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【特集】バッキー・バーンズの帰還 ― 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ウィンター・ソルジャーとキャプテン・アメリカの「これまで」

スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカについて語る上で、この男の存在を抜きにすることはできない。映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)で彼の相棒として活躍し、その後もスティーブにとってはかけがえのない親友であり続けるバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャーだ。

さまざまな紆余曲折を経て、ウィンター・ソルジャーは映画アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーでサノスとの対決に臨む。波乱万丈といっていいバッキーの半生はどんなものだったのか、そして現在の彼はどんな状況に置かれているのか? ついに新たな立場でマーベル・シネマティック・ユニバースに関わり直すこととなった“ヒーロー”ウィンター・ソルジャーについて、本記事では振り返っていくことにしよう。

注意この記事には、映画『キャプテン・アメリカ』シリーズ、および『ブラックパンサー』のネタバレが含まれています。

1940年代から、現代の目覚めまで

スティーブ・ロジャースとバッキー・バーンズの関係は、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』まで遡らなければならない。1940年代、超人血清を打たれて屈強な戦士になるよりも以前からスティーブとバッキーは親友だった。痩せこけた身体のスティーブは軍隊に入ることすら認められず、喧嘩に負けるところをバッキーに助けられていたのだ。スティーブがキャプテン・アメリカとして活躍するようになってからも、バッキーはその傍らにいた。しかしヒドラの基地を壊滅させる途中、バッキーは谷底に落ちてしまう……。

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)では、現代を生きるキャプテン・アメリカの前に、死んだはずのバッキーが姿を現す。ヒドラに捕らえられていた彼は洗脳によって記憶を失い、暗殺者ウィンター・ソルジャーとなっていたのだ。ヒドラの息がかかったS.H.I.E.L.D.のもとで動いていた彼は、追われる身となったスティーブと死闘を繰り広げる。しかし戦いの末、窮地に追い込まれたスティーブを、記憶がないはずのバッキーは助け出したのだった。
その後『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で、国連テロ事件の容疑者として無実の罪を負ったバッキーはトニー・スターク/アイアンマンとティ・チャラ/ブラックパンサーに追われる。スティーブの努力もあって無実は証明されたが、かつて洗脳されたバッキーがトニーの両親を殺害していたことが判明。トニーとスティーブの絆にはひびが入り、また再び洗脳状態になることを予期したバッキーは、ワカンダの地で冷凍睡眠に入ったのである。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』より ©Marvel Studios 写真:ゼータ イメージ
前日譚コミック“Marvel’s Avengers: Infinity War Prelude”には、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のラストでトニーの元を去ったキャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーの「その後」が描かれている。起きてしまった事態の深刻さを受け止め、「すべて俺のせいだ」と謝罪しようとするバッキーに、スティーブは「言うな、最後までとことん付き合うって何度も言っただろう」と告げ、バッキーと同じく自分を助けてくれた仲間たちのため、ラフト刑務所を襲撃するのだ。

このコミックには、ワカンダの技術ならばバッキーを治療できるとティ・チャラが二人に薦めるくだりや、それを受けて、ティ・チャラの妹であるワカンダの天才科学者シュリが実際に治療を試みる場面が描かれている。シュリはバッキーに高度な生体スキャンを行い、脳の分析を行うことで、バッキーの記憶をすべて消去してしまうのではなく、暗殺者としての側面を呼び覚ます言葉の影響のみを排除しようとするのだ(シュリは「再起動(reboot)」と呼んでいる)。

『ブラックパンサー』、そして『インフィニティ・ウォー』

『ブラックパンサー』のポストクレジットシーンで、観客は久々にバッキー・バーンズという男の姿を見ることとなった。同作プロデューサーのネイト・ムーア氏は、ワカンダで三度目覚めた彼についてこう述べているのである。

彼は『ウィンター・ソルジャー』の頃とは違って、人間に戻ったような気分を感じている。ただのバッキーでいられるんです。大切なことは、キャラクターがこう感じることでした。“バーンズ軍曹じゃない、僕はバッキーだ。もう兵士じゃなくて一人の人間なんだ”って。」

もはやウィンター・ソルジャーではないバッキーは、このシーンで「ホワイトウルフ」と呼ばれている。
コミックに登場するホワイトウルフは、ティ・チャラの誕生以前、ワカンダに墜落した飛行機に乗っていた家族の“唯一の生き残り”。先王ティ・チャカの養子として育てられて、秘密警察のリーダーとして「ホワイトウルフ」を名乗るが、ティ・チャラが国王になったのち組織は解散。ホワイトウルフは傭兵となり、時にティ・チャラの求めに応じるというキャラクターだ。ちなみにバッキー役のセバスチャン・スタンは、従来とは大きく異なる展開がここで入ってきたことに驚かされたと語っている

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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