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【独占ロングインタビュー】『スター・ウォーズ』C-3PO役アンソニー・ダニエルズ ─ 最後にもう一度だけ、日本の友人たちに

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の内容が含まれます。

『スター・ウォーズ』との向き合い方

──この本の中では、マーク・ハミルが『フォースの覚醒』でのルーク・スカイウォーカーの扱いに怒り、悲しんでいたと書かれていますね。今では続3部作が完結しましたが、3作通じたマーク・ハミルの心境ってどのようなものだったんですか?

今回の3部作への想いについて、マーク・ハミルはインターネットで沢山語ってきているのではないでしょうか。彼はとてもオープンですよね。私も、彼の言っていることは理解しています。

彼は、オーウェンおじさんと一緒に、私の所にやって来てくれた。オーウェンおじさんとルークが、砂漠で3POを購入して……。あの砂漠のシーンの撮影で、マークは演じることを本当に楽しんでいましたね。無垢で、チャーミングで、誠実で。3POにだって、まるで本物の仲間のように話してくれた。だから観客も、「3POは本当にドロイドなんだ」って実感できたんですよね。1作目の時から、彼にはずいぶん助けてもらったものです。エピソード1〜3にマークはいませんでしたが、私は新しいクルーと一緒に仕事ができて面白かったです。

 
 
 
 
 
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そして、エピソード7。3POの出番もそう多くありませんでしたし、マークともあまり会えませんでした。ですが、マークはジョージ・ルーカスが書いていたものとは違うストーリーになってしまった、と熱っぽく話していました。

※ジョージ・ルーカスはディズニーとルーカスフィルムの買収交渉が取り交わされている際、3本分の続編のあらすじを提出していたが、これらは使用されなかった。

それからエピソード8では、彼が好きじゃないことをやることになった。私も3PO役として、「こういう状況なら3POはどうするか」ということが分かる。マークの場合は、彼が考える「ルークならこうする」とは違う行動を取ることになったんです。これはエピソード9では少し修正されるのですが。

マークはその落胆を私に語っていました。だって、彼はキャラクターのことを本当に大切に思っていたのですから。それに、『スター・ウォーズ』のことも。

難しい話ですよね……。アーティストのところに別の誰かがやってきて、上書きされるようなものです。だから彼はとても辛かったと思いますし、私もその気持ちがよく分かります。

──『スター・ウォーズ』の世界は拡張を続けています。「Disney+」のドラマ「マンダロリアン」はご覧になっていますか?

私の住むイングランドでは「Disney+」が無いのですが、断片的に観ています。素晴らしいですね。圧倒されます。製作チームのデイヴ・フェイトーニが……、いや、違う。フェイトーニは私の役名でした。デイヴ・フィローニですね。「クローン・ウォーズ」の時も素晴らしくて、彼と一緒に仕事をするのは非常に楽しかった。「マンダロリアン」も、とても上手に作っていますね。実際はカウボーイの物語だけど、それを銀河のゴージャスなビジュアルでやっています。もともと『スター・ウォーズ』以前は西部劇が人気でしたよね。発想が天才ですよ。

「Disney+」、私も加入させてくれないかなぁ。(天井を見上げながら)聞いてますか?加入させてくれませんかねぇ?

──(笑)。「マンダロリアン」を観て、また『スター・ウォーズ』に出たいな……なんて思われたりは?

正直に申し上げまして、この5〜6年は、いい意味でハード・ワークでした。この前(2019年)のクリスマス前に、休みを取ろうと思ったんです。だから、今は休業中でして。

そんな今は、こうして自著の話をできるのがとても楽しいですね。今まで本なんて書いたことがなかったので、とても誇らしく思います。この本を世界中にご紹介させていただくのが、今はとても楽しいです。

それから、『スカイウォーカーの夜明け』はデジタル版もリリースされましたよね。『スター・ウォーズ』のファミリーは日本やインド、オーストラリア、ロシア、それにアメリカにもいます。今や3世代に渡るものですし、次の世代にも継がれるでしょう。『スカイウォーカーの夜明け』もデジタル配信されたので、好きなところで一時停止したり、繰り返し観直すことができますね。(映像特典の)ドキュメンタリーでは、これまで知らなかった人々に出会えますよ。カメラの裏側に隠れて、皆さんのために映画を作ってくれた人々です。

今、私たちは孤立して、家の中にいます。エンターテインメントで楽しみましょう。良いタイミング(のリリース)だったと思います。

──『スター・ウォーズ』のコアファンは、『スター・ウォーズ』に関することなら何でも知りたいものです。そんなファンにとっても、この本で知られざるエピソードに出会えますか?

