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『ブレードランナー 2049』監督が語る『スター・ウォーズ』の危うさ ― しかし「興味はある」

ドゥニ・ヴィルヌーヴ
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/35397143143/

映画『ブレードランナー 2049』(2017)や『メッセージ』(2016)など、話題と評価を両立させる作品を次々に手がけてきた映画監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが、今度は『スター・ウォーズ』シリーズへの興味を示した。

ヴィルヌーヴ監督といえば、フランク・ハーバートによるSF小説『デューン』の再映画化に着手しているほか、『クレオパトラ(原題:Cleopatra)』の契約交渉に参加、さらにはダニエル・クレイグから『007』第25作の監督に熱望されるほど、ハリウッドで現在最も注目されるクリエイターの一人だ。
自身の作風とシリーズへの敬意を織り合わせてみせる職人としての技術、それでいて唯一無二の世界を紡ぎ出す才能は、その作品群を確かめれば一目瞭然といえるだろう。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ
Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/35397143143/ )

ドゥニ・ヴィルヌーヴが考える『スター・ウォーズ』の「危うさ」

米国のポッドキャスト“Happy Sad Confused”に登場したヴィルヌーヴは、自身がスーパーヒーロー映画に高い関心を持ち合わせていないことを明かしたあと、『スター・ウォーズ』については「別物」だと話している。
1977年『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の公開当時10歳だった彼は、自身を「ターゲットの観客層だった」として、続く『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)を含む2本への愛着を示しているのだ。

では、もしも『スター・ウォーズ』シリーズを手がけるチャンスが巡ってきたら? ヴィルヌーヴは自身の観点から、その魅力と危うさを語っている。

「(『スター・ウォーズ』には)興味をそそられるでしょうね。わからないです、すごく難しいことですよ。現在の『スター・ウォーズ』が抱える危うさは、(作品が)『スター・ウォーズ』の言語になってしまうことです。(新作を)観たいと思いますし、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)は、その枠組みから飛び出そうとする、とても興味深い試みでしたね。」

作品が「『スター・ウォーズ』の言語になってしまう」とは、どんな映画監督が手がけても、完成した映画が『スター・ウォーズ』以外の何物でもなくなってしまう、ある意味で監督の作家性が漂白されてしまうことを指摘するものだろう。
確かにルーカスフィルムは、『ローグ・ワン』でギャレス・エドワーズ監督の試みを修正し、その強烈な個性で評価されるフィル・ロード&クリス・ミラー監督を、その個性ゆえに『ハン・ソロ(原題:Solo: A Star Wars Story)』から降板させるに至っているのだ。その一方でヴィルヌーヴ監督は、(とりわけ『ブレードランナー 2049』でその傾向がはっきり浮かび上がったように)自身の作家性を確実に打ち出すことを信条としているように思われる。

現在、ルーカスフィルムは『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督を迎えて、スカイウォーカー・サーガとは異なる“新しい3部作”の構想を進めている。では、『ローグ・ワン』と同じく『スター・ウォーズ』の枠組みを飛び出そうとする新3部作ならば、ヴィルヌーヴが就任する余地もあるだろうか……?

「(スカイウォーカー・サーガを)出て、銀河の新しい領域を目指すというのは素晴らしいアイデアだと思います。(監督する)可能性はあるでしょうね。」

ルーカスフィルムが掲げる『スター・ウォーズ』の方針や施策を見るかぎり、ヴィルヌーヴが『スター・ウォーズ』を手がける未来は当分訪れなさそうだが……もしも実現したら、それこそ「誰も見たことのない『スター・ウォーズ』」が誕生することは間違いないはずだ。

シリーズ最新作、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国ロードショー。

Sources: https://www.panoply.fm/podcasts/happysadconfused/episodes/4cRwmLkmKIG4imsgaYgwwe
https://screenrant.com/star-wars-denis-villeneuve-movie/
Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/35397143143/ )

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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