ハリウッド大手企業、映画・ドラマの撮影中止を続々発表 ─ 新型コロナウイルス各社対応まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大がハリウッドに甚大な影響を与えている。かねてより『007』『ワイルド・スピード』『ムーラン』などの話題作が相次いで世界的に公開延期となっていたが、いまやスタジオ各社は、現在進行中のプロジェクトを軒並み中断することを決定。中断の期間はスタジオや企画ごとに異なるとみられるが、少なくとも2~3週間に及ぶ可能性があるとされている。
ウォルト・ディズニー/20世紀スタジオ/マーベル
2020年3月13日(米国時間)、ウォルト・ディズニー・カンパニーは、自社が手がける長編映画の撮影をすべて中断することを発表。発表によれば、撮影現場からコロナウイルスの感染者が出たのではなく、あくまで現状を鑑みての自粛とのこと。状況を見ながら、できるかぎり早期の再開を目指すという。
影響が生じたのは、翌週からイギリス・ロンドンで撮影予定だった実写版『リトル・マーメイド(原題:The Little Mermaid)』や、すでに撮影に入っていた、マット・デイモン&ベン・アフレック&アダム・ドライバー共演『The Last Duel(原題)』、ギレルモ・デル・トロ監督最新作『Nightmare Alley(原題)』、リブート版『ホーム・アローン(原題:Home Alone)』などだ。『The Last Duel』は撮影が4週間以上進んでいるため、リドリー・スコット監督は編集作業に移行する。なお、撮影準備段階にあった実写版『ピーターパン(原題:Peter Pan and Wendy)』と『ミクロキッズ』シリーズ最新作も作業中断となった。
マーベル・スタジオは、ディズニーによる全面中断の発表に先がけて、2021年公開作品『シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テン・リングス(原題)』の撮影を一時中断していた。これは、デスティン・ダニエル・クレットン監督が新型コロナウイルスの検査を受け、結果が出るまでは自己隔離するという判断を下したため。監督は子どもが生まれたばかりで、家族の健康を鑑みて、医師の提案に従ったという。ただし『シャン・チー』も、ディズニーの方針に従い、その他の企画と同じ形での中断となった。
なおディズニー・テレビジョン・スタジオは、新たに撮影される予定だったテレビシリーズのパイロット版について、いずれも撮影を見合わせることを発表している。
ソニー・ピクチャーズ
ソニー・ピクチャーズは、エル・ファニング&ダコタ・ファニング姉妹の初共演で話題の『ナイチンゲール(原題:The Nightingale)』と、人気ファンタジー小説『時の車輪』シリーズをテレビシリーズ化する「The Wheel of Time(原題)」の企画中断を決定した。どちらもヨーロッパにて企画が進められており、『ナイチンゲール』はハンガリー・ブダペストにて撮影準備が行われていたが、2週間の凍結となっている。「The Wheel of Time」はチェコ・プラハにて撮影が行われていた。
ユニバーサル・ピクチャーズ
ユニバーサル・ピクチャーズは、『ジュラシック・ワールド』シリーズ最新作『ジュラシック・ワールド/ドミニオン(原題:Jurassic World: Dominion)』の撮影を中断。女性ボクサーのクラレッサ・シールズを描く伝記映画『フリント・ストロング(原題:Flint Strong)』、ジャド・アパトー製作のコメディ映画(タイトル未定)の撮影および撮影準備を見合わせている。
ワーナー・ブラザース
ワーナー・ブラザースは、DC映画『ザ・バットマン(原題:The Batman)』の撮影を2週間にわたって中断することを発表した。
ワーナー・ブラザース・テレビジョンは、人気のDCドラマ「THE FLASH/フラッシュ」シーズン6の撮影中断を決定。ただいまシーズン6は米国放送中であり、撮影は2020年4月上旬に終了予定だった。中断を受けて、シーズン6の放送に影響が生じる可能性もあるとみられる。ワーナー&Netflixの共同製作による「LUCIFER/ルシファー」もシーズン5の撮影終了を間際に控えての中断、また「バットウーマン」も同様の対応となっている。
