なぜ『ザ・バットマン』はオリジンを描かないのか?なぜバットモービルはマッスルカー調なのか?マット・リーヴス監督単独インタビュー

全く新しいバットマンが始動する。『ダークナイト』トリロジー以来となるバットマン単独映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が、2022年3月11日(金)に公開される。
ロバート・パティンソンを主演に据え、新たなバットマンを生み出したのは、『クローバーフィールド』『猿の惑星』といったシリーズで知られるマット・リーヴスだ。これまで時代ごとに製作されてきたバットマン映画、リーヴス監督が描いたその最新形態とは、バットマン原点回帰とも言える「探偵」「ノワール」要素の強調だ。
監督は、なぜ、そしていかにして、これまでにないバットマン像を組み上げたのか?THE RIVERは、マット・リーヴス監督と一対一の単独インタビューでその真意を尋ねた。『ザ・バットマン』10連続インタビューの第3弾。ロバート・パティンソン、ポール・ダノへのインタビューと合わせてお楽しみいただきたい。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』マット・リーヴス監督 単独インタビュー
──監督は、予告編やニュースを観たファンの反応はご覧になっているのでしょうか?
はい。(この仕事における)お楽しみの一つですよ。DCファンドームのイベントでは、YouTubeでのファンのリアクション動画を、家族と一緒に何時間も観ちゃいました。あのティザー映像以前にそういうリアクション動画を観たことがあったかどうかは覚えていないけれど、観てみたら止まらなくて。「映像を観ている人を観る」っていうのに初めてハマっちゃった(笑)。だから、最新の予告編映像が出た時ももちろん見ましたよ。すごく満たされました。みなさんバットマンが大好きですが、私も大好きなので、みんなの反応が見られて楽しいですよ。
──本作の撮影は、コロナ禍の最中に行われました。撮影の中断や延期に何度も見舞われましたが、実際はいかがだったのでしょうか。大変だったのではないかと思います。
いえ、私たちは恵まれていました。撮影を続けることができたわけですから……。大変な時期ですね。まさかこんなことになるとは……。実は、我々のクルーの1人が、その……、亡くなっているんですね。彼は方言コーチだったのですが、亡くなってしまったのです(※本作の方言コーチを務めたアンドリュー・ジャック氏は新型コロナウイルスによって2020年3月に亡くなった)。
──それは……。お悔やみ申し上げます。
本当に辛かったです。恐ろしくもありました。でも、誰もが恐れていて、それは承知しています。私たちの経験が、皆さんと違って特別だということはありません。
何が不思議だったかというと、撮影が3ヶ月止まってしまったことがあって、確か2ヶ月撮影してきた後だったのですが、本当にこの作品の撮影を終えられるのかが分からなくなった。一晩で世界が全く変わってしまったんです。ロックダウンというものが始まって、みんなは自宅に戻ったのですが、私は妻や息子がロンドンに移動してきていたので、もし一旦帰ってまた戻って撮影を仕上げるとなると、落ち着くのにまた苦労するから、ロンドンで待機していようということになったんです。それでロンドンはシャットダウンされてしまったのですが、まるでダニー・ボイルの映画『28日後…』(2002)みたいになっちゃって。通りを歩く人は誰もいなくて、すごくシュールでしたよ。まるで映画みたいな光景で。
そういうわけで、数ヶ月は停止状態だったんですが、何とかならないのかということで、医者に助言を求めながら安全性を保って続行することになったんです。こうして幸いなことに、安全な撮影ができたんです。すごく奇妙でしたよ。俳優以外は全員マスクをしていて、しょっちゅう検査をやって。あの時はまだワクチンがなかったので、すごく怖かったですね。
ただ、ある意味では、それでみんなの絆が深まりました。他にはないような経験を共にして、みんなで乗り越えましたからね。正直言いますと、集中できる仕事があったということが、パンデミックを乗り切るには良かったと思うんです。まるで我々に課せられたミッションのようでした。映画を愛していますからね。
──本作では、なぜブルース・ウェインがバットマンになったかというオリジン・ストーリーは描かれないと聞いていますが、意図的に避けたのでしょうか?