『マイティ・ソー』ヴァルキリー、次回作はセクシャルマイノリティの側面描く ─ 『エターナルズ』にも同様のキャラクターが登場へ

『マイティ・ソー』シリーズ第4作『マイティ・ソー/ラブ&サンダー(原題:Thor: Love and Thunder)』では、テッサ・トンプソン演じるヴァルキリーの“セクシャルマイノリティ”としての側面が掘り下げられるという。「サンディエゴ・コミコン(Comic-Con International: San Diego 2019)」にて、テッサ本人やマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長が明かした。
この記事には、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレが含まれています。
マーベル・シネマティック・ユニバースとLGBTQ
『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)で初登場したヴァルキリーは、同作の公開当時からバイセクシャルという設定がテッサによって認められていた。しかし映画本編からはバイであることを示すシーンがカットされ、設定は回想シーンでわずかに示唆される程度となっている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)にも、ヴァルキリーのセクシャリティを明らかにする場面は存在しなかったのだ。
しかし、タイカ・ワイティティ監督が続投する『マイティ・ソー/ラブ&サンダー』では、ヴァルキリーのセクシャリティがきちんと掘り下げられることになりそうだ。コミコンのステージにて、テッサは「ヴァルキリーは(アスガルドの)新たな王として、彼女にとっての女王を探さなくてはなりません。そのことが最優先で、彼女には考えがあります」と述べたのである。
かねてより、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品にセクシャルマイノリティの人物が登場することは複数の人物によって予告されていた。このたび、ケヴィン社長は『ラブ&サンダー』のヴァルキリーにマイノリティとしてのストーリーが与えられること、そして『エターナルズ(原題:Eternals)』にもセクシャルマイノリティのキャラクターが登場することを認めている。
ただし、MCU作品にセクシャルマイノリティが明示的に登場するのはヴァルキリーが初めてではない。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)では、セラピーのシーンにゲイのキャラクターが登場したのだ。ワンシーンのみに登場する、この役柄を演じたのはジョー・ルッソ監督。アンソニー監督とともに、その意図はこのように語られていた。
ジョー「物語に関わるキャラクターがゲイであることや、彼の日常を何気なく描きたいと思いました。誰もが過ごしている日々の生活を表現したい。大勢に届く世界規模の映画ですから、多くの方々がスクリーンのどこかに自分自身を見つけられるのが大事だと思っています。」
アンソニー「アメリカほど同性愛が自由ではない国もあります。この手の映画に(同性愛の)要素を入れれば、そうした国々にも響くところがあると思うんです。」
こうした狙いは、多様性の確保に邁進するマーベル・スタジオもクリエイターたちと共有しているはずのものだ。ケヴィン社長は米io9にて「複数の映画にまたがる(マイノリティの)表現が、物語にどんな影響を与えるかはまだ分かりません」と述べているが、そこに映画としての企みがあることはおおよそ間違いない。なにしろマイノリティのキャラクターを主要人物として扱い、“彼らでなくては語れない”豊かなドラマを紡ぎ出す手法は『ブラックパンサー』(2018)で証明済み。ポリティカル・コレクトネスの採用によって、むしろ物語の可能性は広がっているのである。
ならば、『マイティ・ソー/ラブ&サンダー』のヴァルキリーは、そしてまだ見ぬ『エターナルズ』の新キャラクターは、果たしてどんなドラマを、どんな表現を見せてくれるのか。世界中の観客の一人一人に、きめ細やかに届くストーリーは、成功すれば必ずやマイノリティの当事者以外にも深く刺さるはずである。
映画『エターナルズ(邦題未定、原題:Eternals)』は2020年11月6日に、『マイティ・ソー/ラブ&サンダー(原題:Thor: Love and Thunder)』は2021年11月5日に米国公開予定。