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エリザベス・デビッキ、『TENET テネット』キャット役までの活躍を総振り返り ─ 『華麗なるギャツビー』からマーベル映画まで

エリザベス・デビッキ  Elizabeth Debicki
Abaca Press/Marechal Aurore/Abaca/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

クリストファー・ノーラン監督待望の最新作『TENET テネット』(2020)で、ジョン・デイビッド・ワシントンやロバート・パティンソンと共に主要キャラクターの1人を演じた女優エリザベス・デビッキ

ケネス・ブラナー演じる悪役セイターの妻で、絵画鑑定士としての顔も持つキャット役で一際脚光を浴びているデビッキには、カメレオン女優としての定評もある。ノーラン監督がデビッキの過去作を観た際、見た目や話し方を自在に操るその技術ゆえに「同一人物とも思わなかった」と驚いたほどだ。

TENET テネット
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本記事では、これまで数々のハリウッド話題作に出演を重ねてきたデビッキの魅力を代表作と共に振り返る。

幼少時代はバレエ一筋、女優の道は大学から

1990年フランス・パリ、デビッキは共にバレエダンサーだったポーランド人の父親とアイルランド系オーストラリア人の母親の間に生まれる。5歳の時にオーストラリア・メルボルンへ移住。後にバレエと出会い、大学で演技の道に進むまでバレリーナとしての訓練を受けていた。

かつて英Vogueに「自分は怠けたバレリーナだった」と謙遜していたデビッキだが、自身を実力派女優に導いた“ストイックさ”は、バレエでの経験からしっかり学び得ていたようだ。豪Daily Mail Australiaに「バレエには規律を重んじる精神がある」「ああいう風に鍛えられると心構えにも影響を与える」と語るデビッキ。バレエや演技に通じる“規律”を失うと進化が妨げられるという、自身の信念も明かしている。

豪メルボルン東部にあるHuntingtower Schoolに通ったデビッキは、2007年に同校を主席で卒業。殊に英語と演劇で申し分のない成績を残した。その後、メルボルン大学ヴィクトリアン・カレッジ・オブ・ジ・アーツで演技を学んだデビッキは、優秀な生徒にのみ与えられる奨学金を取得するなど、学業に打ち込んだ。

女優デビューを飾ったのは、2011年公開のオーストラリア映画『A Few Best Men(原題)』。同作では秘書役を演じた。約2年後の2013年、出演2作目にして『ロミオ+ジュリエット』(1996)『ムーラン・ルージュ』(2001)などで知られるバズ・ラーマン監督の『華麗なるギャツビー』の主要キャストに抜擢される。

『華麗なるギャツビー』を皮切りに、ハリウッド大作や話題作への出演を重ねてきたデビッキ。ここからは彼女の代表作をピックアップして、『TENET テネット』に至るまでの活躍の軌跡を辿っていきたい。

『華麗なるギャツビー』(2013)

バズ・ラーマン監督、レオナルド・ディカプリオ主演のラブロマンス作品。20世紀前半「失われた世代」に属したアメリカの作家F・スコット・フィッツジェラルドによる同名小説を原作としている。

当時まだ無名だったデビッキにとって出演のきっかけとなったのは、ラーマン監督のオフィスに届けられた彼女のオーディション映像。これを見た監督は、デビッキをハリウッドで行われるオーディションに呼び寄せたのだそう。デビッキは、主演のディカプリオやトビー・マグワイアらと共にスクリーンテストを受けて、物語のキーパーソンの1人ジョーダン・ベーカー役の座を見事射止めた

名だたる俳優陣とのスクリーンテストについて、デビッキは「最初はすごく圧倒されました」と話す。役を得た後、しばらくは夢うつつの気分だったのだろう。「飛行機で帰っている時でさえ、“これは実際に起きたことなんだ”と言い聞かせなくてはなりませんでした。非現実的でしたから」とも話している。

そんなデビッキは、出演2作目とは思えない程の堂々とした演技を披露している。デビッキ演じるジョーダンは、ギャツビー(ディカプリオ)とトム・ブキャナン(ジョエル・エドガートン)、両者と顔見知り。狂言回しのニックを除き、物語のヒロインであるデイジー(キャリー・マリガン)を巡る争いで唯一の中立的立場にいる難しい役どころなのだ。デビッキの演技には、「クールな自信を放っている」と米Indiwireが絶賛している他、オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞は、彼女に助演女優賞を贈っている。

『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)

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『華麗なるギャツビー』から2年後、デビッキは『スナッチ』(2000)『シャーロック・ホームズ』シリーズなどで知られるガイ・リッチー監督のスパイ・アクション『コードネーム U.N.C.L.E.』に出演。ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー、ヒュー・グラントら豪華俳優陣が揃う中で、デビッキは国際犯罪組織の黒幕ヴィクトリアを演じた。

60年代を舞台にした本作では、デビッキの演技はもちろんのこと、身長191センチという“超”が付くほど抜群な彼女のスタイルが存分に輝いている。シンプルにスーツを着こなすカヴィルやハマーと対照的に、目を引くユニークなデザインの衣装を見事にめかすデビッキ。白と黒が基調のドレスやホルターネック、オードリー・ヘップバーンを彷彿とさせるクラシックファッションなど、衣装からだけでもデビッキの魅力がとことん伝わる1作だ。

2015年、デビッキは本作を含めて、マイケル・ファスベンダー主演『マクベス』とディザスター映画『エベレスト 3D』の計3本に出演した。着実なキャリアを歩んでいるデビッキは自身の幸運を英The Guardianに語る一方で、「次の日の朝に目覚めたら、“誰かに役が渡ってしまうかもしれないから、今やらなきゃ”っていう風に思うんです」とも話しており、貪欲な姿勢はバレリーナ時代から変わらず持ち続けているようだ。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
Walt Disney Studios Motion Pictures/Photofest 写真:ゼータ イメージ

