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米ディズニーの21世紀フォックス買収、やはりマーベル『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』狙いか ― 米報道

マーベル
Photo by Dimka.aman https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Comics_.jpg

2017年11月6日(現地時間)、ウォルト・ディズニー・カンパニーが21世紀フォックス社に対して事業の買収を交渉していたことが報じられ、全世界で大きな話題となった。21世紀フォックス社は、映画スタジオ「20世紀フォックス」やテレビネットワーク「FOXネットワークス・グループ」を擁する巨大企業。ディズニーは同社の映画・テレビ事業を買収の対象として交渉に臨んだと伝えられているが、すでに交渉は現時点で行われていないとされる。

米Wall Street Journalは、新たな取材によってディズニーの買収意図がマーベル・キャラクターの権利統合にあったことを明らかにしている。買収交渉に踏み切った理由は複数あるものの、マーベル・キャラクターの権利は非常に大きな要因として作用したようだ。

合流できない『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』

2009年、ディズニーはマーベル・エンターテインメントを買収して自社傘下に置いている。この時点でキャラクターの権利はディズニーが有することとなり、その後は自社の映画事業を指揮する「マーベル・スタジオ」、およびテレビ事業を担う「マーベル・テレビジョン」が、それぞれコミックの映像化を進めてきた。一連の作品群が「マーベル・シネマティック・ユニバース」として扱われていることは、コミックファンならば周知の事実だろう。

しかし、このマーベル・シネマティック・ユニバースには一部のキャラクターを登場させられない状況となっていた。1990年代にマーベルが20世紀フォックスに『X-MEN』『ファンタスティック・フォー』やそのキャラクターの映像化権を譲り渡したため、両コミックのキャラクターはマーベル・エンターテインメント直下の映像作品に登場できないようになっていたのである(同じように『スパイダーマン』の映像化権はソニー・ピクチャーズが有しているが、マーベルとソニーの事業提携によって、スパイダーマンは2016年『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』よりマーベル・シネマティック・ユニバースに登場している)。
こうした状況に対して、一部のファンは全キャラクターの合流を熱望してきた。アベンジャーズとX-MENが共演できないのは完全なる“大人の事情”であって、究極的にはファンに関係のないものだからだ……。ちなみに、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は「合流は難しい」という姿勢をしばらく貫いていたものの、ここ最近はその態度を軟化させつつあった

WSJ誌によると、ディズニーが21世紀フォックス社の事業買収交渉へと踏み切った理由には、フォックスが権利を有するキャラクターを、再びマーベル・エンターテインメントに取り戻すという部分も大きいという。

もちろんディズニーが2018年に独自の映像配信サービスを開始する以上、そのコンテンツ強化のため……という側面が強いと思われるが、この2点は必ずしも別個の問題ではないだろう。なぜなら事業買収に成功すれば、マーベル・ヒーローの登場する作品は、すべてディズニーの映像配信サービスでしか観られないという状況を作り出せるのである。現在のハリウッドにおけるヒーロー映画の、なかでもマーベル映画の存在感を鑑みれば、これは非常に強力なコンテンツとなるに違いない。逆にいえば、20世紀フォックスの手がけるマーベル映画は、もはやクオリティの面でもビジネスの面でもディズニーにとって無視できない存在だということだろう。

もちろんディズニーによる事業買収が行われた場合、20世紀フォックスによる“自由な表現の”ヒーロー映画が今後どうなるのかという懸念は捨てきれない。『デッドプール』(2016)や『LOGAN/ローガン』(2017)のもたらした衝撃と可能性は大きかったが、それらはいわゆる「ディズニー主導のマーベル映画」では決して実現できなかったと思われるからだ。

なおWSJ誌も、ディズニーと21世紀フォックスの事業買収交渉は現在中止されており、再開されるかどうかは不明だと報じている。

Sources: https://www.wsj.com/articles/streaming-dreams-drove-disneys-interest-in-fox-assets-1510137002
http://comicbook.com/marvel/2017/11/08/disney-fox-deal-marvel-x-men-fantastic-four-netflix/
Eyecatch Image: Dimka.aman ( https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Comics_.jpg )

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。