ケヴィン・ファイギ「アドバイスなんて何の意味もない」 ─ マーベル映画の成功「やってみないと何もわからない」

「ファイギみたいなトップがいれば…。」近年、映画のシリーズ化を語る際にしばしば囁かれるようになった言葉ではないだろうか。
『アベンジャーズ』などマーベル・スタジオ/ディズニーのマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は快進撃が続いており、2018年には『ブラックパンサー』が2月に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が4月に、『アントマン&ワスプ』が7月にそれぞれ米公開。極めて短いスパンながらも『ブラックパンサー』『インフィニティ・ウォー』はそれぞれ全映画史上3位と4位の米国内興行収入成績を収め、『アントマン&ワスプ』も全米初登場1位の週末記録をあげた。
この快挙は、シリーズの舵取り人であるケヴィン・ファイギの手腕によるところが大きい。ファイギ氏は筋金入りのマーベル・オタクとしての知識量を買われ、『X-メン』(2000)でアソシエイト・プロデューサーとして初従事。以来、マーベル映画の多くに携わるようになり、2007年にはマーベル・スタジオ社長に就任する。複数の映画が一つの世界観を共有する「シネマティック・ユニバース」構想や、MCU作品を物語のまとまりごとに区切る「フェーズ」構想などは、ファイギ氏の壮大なヴィジョンによるものだ。
MCUのシリーズ累計興行収入は170億ドル(1兆8,800億円)超え。こうした爆発的な成功に続けと、様々な映画がシリーズ展開を図っている。中でも比較対象に挙げられやすいのが、ライバルのDCコミックス原作の映画シリーズ。多くのファンを生み出しながらも、やはりMCUが規模や興行収入・批評面でも圧倒するのが実情だ。
「アドバイスなんて意味がない」
スーパーパワーめいたバランス感覚と、若手や異才のフィルムメーカーを起用しながらもいずれも大ヒットに導く采配センスや先見性決断力で、ファイギ氏率いるマーベル・スタジオは「メディアの未来を創り出した」として、米経済誌ファスト・カンパニーの「世界で最も革新的な企業」トップ50にも選出されるほど。
「一人勝ち」に近いマーベル・スタジオは、メディア取材の中でこうしたライバルらにアドバイスを求められることも少なくない。しかし、とりわけケヴィン・ファイギはこうした質問をやんわりと、かつ謙虚に流す様がいつも印象的だ。Daily Newsによる最新のインタビューでも、ファイギ氏は次のように答えている。
「ありがたくも映画制作をさせて頂く中で、学んだことがあります。実際にやってみなければ、どうなっているのかなんて分からないということ。アドバイスなんて何の意味もありません。あちこちで環境が違いますから。どんな問題が予測されて、誰が何をやるのかなんて…。私は人にアドバイスを与えるような人間じゃないんです。」
ケヴィン・ファイギ以外にも『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』監督のルッソ兄弟にも同じアドバイスが求めらることがある。ジョー・ルッソは以前、米Varietyに対し「止めたほうがいい。シネマティック・ユニバースにしたからといって、全てが支えられるわけではありません」と制止。「アドバイスをするなら、新しい物語の語り方を探し続けるべきだ、ということになるでしょうね。」「テクノロジーは成長していますし、観客はYouTubeのほか、簡潔かつ簡単、流動的なソーシャルメディア上でコンテンツを摂取することにも慣れている。長い時間をかけて(コンテンツに)情熱を傾けるのも好きだと思います」と分析し、やはり「ユニバースを作らずにすむ(ストーリーテリングの)方法もたくさんありますよ」と結ぶ。
『スター・ウォーズ』率いる噂もあった
MCUの大成功は、ファイギ氏のマーベル・コミックに対する圧倒的な知識量と作品愛があってこそと言われる。『スター・ウォーズ』も幼少の頃から夢中だったというファイギだけあって、キャスリーン・ケネディに代わってルーカスフィルムのトップに就任し、『スター・ウォーズ』を立て直すのではないかとの噂も囁かれたほどだ。この噂は、後になってファイギ氏本人によって否定。SlashFilmが尋ねたところ、「いいえ、アクションフィギュアと裏庭で遊ぶだけにしておきます」と笑って答えたという。
先のインタビューでファイギ氏は、「特にディズニーでは、多くの人達が大きな成功を収めていますね。ライバルや、私たちをも上回るほどの成功もあります。私が彼らからアドバイスを貰いたいくらいですよ!」とも答えている。作品に対する確かな理解・知識・愛情に加え、学びに謙虚な姿勢も成功の秘訣に違いない。
Source:Daily News,SlashFilm
Photo by Gage Skidmore