デビッキのマーベル進出となった作品が、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』。ガーディアンズを追跡するソヴリンの女王・アイーシャ役で出演した。全身が金色のアイーシャは、それまでにデビッキが演じた中で最もユニークなキャラクターと言えるかもしれない。

少ない出番の中で、デビッキはアイーシャを好演。シリーズ監督を務めるジェームズ・ガンは「これまでご一緒した役者の中でお気に入りの1人です」とデビッキを絶賛しており、「また一緒にやりたい」と再タッグを望んでいた

両者の再タッグが叶うとしたら、予定されているシリーズ第3作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3(原題)』が最速だろうか。というのも、ガン監督は第3作でアイーシャ復帰を計画していることを明かしていたのだ。それからガン監督の一時解雇によって、第3作の公開時期に大幅な遅れが発生。現在までにデビッキの復帰に関する情報は出されていない。

しかし、デビッキ本人は復帰に前向きな様子。「時々、あの黄金の王座と黄金のドレスのことを考えますし、じっと出番を待ってるんです。ほんの少しだけでも復帰したいです」と意欲を語っていた

『ピーターラビット』(2018)

ピーターラビット

イギリスの湖水地方に暮らす人気キャラクター「ピーターラビット 」初の実写化作品となる本作で、デビッキは主人公ピーターの三つ子の妹モプシーの声を務めた。デビッキが声優を務めるのは、『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2017)の皇帝ハバン=リマイ役以来のこと。

幼少時代を「ピーターラビットと育ってきた」というデビッキは、本作での声優としての経験を「(演技)同様の難しさ」と語っている。一方で、「とても解放的だった」とも話しており、その多才ぶりをのびのび発揮したようだ。

ちなみに、本作のレコーディングは別撮りで行われたという。そんな中、一緒に収録した唯一の共演者が同じく三つ子の妹カトンテールを演じたデイジー・リドリーなのだそう。デビッキとデイジーは、続編『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』(2021年公開)に2人揃ってカムバック予定だ。

『ロスト・マネー 偽りの報酬』(2018)

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『それでも夜は明ける』(2013)などで知られるスティーヴ・マックイーン監督によるクライム・スリラー。ヴィオラ・デイヴィス、ミシェル・ロドリゲス、リーアム・ニーソン、コリン・ファレルなど豪華な出演陣に囲まれて、デビッキは未亡人の1人アリスを演じた。強盗の失敗により死亡した夫たちの落とし前をつけるべく、4人の未亡人が強盗を画策するというストーリーだ。

強盗犯の1人を演じたデビッキは、数々の映画賞にノミネートされ、高評価を獲得した。米Los Angeles Timesが「キャストが大勢いる中で傑出している」と絶賛すれば、米Indiewireは本作でのデビッキを2018年ベストパフォーマンス女優部門にノミネートするほどだ。

「アリスという役に惹き寄せられた」と語るデビッキ自身、「キャリアの中で、アリスのように現実的で本物らしく、多次元的に感じるキャラクターを待ち焦がれていた」と話しているあたり、本人にとって新たな挑戦となった1作なのかもしれない。

今後の出演情報

『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』

「ウサギ版アウトレイジ」「マッドマックス 怒りの湖水地方」などの異名で知られる、実写映画版『ピーターラビット』約2年越しの続編。デビッキは、マグレガー役のドーナル・グリーソンやビア役のローズ・バーンほか、ピーターの声を務める人気コメディアンのジェームズ・コーデン、マーゴット・ロビー、デイジー・リドリーらと共に復帰する。2021年米公開予定。

「ザ・クラウン」シーズン5&6

Netflixオリジナルシリーズの「ザ・クラウン」(2016-)で、デビッキはシーズン5&6に登場。作中では、ウェールズ公妃ダイアナを演じる。

発表にあたってデビッキは、「ダイアナ妃の精神、言葉、そして彼女の行動は多くの人々の心の中で存在し続けています」とコメント。「第1話から私を夢中にさせてきた、素晴らしい作品に参加できることは光栄であり、名誉なことでもあります」と語っている。シーズン4で初登場のエマ・コリンからダイアナ妃役を引き継ぐ形となる。

「Code Name Hélène(原題)」

第二次世界大戦末期に暗躍したニュージランド出身の女性スパイ、ナンシー・ウェイクの半生を描くリミテッド・シリーズ。デビッキは主演のほか、自身初の製作総指揮を務めることになる。

ナンシー・ウェイクは、第二次世界大戦末期にイギリス特殊作戦執行部(SOE)に所属していた実在のエージェント。大戦中に4つのコードネームを使い分けたウェイクの暗躍を、複数のタイムラインを織り交ぜながら展開していくという。

発表に際してデビッキは、「ナンシー・ウェイクはニュージーランドで生まれ、オーストラリアで育った、素晴らしい勇気と創意工夫を持った卓越した女性です」とコメント。「第二次世界大戦中の彼女の勇ましい行いは、あまりにも知られていないと思うんです。オーストラリア人である私が、女優そして製作総指揮としてこの作品に参加し、彼女のユニークな物語を伝えられて嬉しいです」と語った。

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『TENET テネット』キャスト候補ですらなかった
『TENET テネット』が難解すぎる
『Vol.3』復帰に意欲

Source: Vogue,Daily Mail Australia, Brisbane Times, Indiewire(1,2),The Guardian,IGN,HeyUGuys,Los Angeles Times,GQ

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。