【あなたの知らないスターウォーズ】スター・デストロイヤーをデザインした男、コリン・キャントウェルのデザイン哲学と隠れた功績
『スターウォーズ エピソード4/新たなる希望』のオープニング。
タイトルとともに始まるジョン・ウィリアムスの壮大なスコアにのせて、テキストロールが画面奥へと消えて行き、そして映し出される広大な宇宙。カメラが下方向にスクロールすると、そこに映り込む赤土色の惑星。突然、画面の右斜め上よりカットインする小型宇宙船と、それをレーザー砲撃しながら追跡する宇宙戦艦の、いつ途切れるともしれない巨大な姿。1977年の劇場公開当時、世界中の観客の度肝をぶっこ抜いたこの場面は、SF映画の歴史だけでなく、それ以前に製作されたすべての映画でも最も印象的なオープニングだったと断言できます。「スターウォーズ」の世界的成功は、このオープニングと、直後に続くダース・ベイダーの初登場シーン、ふたつのシークエンスで確約されたと言っていいでしょう。
この巨大宇宙戦艦、言わずと知れた銀河帝国軍の主力戦艦であるスターデストロイヤーの、二等辺三角形をアレンジした艦体のシルエット、一度見たら忘れない巨大な艦橋。「かっこいい」としか言いようがない素晴らしいデザインは、いったい誰の手によるものなのでしょうか。
一般的に、「スターウォーズ」オリジナルトリロジー3部作に登場する主なデザインは、監督のジョージ・ルーカスを別とすれば、コンセプト・アーティストであるラルフ・マクォーリーによるところが大きいといわれています。確かにマクォーリーのデザインがスターウォーズの世界にもたらしたものは計り知れませんが、ことヴィークルのデザインに限っていえば、マクォーリーよりも貢献度が高いと思われる人物が存在しました。
知られざるアーティスト、コリン・キャントウェル
マクォーリーが「スターウォーズ」に携わる少し前、まだ映画がジョージ・ルーカスの脳内にしかないようなプロジェクトの黎明期のこと。ルーカスと二人三脚で、スターウォーズに登場する主な乗り物であるX-ウイング、Y-ウイング、TIEファイター、デス・スター、そしてスターデストロイヤーの原型を生み出した“知られざるアーティスト”がいたのです。
ルーカスは、キャントウェルに「スターウォーズ」の草稿『スターキラーの冒険 エピソード1』のコピーを手渡すと、X-ウイング、 Y-ウイング、TIEファイター、スターデストロイヤー、インペリアルクルーザー、デス・スター、ランドスピーダー、サンドクローラー、ミレニアム・ファルコン、そしてT-16スカイホッパーのコンセプトデザインを依頼します。キャントウェルは、ルーカスのアイデアや彼との会話をもとに、それぞれのコンセプトアートを描きはじめました。