目の肥えた映画ファンに愛される気鋭の映画製作・配給スタジオ「A24」は、2023年も注目作揃いだ。ゴールデン・グローブ賞はじめ名だたる映画賞を29部門受賞、137ノミネートを果たした話題沸騰作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をはじめ、要注目の作品が多数控えている。

この記事では、2023年日本公開予定の「A24」作品ラインナップをご紹介しよう。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

ゴールデン・グローブ賞はじめ賞レースを席巻、アカデミー賞大本命とも呼び声高い本作は、「A24」史上最高の評価を得た注目作。監督は『スイス・アーミー・マン』で唯一無二センスと才能を見せつけたダニエル・シャイナート＆ダニエル・クワン（通称：ダニエルズ）。製作には『アベンジャーズ』シリーズの“ルッソ兄弟”ことアンソニー＆ジョー・ルッソが加わった。

主人公は、人生ドン底の主婦、エヴリン（ミシェル・ヨー）。経営するコインランドリーは破産寸前、ボケた頑固な父親に反抗期の娘、頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたフツーのおばさん。そんな彼女の前に、突如“別の宇宙（ユニバース）から来た”と名乗る夫・ウェイモンド（キー・ホイ・クァン）が現れ、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と驚愕の使命をエヴリンに背負わせる。ワケも分からず“マルチバース”にジャンプした彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、まさかの救世主に覚醒する？

アメコミ映画でおなじみとなりつつある「マルチバース」のコンセプトを、カオティックでドラマチック、そしてロマンチックに仕上げた予測不能の一本。2023年3月3日日本公開。

『ザ・ホエール』

『ハムナプトラ』などで一世を風靡したブレンダン・フレイザーがカムバックを果たしたことでも話題の作品。第79回ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映時より主演のブレンダン・フレイザーの演技に絶賛の声が寄せられた。2022年12月9日北米全6館で限定公開されると、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を超える1スクリーン興収平均記録を打ち立てた。ダーレン・アロノフスキー監督作品としては『ブラック・スワン』以来最高のオープニング成績を叩き出している。現地では12月21日からの拡大公開、さらに2023年1月に超拡大公開を予定。

自宅のソファからほとんど動かず、引きこもり生活を送り続けた結果、重度の肥満症となったチャーリー。さらに心不全を患い自身の死期が近いことを悟ったことで、過食の原因ともなった長らく押し込め続けたトラウマと向き合うことを決意。自らが壊してしまった家族、疎遠だった娘との絆を取り戻そうとする彼の最期の5日間を描く。

アロノフスキー監督の『レスラー』（2008）が刺さった方は必見。心をえぐるような喪失と絶望、深い悲しみ、複雑で多くの重荷を抱えながらもどこかチャーミングさと温かさ、知性を兼ね備えるチャーリー。ともすれば目を背けたくなる異形な姿で世界から断絶せざるをえなくなった彼が、心の奥底で信じ続ける願いとは。誰しもが抱える人間の弱さを率直に描いた感動のドラマだ。2023年4月日本公開。

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賞レース有力作

『Pearl（原題）』

「A24」といえば、『へレディタリー／継承』や『ミッドサマー』など恐怖とユニークさを両立したホラー作品も大得意。中でも農場に迷い込んだ若者たちを殺しまくる史上最高齢の殺人鬼“パール”を生み出した『X エックス』はA24史上最恐の作品と名高い。そんな『X エックス』の待望の続編であり殺人鬼・パールの少女時代が描かれる。

孤立した家族の農場で、厳しい母の監視のもと病気の父の世話をする少女・パール。自分の暮らしと対象的である映画のような華やかな生活に憧れる彼女は、やがて野望、誘惑、抑圧のすべてを残酷な形でぶつけていく。主人公のパールを演じるのは『X エックス』でヒロイン、マキシーンとパールの1人2役を熱演した次世代の絶叫クイーン、ミア・ゴス。監督も前作よりタイ・ウェストが続投する。

海外予告編では前作『X エックス』でも象徴的に登場した、パールのお気に入りアイテム“巨大フォーク”や大活躍を見せた“巨大ワニ”の姿も。果たして純粋な少女はどのようにして最恐の殺人鬼に変貌したのか？2022年9月16日より全米公開されており、現時点で日本公開日は未定。