そう思います。仰るとおりで、『スター・ウォーズ』はファンのものです。この本には、まだ皆さんが知らなかったようなことも書かれています。とりわけ私の気持ちというのは、これまでお話ししてきませんでしたから、驚かれるかもしれません。

──アンソニーさんは、『スカイウォーカーの夜明け』のプロモーションで昨年(2019年)12月に来日されましたね。実は僕も、記者会見を取材していました。ステージでは、J・J・エイブラムス監督がC-3POについてこんな風に称えていました。「あなたは、スター・ウォーズで最初に出会うキャラクターです。この物語が始まった時、僕達はこの映画で笑って良いんだと気付かせてくれる存在。一瞬で作品のトーンを作る存在です。それなのに、姿は隠れている。とんでもなく難しいことだと思います。」
会見では、アンソニーさんの回答の時間が取れませんでした。改めて、J・Jのこの言葉に何と返したいですか?

J・Jと仕事できたことは、この上ない喜びでした。最初の『スター・ウォーズ』を観た時、彼はまだ10歳でした。それから40年経っても、子供時代と変わらぬ無邪気な目で興奮していて……。だから彼と一緒に仕事をするのは、とても刺激的でした。彼の言う通り、映画で最初に出会うキャラクター、最初に聞く声がC-3POなんですね。ジョージ・ルーカスの狙い通り、C-3POとR2-D2がストーリーに筋を通してくれる。確かに、3POがトーンを作り出しています。

それに、3POはマスクが良いですね。リズ・ムーアという美しい女性が作ってくださったんです。本の中でも写真で紹介しています。3POは、とてもインスピレーショナルなデザインでした。人間のようで、目も大きく、無垢で、儚さがある。威張ってR2を連れ回すようなこともありますけど(笑)。でも、儚さのようなものがあった。そこに惹きつけられるんでしょうね。

3POが物語の中にいざなってくれるんです。まぁ、彼はこう言うでしょう。「(3POの声で実演)私、話下手でして……。皆さんを惹き付けるだなんて、出来っこありません。」でも、いつの間にか私があの映画たちのストーリーテラーになっていました。とても良い気分ですよ。

ただ、本の序盤でも書いていることですが、身体的にはとても大変です。すると、精神的にも辛くなってくる。それでも必死にしがみつきました。物語を必死で追いかけて、追いかけて、プリクエルへと、そしてシークエルへと続いた。そうして今、私はこの本と、『スカイウォーカーの夜明け』と共にいます。諦めずに、しがみついて本当に良かったと思います。これは教訓なのかもしれません。辛くても、続けてみなさい。きっと慣れて、良くなるはずですよ、と。

『スカイウォーカーの夜明け』カットされた幻のシーン

──全作に登場した3POですが、そのセリフの中でも僕が一番好きなのは、エピソード3の「I feel so… helpless.(=何だか、自分が無力な気がします)」です。

(目を大きくして)面白いですね!実は先週、そのシーンをちょうどTVで観たんですよ。イングランドは『スター・ウォーズ』の放送が多くて。普段は観ないんですが、チャンネルを変えていて目に入ったんです。

「(3POの声で実演)I feel… so… helpless.」誰かに仕えることが仕事だったのに、誰かに仕えたいのに、その“仕える”という目的が失われた3POが泣いている言葉でしたよね。