米CW局とワーナーの共同製作による「スーパーナチュラル」「THE 100/ハンドレッド」は、それぞれ最終シーズンの撮影が終盤を迎えていたものの、やむを得ず中断が決定された。前者は残り数週間、後者に至っては残り数日間しか撮影を残していない状況だったが、プロデューサーはキャスト&スタッフの安全を考慮し、長きにわたる検討の末に苦渋の決断を下したという。
「THE FLASH」と同じくワーナー・ブラザースとBerlanti Productionsが手がける「リバーデイル」については、これに先がけて、製作メンバーのひとりが新型コロナウイルスの感染者と接触したことが判明したことから、シーズン4の撮影が中断されていた。
FX、AMCほか
事業統合によってウォルト・ディズニー傘下となった米FX局は、ドナルド・グローバーが手がける「アトランタ」をはじめ、人気シリーズ「FARGO/ファーゴ」「スノーフォール」の撮影を凍結。新たに企画が進められていた、同名コミックのドラマ版「Y: THE LAST MAN(原題)」も中断が決定されている。いずれも大きな注目を集めていた作品だけに、今後への影響が懸念される。
米AMC局は、「フィアー・ザ・ウォーキング・デッド」の製作を約3週間にわたって中断する見込み。「ウォーキング・デッド」メインシリーズはシーズン11の撮影準備が進められていたが、こちらもスタッフの健康を考慮して延期されることがわかった。ただし、脚本家チームの作業はリモートワークにて行われるということだ。
なお、本記事に挙げたものは全体のごく一部にすぎず、米国のテレビ局はドラマやバラエティなどのジャンルを問わずに番組の撮影中断を相次いで決定している。いずれも製作の再開は状況を鑑みて行われることになるだろう。
Netflix、Apple、Amazon
Netflixは、映画・テレビシリーズの企画をすべて一時中断することを決定。人気シリーズ「ストレンジャー・シングス」「グレイス&フランキー」新シーズンをはじめ、新作ドラマ「Sex/Life(原題)」、メリル・ストリープ&ニコール・キッドマンら出演のミュージカル映画『The Prom(原題)』などは撮影が始まっていた。『ドクター・スリープ』(2019)マイク・フラナガン監督による新作ドラマ「Midnight Mass(原題)」は3月16日(米国時間)に撮影開始予定、ユニバーサル・テレビジョン共同製作の「ロシアン・ドール: 謎のタイムループ」シーズン2は撮影準備段階だったが、どちらも同じく中断となっている。
同じくストリーミング業界では、Appleも自社サービス「Apple TV+」向けのシリーズをすべて中断した。ジェイソン・モモア主演「See ~暗闇の世界~」や「ザ・モーニング・ショー」、「リトル・アメリカ」、「神話クエスト: レイヴンズ・バンケット」、M・ナイト・シャマラン製作「サーヴァント ターナー家の子守」、「フォー・オール・マンカインド」などに影響が生じている。
なおAmazon Studiosは、オーランド・ブルーム&カーラ・デルヴィーニュ主演のファンタジー・ドラマ「カーニバル・ロウ」シーズン2を中断。同作はチェコ・プラハにて撮影が行われていた。
▼新型コロナウイルスの影響 の記事
『トップガン マーヴェリック』の大ヒット、『スパイダーマン』ソニー幹部はどう見たか ─ 「彼らは我々の挑戦から利益を得ている」その真意は 次は『ブレット・トレイン』 『シャーロック・ホームズ』第3作はコロナ禍で「頓挫」 ─ 「いつか製作されるはず」と監督が希望語る えぇ… 『ザ・バットマン』米最大手の映画館が特別料金を導入 ─ 苦境続く映画館業界、約3時間の上映時間も背景か 『スパイダーマン』に次ぐ話題作 ヒュー・ジャックマンが新型コロナ感染、主演舞台が中断に 軽症とのこと 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』1度目の公開延期、監督も発表直前に知らされた ─ 2020年春、コロナ禍でギリギリの調整 もう1年半前になります
Source: Deadline(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9), Variety(1, 2, ), The Hollywood Reporter(1, 2,), IndieWire, TV Line, Mike Flanagan