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【ネタバレあり】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』レビュー ─ マーベル映画の集大成

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
© Marvel Studios 2018

「どうすればいいのかわからない…。」

2018年4月27日、おぼつかない足取りで続々と劇場を出る観客らの姿があった。その中の一人が具体的なキャラクター名を挙げて話そうとすると、近くにいた別の観客が耳をふさいだ。「ワーワーワー!言わないで言わないで!」

マーベル・スタジオ最新作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』日本公開初日。全国の映画館内には、今まさに鑑賞を終えた観客、これからついに鑑賞する観客が騒然と入り乱れていた──。

注意

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の具体的なネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。
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アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

https://youtu.be/ET87HGsLEOk

(これより、具体的なネタバレを含みます。)

戦争だ!

様子が違う。そう気付くのには、映画冒頭の『MARVEL』ロゴ映像だけで充分だった。いつもなら聴こえてくるはずの雄大なテーマ・ソングでなく、不気味な空虚の響きが劇場を支配した。それは、この『インフィニティ・ウォー』がヒーローたちを葬る結末を示唆していた。

それでも、ソー、ロキ、ハルクの『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)お笑い組が必死の健闘を見せているうちは、まだ覚悟が足りていなかった。もう後戻りができぬ所に足を踏み入れてしまったのだと観客が身体を震わすのは、愛すべき悪戯の神の最期を見せつけられてからだった。直前までいつもの調子で笑わせてくれたトリックスター、ロキは、まるで捕まえられた虫のように脚をバタつかせていた。

2011年の映画『マイティ・ソー』で登場し、翌年の『アベンジャーズ』ではメイン・ヴィランともなった。「彼も完全には気づいていないけれども、ロキは自分自身を認めていないし、自分のことを嫌っている。心からリラックスできていないんですよね。いつも僕は“ロキ、落ち着いて”、“ピザでも食べに行こう”って言いたいし、全部を話してほしいし、彼の言うことをじっと聞いてあげたい。」演じるトム・ヒドルストンは、ロキについてこう話していた「(ロキが求めているのは)自分自身の心だと思います。」MCU史上最も愛されるヴィランは、自分自身の心の声に従って不意打ちを試みたが、その技もサノスの前では無力に等しかった。

「本音を言うとね、”もうお終いだ!世界が終わる!これで永遠におしまいなんだ!”と言わせておいて…、終わりませんでした、っていう映画にはもう飽き飽きなんですよ。」トニー・スターク/アイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.は、2018年3月8日付のEntertainment Weeklyにてこう語っていた「でも今作はそうじゃない(笑)。洒落になってない。首が飛ぶようなシナリオなんです。」

『インフィニティ・ウォー』は絶望と共に幕を開ける。これは戦争なのだ。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
© Marvel Studios 2018

サノスを感じよ

ガモーラやソーの家族を巡る不幸話にピーター・クイルが挑むなら、サノスも負けていない。原作コミックでサノスは、衛星タイタンの地下都市エターナルズで生まれる。この都市の種族はいわば超人類でみな理想的な容姿であるはずが、突然変異によって生まれたサノスのみが紫の肌の怪物のような姿で誕生する。「みにくいアヒルの子」状態で育ったサノスは、”なぜ自分は他の者と違う?”という答えを得るため、少年期から様々な生物で解剖実験を繰り返した。それは、不承認感と知識欲が歪に絡み合った呪いだった。この恐るべきマッド・タイタンは、産みの母の腹も切り開いて殺してしまうのである。(『サノス・ライジング』小学館集英社プロダクション)

MCU版のサノスが、原作コミックの設定をどこまで引き継いでいるかはわからない。宇宙の生命の半分を消滅せんとするサノスの野望は、映画では人口増加によるリソース不足を解消するためという大局的見地によるものだったが、コミックでは主にデスという名の死の女神を振り向かせるための求愛活動。サノスはインフィニティ・ガントレットの力で銀河生命の死を自在に操る器量を見せデスを振り向かせるべく必死だが、一向に報われることはない。

ヴィランとしての造形も複雑だ。ジョー・ルッソ監督は「あらゆるヴィランのストーリーにおいて、彼らはヒーローなんです。彼ら自身の見方でいえばみんな正しい。ヴィランが複雑であるほど、ヒーローも複雑になり、結果としてストーリーが面白くなるんです」と説く。サノスは涙を流すほどの人情を備えている。ガモーラの前ではわざわざ玉座に座ることなく、段差に腰掛けた。過去作にわずかに登場していたこれまでの印象からは信じられないが、この男からは”生活感”すら感じられるのだ。アーマーを外し、ノースリーブ姿でガモーラに事情を説く姿は、『ゴッドファーザー』マーロン・ブランド演じるドン・コルレオーネが屋敷内で家族と過ごす姿も彷彿とさせる。

ヒーロー見参

ヒーローは、ピンチの時に駆けつける。ヴィジョンとワンダの元に現れたキャプテン・アメリカ、ファルコン、ブラック・ウィドウ、ワカンダの窮地に駆け付けたソー、ロケット、グルート。MCUの素晴らしい点は、キャラクターの素顔を丹念に描くことで物語に共感性を生むことだったが、『インフィニティ・ウォー』では、散り散りになった面々が集結していく過程で、ヒーロー作品における原始的な興奮と感動を描きなおした。