3POの忠誠心。彼はパドメ・アミダラを想っていましたし、ルーク・スカイウォーカーのことも想っていました。ハン・ソロのことは……そうでもないかもしれませんけど。3POは、誰かに仕えたがっています。『スカイウォーカーの夜明け』にも感動的なセリフがあります。クリス・テリオとJ・J・エイブラムスが書いたものですが……。ポーが「3PO、何をしてる?」と聞いて、こう言うんです。

「(3POの声で実演)Taking one last look, sir…  at my friends.(=最後にもう一度、友人たちの姿を)」

セットでこのセリフを口にした時は、不思議な感じ、感傷的な感じがしました。後になって予告編を観て、「わぁっ」と。観ていて辛いシーンでしたね。

あのセリフが感動的な理由は、まず初めに、友人たちを見ていること。ポー、レイ、フィン……。実は、3POと彼らとの、特にポーとの素敵なやり取りがあったのですが、残念ながら編集でカットされてしまったんです。

とにかく、あのシーンで3POは、「さようなら」を言っていたわけですね。彼は、ずっと皆さんとの冒険を共にしていましたから。本にも書いていますが、私がJ・Jに直談判したんです。もっと3POをストーリーに絡ませて、チームに加えてやって欲しいと。J・Jはしっかり応えてくれましたね。

それから、「(再び3POの声で)Taking one last look, sir…  at my friends.」のセリフは、私の気持ちも表しているんです。40年以上『スター・ウォーズ』を愛し続けてくださった、銀河中のファンの友人たちに向けた言葉でもあります。

そして……3POは私にも「さようなら」を言っていたんです。もう、私はお終いなのです、と。だから3重の意味があった。あのセリフについて考えれば考えるほど、私の中で「そうなんだね」と確信が高まりました。あのセリフがお気に入りだと言ってくれるファンもいらっしゃいますが、悲しいセリフなので、私はお気に入りではありませんね。

──とても感動してしまいました……。ところで、ポーと3POのカットされたシーンがあったということですが……?

映画製作って、特にこういう大作映画ではそうなのですが、とにかく全て撮っておくんですね。予算を無駄にしないように。プリンセス(レイア)が死んだところでは、3POについての事実が明かされるシーンも元々ありました。それから……、(アハッ、と思い出し笑い)オスカー・アイザックと一緒になったシーン。もう、可笑しくって。彼は本当にワンダフルな役者さん。彼とのシーンはカットされてしまったんですけど、こんなシーンがありました。3POがポーのところにやってきて、こう言うんです。

「(3POの声で実演)マスター・ポー!私、あなたが昨日仰られたことを考えていました。私は、この仕事が自分に相応しいと確信しました!」

「(ポー・ダメロンの声真似で)何を言ってる、3PO?」

「(3POの声)昨日、私にはもっと他の目的があるんじゃないかと言いましたよね?」

ポーは、悪気はないんですけど、いつも3POにイライラしていて。彼に「どっか行け」と言ったんです。3POも真に受けて、他の仕事を探し始めてしまう。可愛い3POは、人間の言動、ニュアンスというものが分からないんですよね。あぁ、このシーンはオスカーと大笑いしましたよ。

3POは記憶を削除されてしまいますが、これは悲しかった。3POを説得しなければいけませんでしたから。彼もすっかり不安になって、「(3POの声で実演)何か他の方法があるはずです」って。お客さんも、あのシーンには動揺し、恐怖したことでしょう。でも、素晴らしいことが起こりますね。バブ・フリックです。良いキャラクターですよね。ドキュメンタリーでは、緑色の格好をした5〜6人のパペット操縦士がパペットを動かしている姿が見られますよ。

それで、3POは記憶を消されますが、記憶が戻るまでには、しばらくあったんです。あの悲劇には様々なものが組み上がって出来たものだったんですが、編集の段階でずいぶんと縮められることになりました。これは私が言うべきことではないかもしれませんが、“感情の重み”が損なわれてしまっていました。チューバッカの死もそうですね。事を急ぎすぎてしまうと、不安になったり、悲しんだりする時間もなくなってしまいます。J・Jは本当に色々なことを考えつくものですから、一度に入れ込もうとするんですよね(笑)。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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