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『最後のジェダイ』監督、ルーク像語る ─ 「神話とはフィギュア売る為のものではない」マーク・ハミル「僕はルーカス時代のオールドスクール派」

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)は、これまでのシリーズの掟や法則をかなぐり捨て、「新世代スター・ウォーズ」としての新たな扉を叩き開いた。もちろん製作陣は、相当な反発の声も重々覚悟していただろう。こうした拒絶反応を示したのは、世界中のファンだけでなく、サーガの中心人物ルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルにも同じだった。

では、『最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督は、いかなる想いで新たな伝説を描きあげたのか。そして、それに演技で答えなければならなかったマーク・ハミルは、今どのような理解に至ったのか。米テキサス州で開催されたテクノロジーとエンターテインメントの祭典SXSW 2018(サウス・バイ・サウス・ウエスト)に登場したライアン・ジョンソン監督とマーク・ハミルが語った。米Hollywood Reporterなどが伝えている。

この日のステージは、『最後のジェダイ』製作舞台裏を収めたドキュメンタリー映像が上映。上映後に登壇したライアン・ジョンソンは、『最後のジェダイ』の挑戦について振り返る。同作では、レイやフィン、カイロ・レンといった新たなキャラクターの活躍が続く一方、ルークやレイアといった往年の伝説的キャラクターも登場。彼らを演じるマーク・ハミルやキャリー・フィッシャーこそ、このサーガにおいては監督よりも大先輩にあたるわけになる。このベテランを自らの指揮で率いなければならない監督は、彼らと深い話し合いをする必要があった。それも、堂々巡りの激しい会話だったという。「”クソくらえ、これは僕の物語なんだぞ”とは言えませんでしたからね。しっかり話し合いをする必要があった」と振り返る。

ライアン・ジョンソンは『最後のジェダイ』で、かつて希望に満ちたヒーローだったはずのルーク・スカイウォーカーを、絶望と無関心に苛まれた孤独な老人として描いた。これこそ、ファンの間で最も意見の別れたところだ。なぜライアンはルークの老いた人生の闇を大々的に描いたのか。監督がこの日語ったところによると、「英雄の冒険というのは、暗いところにも進んでいく」という考えによるものだという。

「優れた伝統的な英雄神話を見てみましょう。たとえばアーサー王伝説では、物語はアーサーが石にささった剣を引き抜き、力を得るところから始まりますよね。挫折がありながらも、王国を従えていく。それでも読み進めていくと、ヒーローが中年に差し掛かるにつれて彼の人生が描かれていく。そうすると、暗い展開に入っていくものです。
これには理由があります。神話とは、アクションフィギュアを売るために作られるものではないんです。神話とは、私たちが人生を通じて経験する辛い変化を映し出すために作られるものだからです。

ライアンが「彼(ルーク)を真面目に取り扱うなら、こうしたリアリズムを描かなければならない。僕はそう思ったんです」と続けたこのステージでは、マーク・ハミルが終盤にサプライズ登場。「最後にカメオ登場するのは得意なんだ」とのジョークで会場を湧かせたという。

さてマークと言えば、『最後のジェダイ』で描かれたルーク像に長らく異を唱えていた人物であり、同作劇場公開前までは「意見が合わないどころじゃない、侮辱されてると思った」「彼は僕のルーク・スカイウォーカーじゃない」と話すなど、その複雑な心境をしばしば口にしていた。しかし公開後は考え方をゆるめ、「僕が間違っていた」「ライアン・ジョンソンは傑作を作ってくれた」と改めていたのである。

マークはSXSWのステージでもこの経緯に触れ、「自分の不安な心を公にするんじゃなかった」と後悔の言葉を口にしている。件をめぐってはマークとライアンの考え方のすれ違いによる不和も囁かれたものだったが、「(監督に)嫌悪感は全くありませんよ。ただ、僕の知っているルークではなかっただけです。」「ライアンには完全に忠誠を尽くしています」と訂正したようだ。

またDeadlineのレポートによれば、公開前に見られたマークの一連の発言やツイートは「自分の気持ちを打ち明けてスッキリしたかったし、(考えの)全てを捨てたかった」ためであるもので、自身を「ジョージ・ルーカス時代のオールド・スクール派」であると言い表し、現在では新世代スター・ウォーズの扉を開くことができたことを喜んでいるという。

さらにマークは、ライアンから伝えられた「観客が期待し、欲しているものを常に与えられるわけではない。でも、観客が予期もせず、それでいて欲しているものは与えることができる」という考えも紹介。これについて「まったくその通りだ」と認めたようだ。

察するにライアン・ジョンソンは、卓越したコミュニケーション能力で自らの斬新なヴィジョンを周囲に理解・納得させ、伝統色強い『スター・ウォーズ』に(是非はどうあれ)新風を巻き起すことができたのであろう。ライアンのリーダシップは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』以降にさらに続く続三部作の舵取りをルーカスフィルムより委ねられているという事実を見ても明らかだ。ちなみにこの続三部作についてライアンはこの日、「今はごくごく初期段階にありますが、とにかく興奮していますよ」と語っている。

Source:THR,Deadline,Comicbbook.com

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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