ハイライトとなるのは雷神ソーの帰還だ。惑星サカールでの激闘を経て、ひとまわりもふたまわりも逞しくなって戻ったソーの雷撃が敵襲を一網打尽にやっつける。彼が来たならばもう安心、この高揚感を忘れていた。『インフィニティ・ウォー』にあるのは絶望だけではない。MCUは人間ドラマも素晴らしい。しかし何よりも、これはスーパーヒーロー映画なのだ。

「サノスを連れてこい!」『アベンジャーズ』のテーマが鳴り響く。

ブラザー・イン・アームズ

新たなヒーローたちの共演も見事だ。特に賑やかなのがガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々で、初登場の景色と音楽だけで存在感を発し始める。このシーンの選曲は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』映画二作監督のジェームズ・ガンが手がけている

ルッソ監督の「『インフィニティ・ウォー』では、お馴染みのユニークな個性がたくさんぶつかり合う。だからユーモアを持って描きたいと思いました」という宣言通り、今作は笑いも次々に巻き起こるトーンとなった。(そして、こうしたユーモアが観客にとっては本当に救いだった。)監督によれば、「撮影現場では俳優にたくさんアドリブをやってもらいました」という。「最初の1~2テイクは脚本に忠実にやってもらって、それから脚本から離れてもらい、その状態で5~6テイク撮ることもありました。」

MCUは一歩先を行く。”夢の共演”というフォーマットが定番のものとなったことは、至るところで「◯◯版アベンジャーズ」と表されていることが証左だ。『インフィニティ・ウォー』が実現したのは、“夢の再会”である。ブルースとナターシャ、スティーブとバッキー、キャップとソー。「髪を切ったね」「髭を伸ばしたな」──それぞれの紆余曲折を経て再会するキャラクターたちが、わずかなアイコンタクトだけで空白の時間を埋め、すぐに戦を共にする。”夢の再会”ならではのドラマがある。

しかし、最大のカタルシスはまだ訪れていない。トニー・スタークとスティーブ・ロジャース、この二人がまだ再会していないのである。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
(C)2016 Marvel

ポスト・トラウマティック

『インフィニティ・ウォー』は、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980)以来、初にして最大の「完全なる敗北」で区切られる映画だ。ヒーローたちの多くは灰に消え、ひと仕事を終えたサノスが安堵の表情を浮かべる。銀河の半数を消し去って何をしたいのか、ガモーラにそう尋ねられたサノスは「休む」と答えた。旧約聖書では、6日間かけて天地創造の大仕事を遂行した神が満足し、7日目を安息日として休んでいる。ロキは「お前は神になれない」と言い遺したが、『インフィニティ・ウォー』のサノスはほとんど死神だった。なお、コミックでサノスが着想を得たのはギリシャ神話に登場するタナトスで、死そのものを神格化した神とされる。

ポスト・クレジット・シーンでは、サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー)が自身の出演作で繰り返し発することでお馴染みの「マザーファッカー」を言いかけて消し去られた。90年代のポケベルのような通信デバイスで救難信号を送っていた相手は、2019年3月に米で映画公開を控える『キャプテン・マーベル』だ。こちらは1990年代が舞台で、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は「キャロル・ダンバース/キャプテン・マーベルを、ニック・フューリーが初めて出会ったヒーローとして紹介したい」と明かしている。キャプテン・マーベルは桁外れのスーパーパワーや飛行能力を備えた女性ヒーローで、いわば「マーベル版スーパーマン」というイメージが近い。打倒サノスに向け強力な一手となるに違いないだろう。

ほか、『インフィニティ・ウォー』のゆるやかな原案となったコミック『インフィニティ・ガントレット』(小学館集英社プロダクション)では、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)ポスト・クレジット・シーンで示唆されたアダム・ウォーロックがヒーロー陣営で中心的な活躍を見せる。しかしジェームズ・ガン監督はアダムについて「未来のマーベル・コズミック・ユニバースの一部。とても重要な役割です」と語っていたことから、『アベンジャーズ』第四作目への登場はやや考えにくいだろうか。また同コミックでは、『インフィニティ・ウォー』でも生き残ったネビュラが重要な役割を担っていることから、彼女の動向に引き続き注視したい。

文字通り束になっても敵わないサノス(しかも、インフィニティ・ストーンを全て揃えてしまった!)を倒す鍵となるのは、やはりトニー・スタークではないだろうか。「こうするしかなかった。」──1,400万通り以上の未来を見通し、わずか1つの勝利の道を知るドクター・ストレンジがタイム・ストーンを手放してまで守りたかったのがトニーだった。トニーの知恵と勇気こそが、世界を救うための”アーク・リアクター”となるはずだ。

劇場。入場口前には、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の巨大パネルと共に、記念撮影用のインフィニティ・ガントレットが設置されていた。終演直後、左手に装着して撮影を行う観客の表情は、劇中でマインド・ストーンを引き抜かれ機能停止したヴィジョンさながらに生気を失っていた。「どうすればいいのかわからない…。」その戸惑いと絶望は、みな同じのようだ。

戦いはまだ続く。脚本のクリストファー・マルクスは、『アベンジャーズ』第4作(2019年4月26日(金)米国公開予定)が今作以上のスケールで描かれると宣言している。サノスは帰ってくる…。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト:http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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