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【ネタバレ】「ワンダヴィジョン」キャスティングの罠、監督が解説 ─ 「『アイアンマン3』のマンダリンが大好きで」

ワンダヴィジョン
© 2021 Marvel

この記事には、ドラマ「ワンダヴィジョン」の極めて重大なネタバレが含まれています。まだ本編をご覧になっていない方は、必ずご視聴後にお楽しみください。
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ワンダヴィジョン
© 2020 Marvel

エヴァン・ピーターズ起用の「罠」

「ワンダヴィジョン」の第5話「問題エピソード」は、マーベル・ファンほど驚愕するキャスティングで幕を閉じた。ヴィジョンとワンダが対立する中、ワンダの双子の兄弟であるピエトロ・マキシモフ/クイックシルバーが訪れてくるのである。ところが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で死んだはずのピエトロの姿は、MCU版ピエトロのアーロン・テイラー=ジョンソンではなく、20世紀フォックス製作『X-MEN』シリーズでピエトロを演じたエヴァン・ピーターズだった。

“これはMCUにX-MENが合流する布石か、『X-MEN』シリーズとのクロスオーバーか、マルチバースの示唆か”。ファンの間で大いに盛り上がったキャスティングは、あらゆる予想を裏切る結末に着地する。ピエトロの正体は、ラルフ・ボーナーという名前のウエストビューの住人だったのだ。アグネス/アガサ・ハークネスは、ラルフ宅を乗っ取ってウエストビューの住人として暮らし、ラルフをピエトロとしてワンダのもとに送り込んだ。すなわち彼はフェイク・ピエトロ、劇中で言うところの「フィエトロ(ニセトロ)」だったのである。

ワンダヴィジョン
『ワンダヴィジョン』 ディズニープラスで配信中 (c) 2021 Marvel

もっともファンの期待が膨らんでいたぶん、実は『X-MEN』シリーズとは一切関係なかったという顛末は批判を浴びることにもなった。映画監督ケヴィン・スミスのポッドキャスト「Fatman Beyond」に登場したマット・シャクマン監督は、すでに一部のファンから攻撃を受けていることを認めている。どこかで監督の電話番号を手に入れたらしい人物からメールが届くというぼだ。

「驚きましたよ。誰なのかは知らないんですが、“お前らは『アイアンマン3』の偽マンダリンで学ばなかったのか?”みたいな攻撃が送られてくるんです。」

『アイアンマン3』(2012)では人気キャラクターのマンダリンがMCUに初登場し、ベン・キングズレーが演じていた。ところが同作に登場したのは、テロ組織テン・リングスのリーダーという巨悪のマンダリン自身ではなく、雇われて“マンダリン役”を演じていた俳優トレバー・スラッテリーにすぎなかったのである。このどんでん返しも、当時は少なからぬ批判を受けていた。

もっともシャクマン監督は、「僕は『アイアンマン3』であの部分が一番好きと言ってもいい」と述べている。「ベン・キングズレーがトイレから出てきて、“中に入るなよ”って。最高だって思いましたよ、(ファンの)期待で遊んでるわけだから。それに、状況がひっくり返るのはいつだって楽しいものですよね」。すなわち、フィエトロで予想が覆されるのが『アイアンマン3』と比較されることは監督の狙い通りとさえ言えるのである。

「確かに、アーロン・テイラー=ジョンソンをドアの前に立たせることもできたと思います。しかし、彼がアガサの人形だったらどうかと考えたわけです。それにヴィジョンを蘇らせたことで、すでに愛する人は帰ってきている。

どうすればもっと面白くなるかと思った時に、喪失の悲しみは、なじみのない顔を受け入れ、動揺しながら適応することに繋がらないか、と考えました。たとえば、自分の死を受け入れるまでの5段階で言うと、これは“取り引き”にあたります。ワンダは自分自身との間で、兄弟にも帰ってきてほしいという“取り引き”をする。だから、自分が覚えているのとは違う顔でも喜んで受け入れるんです。」

ワンダヴィジョン
© 2021 Marvel

フィエトロの姿をモニター越しに見ていたダーシーは、思わず「彼女、ピエトロの代役を立てたの?」と声を上げる。シャクマン監督はこれにも言及し、「同時にこれはシットコムですから。あれはメタなセリフです」と話した。やはりエヴァンの起用は、物語的な必然性とともに、メタな仕掛けが成立する「ワンダヴィジョン」の構造を逆手に取ったものだったのだ。逆に言えば、そもそもエヴァンをピエトロ役に起用するという仕掛けは(シリーズの製作会社や双方の関係性まであらかじめ熟知している)コアなマーベル・ファンにしか通用しない。

「X-MENが出てこなくて、マルチバースが登場しなくてガッカリしているマーベル・ファンの方に僕が言えるのは、“それももうすぐあるから”ってことです。だって『(ドクター・ストレンジ・)マルチバース・オブ・マッドネス』ってタイトルの映画もあるし、ミュータントが合流することも1年半前のコミコンで言われている。それにマンダリンも出てきますよね、『シャン・チー』の悪役として発表されていますから。みなさんの我慢は報われますよ。」

脚本・製作総指揮のジャック・シェイファーはエヴァンについて「『フルハウス』のジェシーおじさん、『ファミリータイズ』のニック、『フレンズ』のジョーイを融合させてくれました。どの側面もカメレオンのように演じられる人」と絶賛。シャクマン監督も、起用の最大の理由は「何よりもエヴァン・ピーターズが最高の俳優だということに尽きます」と称えた。「彼はコメディからドラマまで何でも演じられるし、その中間も見せられれば、全部を同時にやることもできる」

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Source: Fatman Beyond

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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