『トップガン マーヴェリック』日本・台湾の国旗が一時消えた理由とは

幾度とない公開延期を繰り返してようやくお披露目となった『トップガン マーヴェリック』の事前プロモーションでは、トム・クルーズの着るジャケット背面のパッチから、日本と台湾の国旗が消えているとの指摘が話題になったことがあった。
発端となったのは2019年7月に公開されたティザーポスターと特報映像。マーヴェリックが袖を通すお馴染みのG-1ジャケットから、日本と台湾の国旗が消え、代わりに似たような配色のマークに置き換えられていた。

これは当時、少なからぬ議論を招いた。『マーヴェリック』には当初、中国テンセント社が出資していたからだ。中国では海外の上映作品に検閲をかけ、プロパガンダのために作品内容の変更を求めることも珍しくない。例えば『ファイト・クラブ』(1999)配信時には、結末の展開をカットしたり、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)では、自由の女神が登場するシーンの削除を求めたりといった話題があった。
そのため『トップガン マーヴェリック』2019年の宣伝では、いわゆる「台湾問題」などに考慮して、製作側が国旗を自主的に差し替えたか、あるいは中国側の要求によって変更させられたのではないかとの見解があった。
しかし、後にテンセント社は『トップガン マーヴェリック』出資から撤退。米Wall Street Journalによると、米軍中心に描かれる本作のメッセージが共産党下の中国政府を怒らせるリスクを勘案し、本作との関わりを避けたためではないかという。米中関係は悪化状態が続いているが、『トップガン マーヴェリック』では中国側から手を引いた格好だ。
公開された劇場版では、マーヴェリックのジャケットは1作目と同様、日本と台湾の国旗があしらわれたものになっている。製作のパラマウントは、この件に関してコメントを控えている。そのため、「2019年の素材では中国市場に考慮して国旗を差し替えたのか」、「中国が撤退したため、劇場版では元の国旗に戻したのか」、その両点においての真相は不明だ。
筆者が製作のジェリー・ブラッカイマーに尋ねたところ、「劇中で着られていたジャケットは、1作目と同じもの」との回答が得られている。この時、筆者が「全く同じジャケットですか」と確認すると、ジェリーは「イエス」と答えた。
ここから察するに、2019年素材の差し替え版は、映画の宣伝側がCG処理で独自に変更したのではないか。実際に、宣伝にあたって製作陣が意図しない変更が加えられることは珍しくない。『モービウス』(2022)では、米ソニー側が独自の演出を予告編映像に挿入していた。
台湾の現地メディアの報告によると、同国での劇場公開版でも、ジャケットの日本・台湾の国旗は元に戻っている。これに対し、“多くの中国ネットユーザー”からは「我々に上映しても金にならないだろう。我々は海賊版を観ればいい」「ブラザー・トムよ、中国市場は金輪際、お前とは関わらないだろう」といった批判の声が挙がっているという。
現時点で、『トップガン マーヴェリック』中国公開の予定はない。
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Source:Taiwan News,WSJ