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【大特集】マーベルはディズニー化する?MCUまもなく10周年、これまでの経緯から「次の10年」を大予想!

ウォルト・ディズニー・カンパニーの会長兼CEO(最高経営責任者)、ロバート・A・アイガー氏が、ゴールドマン・サックスの投資家カンファレンスで自社計画を語った。アイガー氏は『スター・ウォーズ』シリーズの今後について話したほか、マーベル映画の今後についてもコメントしたのである。

2008年から始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」は来年(2017年)で10周年を迎える。これまでMCUはどう展開してきたのか、そしてこれからどうなっていくのか……。マーベル&ディズニーが計画している「次の10年」を予想してみたい。

マーベル・シネマティック・ユニバースの「次の10年」

カンファレンスでアイガー氏がMCUに触れた時間はとても短かった。『スター・ウォーズ』のミーティングをルーカス・フィルムと行った、と話した直後にアイガー氏はこう述べている。

「マーベルとも1週間半前に同様のミーティングを行いました。まもなく完成する作品も含め、この10年間で製作・展開した映画について話しましたし、次の10年で何をするかなどについても話し合い始めています」

MCUが10周年を迎える2017年には3本の映画が公開される。そのうち『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2』は撮影が終了しており、『スパイダーマン ホームカミング』『ソー/ラグナロク』は現在撮影中だ。

さらにマーベルは、2018年に『ブラックパンサー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アントマン&ワスプ』、2019年に『キャプテン・マーベル』『アンタイトルド・アベンジャーズ(仮題)』を公開する。タイトル不明の作品が2019年にもう1本、2020年に2本公開されることも決定済みだ。

つまり「次の10年」のうち、2018年から2020年の3年間は決まっているのである。問題は2021年から2027年だが……ちょっと気が遠くなりそうなので、先にこれまでの作品と今後のラインナップを整理していこう。

https://theriver.jp/marvel-lineup/

2008~2019、12年間を整理する

マーベル・シネマティック・ユニバースはいくつかの「フェイズ」に分かれており、2016年の現在は「フェイズ3」を迎えている。ここでは各フェイズを振り返っていくが、まず大まかにいって、これまでのMCUは「紹介・定着・拡大」で展開してきた。ここにはマーベル&ディズニーの非常に緻密な計画がうかがえる。

[フェイズ1]

アイアンマンにキャプテン・アメリカ、ソーやハルク。いまやおなじみのメンバーを『アベンジャーズ』でスクリーンに集結させるまでに、マーベルはじつに5年の月日を要している。すなわち過去10年のうち5年がキャラクターの紹介に費やされた、いわば「紹介編」なのだ。作品数はわずか6本、単純計算で年1.2本ペースでしか製作されていないことになる。

[フェイズ2]

  • 『アイアンマン3』(2013年)
  • 『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年)
  • 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)
  • 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)
  • 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)
  • 『アントマン』(2015年)

3年間に6作品、年2本ペースで作品が公開されたフェーズ2は「定着編」だ。『アイアンマン』シリーズが完結し、『キャプテン・アメリカ』『マイティ・ソー』の第2作が製作され、アベンジャーズも再集結した。大ヒットした『アベンジャーズ』のメンバーを短期間に活躍させて“おなじみの顔ぶれ”として定着させる意図があったはずだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アントマン』という新規シリーズを投入し、「マーベルはアベンジャーズだけじゃない」という意志を示すことも忘れていない。

[フェイズ3]

  • 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)
  • 『ドクター・ストレンジ』(2016年)
  • 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 2』(2017年予定)
  • 『スパイダーマン ホームカミング』(2017年予定)
  • 『ソー/ラグナロク』(2017年予定)
  • 『ブラックパンサー』(2018年予定)
  • 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年予定)
  • 『アントマン&ワスプ』(2018年予定)
  • 『キャプテン・マーベル』(2019年予定)
  • 『アンタイトルド・アベンジャーズ(仮題)』(2019年予定)

フェーズ3は4年間で10本、年に2.5本のペースで作品が製作される予定だ。もはやおなじみのキャラと新規キャラが入り乱れる「拡大編」である。フェイズ1から続く『キャプテン・アメリカ』『マイティ・ソー』や、フェイズ2で始まった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アントマン』の新作のほか、新規シリーズも4本スタートする。

すでにマーベルは、『アンタイトルド・アベンジャーズ』でMCUに区切りをつけると明言した。しかしその言葉とは裏腹に、MCUは未だに「拡大」を続けている。各作品のストーリーは繋がり、また『スパイダーマン ホームカミング』にトニー・スタークが登場するなど人気キャラクターは新規シリーズにも現れるのだ。

マーベルはディズニーを目指す

なぜMCUは「拡大」を続けるのか? 狙いはおそらく、「マーベル・シネマティック・ユニバース」そのもののブランド化だろう。

もともとMCUは、アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ソーといった個別の「キャラクター押し」でスタートしている。それがフェーズ2、フェーズ3になると、ストーリーを少しずつ繋げることで複雑化したのだ。おまけにキャラが作品を越境すれば、いよいよ複雑化も極まったりという感じになる。

