来日セレブを守るために ─ 敏腕SP「守護神」牧村博一に訊いた身辺警護のウラ 『エンド・オブ・ステイツ』公開記念

「セレブの行くところにマッキーの姿あり」「守護神」と呼ばれる、敏腕SPがいる。これまで数多くのセレブの警護を担当してきた、牧村博一 氏(通称:マッキー)のことだ。海外セレブが来日する際のニュースの写真や映像では、スターの傍で目を光らせる牧村氏の姿を見たことがあるという方も多いはず。海外セレブからは直接指名を受けるほど絶大な信頼を得ており、その仕事ぶりは海外セレブのファンからも「◯◯の専属SPのマッキーさん」としてお馴染みになっているほどである。
THE RIVERでは、史上最強のシークレット・サービス、マイク・バニングが大統領を守るべく戦う『エンド・オブ』シリーズの最新作『エンド・オブ・ステイツ』の公開を記念して、日夜様々な身辺警護の現場で活躍する牧村氏に、普段はなかなか聞けないお話を伺った。牧村氏がWeb媒体のインタビューに登場するのは、これが初めてだ。
日本のマイク・バニング、牧村氏が語る「身辺警護の仕事」
──牧村さんがされている身辺警護やボディガードとは、どのようなお仕事ですか?
人を護るお仕事です。警護対象者はハリウッドの方やK-POPスターが多いですが、企業の社長さんやストーカーや脅迫被害に遭われている一般の方など様々な状況におかれている方々をお護りします。
──映画イベントの現場や空港で、来日スターの傍で目を光らせる牧村さんの姿を目にすることがよくあります。ああいった警護の裏では、どんなことをされているんですか?
例えば、警護対象者が建物に入ることひとつ挙げても、対象者の知名度を考慮して、正面から入れて良いのか、裏口から入れるか、などを判断します。このために、実地踏査と呼ばれる事前の下見調査も行います。
予想以上に人が集まってしまって、建物から出れなくなってしまう場合もあります。それから、来日のお迎えでファンが空港に集まりすぎてしまって、人がターミナルに入りきれない、とか。そういうケースでは、どうすべきか各方面と瞬時に調整を取ります。アーティストにも、お迎えに来たファンの方にも、みなさまに気持ちよくご納得していただける方法を常に見出すよう努めています。
警護対象者とは不快感を与えない適切な距離感でコミュニケーションを取ることを心がけるようにしています。任務の最後に対象者から「ありがとう」と言ってもらえるのは、やはりこの仕事をしていて一番嬉しいですね。
──牧村さんにとって、警護の心得とはなんですか?
いくつか信条があります。まず1つ目は、「警護対象者を愛すること」。命をかけて対象者を守らなくてはいけない。いざと言う時、嫌いな人の盾にはなれないじゃないですか。愛する気持ち、すなわち家族への愛のような気持ちがあれば、自分を犠牲にできる。いざ何かあった時に躊躇せずに守れるように、警護対象者を愛して下さい、ということですね。
2つ目は「全てのことに精通すること」。ボディガードをやりたい方って、往々にしてアーミー系の趣味を持たれていたりとか、守る技術、護身術が好きな方が多い。それだけではダメなんです。例えば、飛行機のチケットをスムーズに取れるとか、新幹線の乗車変更をスムーズにできるとか、VIPが好みそうなレストランを知っていて予約が取れる、とか。野球が好きな企業の社長さんに「昨日、巨人勝った?」といったことを聞かれることもありますから、警護対象者の趣味嗜好も勉強しておく必要があります。
3つ目は「怪我をしないこと」。守る側が怪我をしていたら、守る壁が薄くなってしまい、最悪の場合、命にも関わる。自分のためではなく、警護対象者のために怪我をしないということです。
最後は、「警戒は臆病に 、回避行動は大胆に」。小さな異変でも警戒を怠ってはいけません。ビビリな方って、例えば夜道で人影がチラついたら、警戒しますよね。でも、自分の腕っぷしに自信がある強い人は、相手が目の前に来てもビビらない。勝てると思っているからですね。
警護の現場は、その後ろには警護対象者がいるわけですから、どんなリスクも目の前に来させるわけには行きません。ですから、もしチラッとでもリスクが見えたら、臆病に警戒して、「こちらから行きましょう」と大きく遠回りして大胆に危機を回避するということです。
──警護の現場に入ると、リスクを察知するレーダーのような感覚が作動するんですね。
そうですね、リスクは常に探しています。「あそこの導線、潰れそうだな」と思ったら、無線を飛ばして他の警備員に当たらせるとか、頭の中でパズルみたいに。でも警備員の数は限られているので、リスクを天秤にかけなければいけない。あっちに警備を置いたら、こっちが空いてしまう。どうするか。このポイントを通過したら、あっちの警備員をこっちに移動させて……、といったことを、頭の中でシミュレーションするんです。