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【ネタバレ】『モービウス』ラスト解説とレビュー ─ 「ユニバース構想の呪縛」ふたたび

モービウス
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この記事には、『モービウス』のネタバレが含まれています。

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『モービウス』はユニバース構造にこだわりすぎたか

多くのスーパーヒーロー映画がそうであるように、『モービウス』はスーパーパワーに対する「贈り物か、呪いか」の相反する価値観を描く物語だ。血液の難病を患っていた主人公のマイケル・モービウスとその親友マイロは、コウモリの血清によって超人的な能力を得る。一方はその力を「呪い」と見做して制御を試みるが、もう一方はコンプレックスの裏返しから、力を「贈り物」として享受する。かつて親友同士だった2人は、同じ能力のもと分断し、対決に挑むこととなる。

これは過去のスーパーヒーロー映画でさんざん描かれてきたものだ。『スパイダーマン3』(2007)や『アイアンマン』(2008)に『インクレディブル・ハルク』(2008)『アントマン』(2015)『ブラックパンサー』(2018)、そして同じくソニーの『ヴェノム』2作に至っても、ヒーローとヴィランは同じ「力の源」にアクセスし、善悪に別れて戦う。違うのは、その源が科学技術なのか、魔術なのか、SFなのかという点だけだ。

筆者は『モービウス』の公開にあたって、ダニエル・エスピノーサ監督や主演ジャレッド・レトをはじめ、マット・スミス、アドリア ・アルホナへのインタビュー取材も行っている。当然、思い入れや好印象を抱いているが、本作はその大部分においてファンの期待に必ずしも答えられていないと考えている。プロットは典型的で、アクションは盛り上がりに欠ける。そして、今になって「ユニバース構想の呪縛」が復活していると見られる点が問題だと感じている。

2012年にマーベル・スタジオが初のクロスオーバー大作『アベンジャーズ』を成功させて以来、ハリウッドの大手スタジオの多くがこれに続けと「ユニバース構想」のもと映画シリーズ企画を打ち立てた。そして、その多くが失敗に終わった。開き直ったDC/ワーナーが『ジョーカー』『ザ・バットマン』といった独立作を製作すると、いずれも大ヒット。ハリウッドでは、「必ずしもユニバース構想にこだわる必要はない」との原理に立ち返ったものと思われていた。

しかし『モービウス』では、企画されているであろう「シニスター・シックス」への導入として急いだあまり、本編の方はおざなりになっている印象がある。「シニスター・シックス」とはスパイダーマンのヴィランたちが集結したチームのことで、誤解を恐れずに言うなら「悪役版アベンジャーズ」のようなもの。『ヴェノム』がファンに好意的に受け入れらたソニーは、この『モービウス』を含め、スパイダーマンのヴィラン関連の映画企画を続々と立ち上げており、将来的に彼らが集結する「シニスター・シックス」映画を製作したいものと見られている。

DCの『ザ・バットマン』でマット・リーヴス監督が、他のシリーズ作とのタイインを嫌って独自の世界観を築くことにこだわり、結果としてそれが功を奏した最新事例とは対照的に、『モービウス』はユニバースの今後に向けた2時間弱の導入編としての役割に終始している印象がある。

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『モービウス』ラストシーン解説

本編で主人公モービウスが戦いを終えた後、突然夜空に「割れ目」が生じ、マーベル・シネマティック・ユニバースからバルチャー/エイドリアン・トゥームス(マイケル・キートン)が転送されてくる。トゥームスは『スパイダーマン:ホームカミング』同様のスーツと共にモービウスと落ち合い、共謀を働きかける。

整理がつかない描写が多いので、このクレジット・シーンは取ってつけたような印象が拭えない。まず、夜空に「割れ目」が生じて異世界の人物が転送される展開は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のラストの展開を受けてのものだろう。ただし、『ノー・ウェイ・ホーム』のラストは、MCU世界に転送されていたヴィラン(ヴェノムを含む)が元の世界に戻る、という効力であったはず。MCU世界にいたトゥームスがソニー・ユニバースに転送されてきたということであれば、それは設定としてやり過ぎだ。なぜなら、それはヴィランたちがシャッフルされるように、ランダムに異世界を往来していたことになるからである。

また、あくまで一般人であるトゥームスが、突如別世界に転送されてきたにも関わらず、事態を把握していたかのような描写も不自然だ。『ノー・ウェイ・ホーム』で現れたノーマン・オズボーンは、転送されたMCU世界では自宅がないため浮浪者同然になっていたにも関わらず、本作でのトゥームスはきちんとスーツやショッカーのガジェットを取り戻していた点も矛盾している。

さらに、善人であり、本編では能力の恐ろしさを身をもって学んだはずのモービウスが、なぜトゥームスと合流しなければならないのかや、2人がいかにして知り合ったかも謎のままだ。そもそも『モービウス』の世界にはまだスパイダーマンは現れていないはずなので、トゥームスのセリフも辻褄が合わない。これらは、物語上の都合よりも、「ユニバース構造」に関する都合が優先されたために生じた綻びだ。

ミスリードもあった。予告編映像は、トゥームスがより本編に影響するような印象を与えていたが、結局のところクレジットシーンに登場したのみ。スパイダーマンの落書きを前にモービウスが走るカットや、様々な考察を呼んでいたオズコープ社の登場もなかった。

『モービウス』は、本編の物足りなさを、クレジットシーンの力技で帳消しにしようと試みたような作品だ。筆者はいつだってマーベル作品の楽観的なファンであり、何事にも肯定的であろうと努めているが、『モービウス』は、作品の本編よりも、むしろクロスオーバー要素を急いでいるような印象が否めない。ジャレッド・レトやマット・スミスの演技は、もちろんながら素晴らしかったのだが。

「贈り物か、呪いか」。『モービウス』に限って言えば、「ユニバース構想」が米ソニーにとっての「呪い」になっていたのではないか。続く『クレイヴン・ザ・ハンター(原題)』では、堅実な作風に期待したい。

『モービウス』は公開中。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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