しかし「拡大編」であるフェーズ3は、もはや単なる複雑化ではない。観客の興味を、個別のキャラクターから“MCUという物語”や複数のキャラクターへと「拡大」する試みなのである。

キャラクターからストーリーへの転換

そもそも『アベンジャーズ』の大ヒットにはリスクがあった。映画に登場するヒーローが、アベンジャーズ・メンバーという「人気キャラ」「それ以外」に分かれてしまう可能性だ。そのうえ現実的に、ロバート・ダウニー・Jr.やクリス・エヴァンスが永遠にヒーローを演じることはできない。ダウニー・Jr.のアイアンマン、エヴァンスのキャプテン・アメリカといった現在の人気キャラはいつかMCUから退場するだろう。そこで代わりの人気キャラを生み出すだけでは、同じことの繰り返しになってしまう。

したがってマーベルには、MCUを個別のキャラクターだけに頼らない構造に作りかえる必要があった。そこで観客の興味を、人気キャラから“MCUという物語”新しいキャラにまで広げようとしているのだろう。たとえばキャプテン・アメリカのファンにアントマンの存在を知らしめる。アイアンマンのファンに『スパイダーマン ホームカミング』を観るきっかけを作る。そもそも分裂したアベンジャーズは、果たしてこの先どうなってしまうのか……。

現在のMCUは、“長い物語”の中にさまざまなジャンルの映画が次々と投入される作品群だ。このスタイルが多くの観客に受け入れられれば、いつしかMCUは「ヒーロー映画」という枠組みをも超えたブランドになる。『アンタイトルド・アベンジャーズ』で“長い物語”が終わるとすれば、その後には長い時間をかけて熟成された映画版マーベル・ヒーロー「マーベル」という名前だけが残るのではないだろうか。

その状況こそ、いまやマーベル・スタジオの親会社であるディズニーによく似ている。ディズニーには作品を超えたストーリーこそないが、大勢のキャラクターと「ディズニー」というブランドがある。定期的に新たなキャラとストーリーが生まれ、人気が出ればシリーズ化されて、時には過去の作品がリブートされるのだ。すなわちMCUはディズニーを目指しているのではないか? もっとも、ディズニーが自社モデルをマーベルにも応用しようとしている、というのが正確かもしれないが……。

2020~、フェーズ4を予想する

話が長くなりすぎてしまった。ここで最初の話題、「今後10年間のMCUがどうなるか」に戻ることにしよう。スケジュールが不明なのは2021年以降だが、フェーズ4自体は2020年よりスタートする予定だ。

・フェーズ4の期間は?作品の発表ペースは?

これまでの傾向から考えれば、2020年から2027年がまるごとフェーズ4になることは考えづらい。おそらくフェーズ4は長くても2025年頃までではないだろうか。また発表ペースは、作品のクオリティを鑑みると確実にスピードダウンするはずだ。さらに新キャラの紹介・定着が必要になる場合、そのペースはフェーズ1と同等になるかもしれない。

・作品のラインナップは?

フェーズ4は、フェーズ3でスタートする『ドクター・ストレンジ』『スパイダーマン』『ブラックパンサー』『キャプテン・マーベル』が中心になるだろう。『アンタイトルド・アベンジャーズ』で“長い物語”に区切りがつくとすれば、アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ソーといったフェーズ1からのメンバーが登場するかどうかは未知数だ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『アントマン』がフェーズ3で完結するとは思えないが、こちらはまだ予想できない。

・ストーリーは?

MCUが本当にディズニー化(マーベルという名前とキャラクターの存在が強いブランド化)した場合、もはや作品を超えた“長い物語”は必要ではない。マーベル・ブランドのもとで、クオリティの高い作品を着実に発表することこそが求められるからだ。しかし新キャラたちで次なるアベンジャーズを構築しようという場合は、それ相応のストーリーが必要になるだろう。

MCUは「2周目」を迎える?

ここから浮かび上がってくるのは、MCUがフェーズ4から2周目を迎える可能性だ。フェーズ3でこれまでの物語に区切りがつき、既存のキャラが整理され、そして新たなキャラが登場する場合、ふたたび状況はフェーズ1の「紹介編」に戻ることになるだろう。

しかしフェーズ1とフェーズ4で明らかに異なるのは、2020年にはマーベルのブランドが定着しているだろうということだ。先述の「ディズニー化」が現実になるかどうかは分からないが、マーベルはそこからまた新たな可能性をふくらませるに違いない。ストーリーもキャラクターも複雑化しきった現在とも違う、もっと自由な「マーベル・シネマティック・ユニバース」が、フェーズ4からきっと始まるはずだ。

source: http://comicbook.com/2016/09/22/disney-chief-says-they-are-beginning-to-talk-about-next-decade-o/

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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