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『トップガン マーヴェリック』飛行体験をしたら失神スレスレで地獄を見た話 ─ 米サンディエゴで出演者と同じ本物フライトに行ってみた

ホールド・マイ・ハンド

ラウンジルーム奥のベッドで休むことになった。飛行場の女性スタッフが、水やジンジャーエールを運んでくれた。ジンジャーエールは胃に効くらしい。他にもいろいろと声をかけてくれたが、もう英語を聞き取る体力が残っていない。速やかに水分を補給して、ベッドに倒れ込んだ。

他のメンバーはみんな平気だったのだろうか?どうやらここまでダウンしたのは自分だけのようだった。みんなが飛行の興奮について語り合っている声が、隣の部屋から聞こえる。

呻き声を漏らしながら、目を瞑る。頭の中がグルグルと回っている。実際のところ、目を瞑ってしまうと、自分がまだ空にいるのか、それとも地上にいるのかが分からなくなる。混乱しきった意識は、闇の中で独自の風景を描き始めた。天と地が回転する強烈な光景が再現され、それが蜂蜜とヨーグルトのようにドロドロにかき混ぜられる。

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何気なく目を開いてみると、固定された壁と、固定されたウォールシェルフと、その上に固定されたオブジェたちが、当たり前のように固定されている。暴走した意識が勝手に描き出した流動する光景と、たったいま視覚を通じて脳が傍受した現実の静の光景が合致しない。そのことに脳が強い衝撃を受けて、水晶玉がガッシャーンと砕けるような振盪。瞬間、吐き気が襲ってきた。今度のは止められない。喉元まで確実に駆け上がってくる。

奥のバスルームに駆け込み、洗面台に向かって思い切り吐き出す。身体から胃液が一目散に逃げ流れて行く。何度か吐き出したのち、ようやく気分が落ち着いてきた。酒に酔った時と同じだ。

ベッドでもうしばらく休み、ホテルに戻る時間となった。身体を引きずってラウンジルームに戻ると、飛行場オーナーのテックスが締めくくりの挨拶をしていた。もう英語の話を聞き取る余裕はなかったが、彼が「俺は12時間ぶっ続けで飛んだこともあるんだぜ、HAHAHA」と言ったのだけは聞き逃さなかった。超人だ。この人は超人に違いない。

帰りのバスでは最後部席で横になり、飛行と比べればなんでもないようなバスの揺れにも必死に耐えて過ごした。ホテルに到着すると、このままロサンゼルスに戻ってディナーの約束があるというLawと別れた。どうして君はそんなに元気なんだい。

ようやく部屋に戻ると、そのままベッドに倒れ込み、2時間ほど泥になった。目が覚めるとやっと調子が戻っていて、熱いシャワーを浴び、そのままYouTube用に動画を撮影した。その後、別グループだったJoshの誘いで夕食に出かけ、ホテルに戻った後も深夜までバーで杯を交わした。飛行体験では、Joshもダウンしてしまったらしい。僕が休んだのと同じベッドで気絶したように寝込む写真を見せてくれた。どうやら、各グループに数名はGに耐えられなかった者がいたらしく、そのことに安心させられた。聞くところによると、Joshと一緒のグループだったインフルエンサーのJujuは、着けていたサングラスのフレームが飛行の衝撃でグニャリとひん曲がってしまったらしい。

トップガン マーヴェリック』は本当に凄かった

この旅を通じて、『トップガン マーヴェリック』がいかに常軌を逸した映画であるかを、多大な苦労を伴って実感することができた。劇中で彼らが戦闘機を上昇・下降させたり、旋回させたりするとき、キャストには本物のGがかかっているのだ。それを、そのまま味わってきたのである。

G。アルファベット1文字で聞く分には無害だが、これは確実に人の体力と意識を破壊するものだ。これに耐えられるよう、キャストたちは5ヶ月にもおよぶ過酷な訓練をこなしている。汗と涙と吐瀉物にまみれている。たった一回の飛行で地獄を味わった僕は、これを5ヶ月も繰り返し、さらに大予算映画の撮影というプレッシャーと共に空中で演技をした彼らに、最上級の敬意を表したい。同時に、己より大きなものを守るために戦う実際の軍パイロットたちにも、頭が上がらない思いである。

キャストの中には、きっと今回の僕のように、飛行に極めて不慣れな者もいたはずだ。しかし完成した映画では、彼らは本物のエリート・パイロットであるようにしか見えない。その裏にあったであろう訓練の深刻な苦労は、想像しただけで意識が遠のくほどだ。

ダニー・ラミレス(ファンボーイ役)によれば、空撮時に彼らは同時にいくつものことをこなしていたという。バイザーをクリアにしたり、メイクを確認したり、セリフを発したり、といったことだ。驚くべきことに彼らは、「太陽の位置やルート、山のどの部分にいる時に、どのセリフをいつ言うのか」まで記憶していたらしい。激しい飛行の最中、冷静な判断と共にセリフを選んで発していたというのだ。それは多くの人にとって、ぐるぐるバットの直後に逆立ちしたまま神経衰弱ゲームで勝利することのように難しいだろう。

しかし彼らは、それを可能にした。なぜか?日本への復路便の中、もう一度アメリカの空に包まれて思い馳せる。なぜ彼らは可能にできたのか?それは、彼らがスターだからだ。それが『トップガン マーヴェリック』だからだ。

トップガン マーヴェリック
(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

この度の体当たり取材レポートと、僕がグロッキー状態になる様子も含む実際の飛行映像と共に、『トップガン マーヴェリック』の凄まじさが改めて実感できるようであれば、あの酷い苦労も報われるというものだ。自宅での鑑賞が可能になった『トップガン マーヴェリック』、あなた自身も空を飛ぶ気持ちで、何度でもご堪能いただきたい。

アメリカチームがカッコよく編集してくれたハイライト映像

本当は何があったのかを語るトーク映像

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューさせていただきました。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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