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『ザ・バットマン』ファルコーネ役、『ゴッドファーザー』の世界を再構築 ─ ジョン・タトゥーロ単独インタビュー

ザ・バットマン
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が待望の日本公開を迎えた。誰もが知るDCコミックスのヒーロー、バットマン2年目の格闘を描く本作だが、ヒーローもの、探偵ミステリーもの、そしてマフィアものとしての魅力も持つ異色作だ。

そのマフィアものとしての凄みを与えているのは、カーマイン・ファルコーネ役のジョン・タトゥーロ。本作では『ゴッドファーザー』直系、腐敗蔓延るゴッサム・シティを影から動かすマフィアの大ボスを演じている。

劇中で見られた、あの有無をも言わせぬ圧倒的な風格は一体どこから来るのか?THE RIVERではタトゥーロに単独インタビューで話を聞いた。本作のキャストや監督・プロデューサーの合計10名に行った連続インタビュー企画、最終回だ。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』カーマイン・ファルコーネ役ジョン・タトゥーロ 単独インタビュー

──カーマイン・ファルコーネを演じるにあたり、過去のバットマン映画やテレビドラマ、コミックブックなどはどれくらい研究されましたか?

どちらかと言えば、「イヤーワン」や「イヤーツー」といったフランク・ミラーのコミックを参考にしました※1。フィルム・ノワールや『ゴッドファーザー』の世界を再構築するということを目指していたので、私も(この役を)そういったものとして見るように努めました。どうすればこの役が面白くなるかということや、自分自身が楽しくなるかといったことを考えながら、見た目ももっと派手にしようと思った。(監督たちに)自分の好みの外見はこんな風ですと伝えた上で、サム・ジアンカーナ※2のようなサングラスを見つけて。年代物のクリスチャン・ディオールだったかな。どのタイプのサングラスだったかは忘れたけれど、すごく良いサングラスでね。まるで仮面のようで、そうやって派手にしていけば、面白くなるなと。

※1「イヤーツー」のライターはマイク・W・バー。
※2アメリカの有名なマフィア。サングラス姿で知られる。

監督のマット(リーブス)は有言実行の男で、協調性も高く、一緒に仕事していて楽しいですね。ロバート(・パティンソン)やゾーイ(・クラヴィッツ)と仕事をするのも楽しかった。どちらかというと、ノワール映画を撮っている感覚でした。私はそのジャンルの映画が大好きなんです。日本でもフランスでもアメリカでも、戦後はたくさんのノワール映画が作られましたよね。そこに出てくるような悪役はしばらく演じていなかったから、今回はまた変わったことができそうだなと思いました。

ザ・バットマン
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

(バットマンの)他の映画も観ていますけれど、自分のキャラクターがどう出ていたかは覚えていない。だからそのまま忘れておいて、自分だけのことをやろうと思いました。でも「イヤーワン」や「イヤーツー」といったコミックからは、インスピレーションやヒントをもらいました。私は時々絵を描くんです。絵を描くことだけに没頭できるのが良くて。うちの長男のアメデオも絵を描くんですが、彼はDCコミックでエディターをやっているんですよ。なので私の周りには長年、様々なコミックがありました。絵を描くのが好きなのは、イマジネーションが広がるからです。

DCコミックスは小さい頃から読んでいました。「バットマン」のオリジナルのドラマも観ていました。第一子のアメデオが産まれて、彼がバットマンの大ファンになったから、私も改めてDCを認識しましたね。よくバットマンやキャットウーマンのフィギュアで遊んだもんですが、今も持っていますよ。ちょっとしたデザインにも力強さがありますよね。あれはハマりますよ。特に子どもはね。

──あなたのファルコーネには『ゴッドファーザー』からの影響があるということですね。バットマン映画にマフィア映画の要素を取り入れる、という考え方ですか?

言わば、ファルコーネがゴッサムを動かしているようなものです。現代の金持ちが政党を動かし、気候変動問題の運動を動かし、石油問題を動かしている。政党の政策を裏側から操っているんです。巨大な街とは、いつだってそういう連中がいるものです。違法なこともやるし、合法的にもやってのける。彼らが街に損害を与えるんですよ。橋を建設したり、なんとかしたりでね。

それで、ファルコーネこそ“裏で動かしている人物”です。コミックでも描かれていた通りですが、権力を裏で操っているんですよ。そういうところが面白いと思いました。そんなにあからさまにやる必要もなくて。親父が建築関係の仕事をしていたから、子供の頃に親父がそういう人たちを相手にしているのを見ていました。そういう人たちはいつも親切で礼儀正しいんだけれど、どこか人を不安にさせるような雰囲気があるんですよね。

 ザ・バットマン
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

──あなたはニューヨーク出身で、ロバート・デ・ニーロとも親交が深いそうです。マフィアの役を演じるにあたって、彼に何か……。

いやいや(笑)。

──そうですよね(笑)。さて、『ザ・バットマン』にはたくさんのヴィランが登場します。

それがこの映画のダークなところです。本作は「一回限り」といった部分があって、バットマンがまだ確立されていない、変遷期の若者として描かれている。そこには心情の変化があって、父の死に迫っていき、復讐に燃えている。自分の考える正義をどこまで貫けるのか、一線を越えてしまうのか、というね。そういう要素が面白いと思ったんです。ディティールがあって、シェークスピアとは言わないけれど、複雑なところがあってね。

──人間ドラマですね。

そうです。そういうところが気に入っています。

──そういうところが、これまでのバットマン映画との違いなのですね。

いやいや、比較するつもりはないんです。他の映画も素晴らしいですから。今作ではまた新しいことをやろうとしているんじゃないかな。素晴らしいですよ。セットも素晴らしいですし。セットだけでも独自の魅力があると思います。

──本作は徹底した秘密主義で製作されていたと思います。大変だったことはありますか?

そんなことはなかったです。大金が注ぎ込まれた映画ですし、脚本の中には言ってはいけないこともありますからね。でも、慣れるものですよ。最近では、脚本が流出してしまうことが懸念されていますね。サプライズのために用意していたものが、サプライズじゃなくなっちゃうから。ですから秘密主義については理解しています。

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DC映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2022年3月11日(金)に全国公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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