breakdown/
https://www.cbr.com/solo-a-star-wars-story-trailer-breakdown/
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Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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