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『ザ・バットマン』にトゥーフェイス出る説とは何だったのか ─ ピーター・サースガードが真相語る【単独インタビュー】

『THE BATMAN-ザ・バットマンー』
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

最狂の知能犯リドラーを中心に、ゴッサム・シティ闇社会の支配者カーマイン・ファルコーネやペンギンも登場、さらにキャットウーマンまで出没するという『ザ・バットマン』だが、早い段階で噂になっていたキャラクターは他にもいた。トゥーフェイス/ハービー・デントだ。

トゥーフェイスといえば、相手を殺すかどうかの判断をコイントスで決めるような、何事も「二面性」にこだわるヴィラン。もともとはゴッサム・シティの優秀な検事だったが、顔半分が焼けただれる事故に遭ったことで正気を失って犯罪者になってしまう。『バットマン フォーエヴァー』(1995)ではトミー・リー・ジョーンズが、『ダークナイト』(2008)ではアーロン・エッカートが演じたことでお馴染みだ。

『ザ・バットマン』にもトゥーフェイスが登場するのではないかという噂があったことをご存知だろうか。俳優のピーター・サースガードの本作出演が決定した時、地方検事を演じるという情報があったためだ。さらに、ピーターの妻であるマギー・ジレンホールが、頭半分だけを刈ったピーターの写真をSNSに投稿したことで妙な真実味も生じた。マギーといえば『ダークナイト』でハービーに想いを寄せたレイチェル役を演じていたという縁もあり、何もかも理にかなっているように思われたのだ。

しかし、ピーターが演じる役名は「ギル・コリソン」であり、ハービーとは何の関係もないらしいことが後に判明。一体、あの噂は、あの思わせぶりな写真はなんだったのか?THE RIVERではピーターとの単独インタビューで直接聞いてみた。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』ギル・コリソン役 ピーター・サースガード 単独インタビュー

──あなたの演じるギル・コリソンは、新しいキャラクターですね。現時点ではあまり情報がないのですが、キャラクターについて少しご紹介いただけますか?

僕が演じているのは検察官で、犯罪者たちを起訴しています。腐敗している世界ですので、彼は二つの生活を生きています。愛する妻との家族との生活と、腐敗と向き合う仕事の生活です。

──二つの生活、とありましたが、この映画におけるハービー・デント/トゥーフェイスということでしょうか?

いえいえ、ハービー・デントとは別のキャラクター。でも、ハービー・デント役を演じると思われていた時期があって、面白かったです。

──そうなんですよ!奥様のマギーが、あなたが頭を半分刈った写真をInstagramに投稿していたから、絶対トゥーフェイスだって思いましたもん。

覚えてますよ。妻が「なんかやってみる?(『ザ・バットマン』の)撮影だから頭を刈ろうか?」って。そんな感じです。みんなが僕の役をあれこれ推測していて、楽しかったですね。

──奥様のマギーは『ダークナイト』でレイチェル役を演じられましたね。奥様から何かアドバイスはもらいましたか?

いいえ。でも、よく一緒にいました。赤ちゃんが生まれたばかりだったので、彼女の仕事中は僕が世話を見てね。僕はこれまで『グリーンランタン』のような大作映画にも出たことがあったわけですが、妻のバットマン映画での経験や、僕の『グリーンランタン』での経験が、本作での準備に役立つとは思いませんでした。なぜなら、今作は他のスーパーヒーロー映画とは全く違う世界観だからです。マギーの出演作も素晴らしかったですが、作られ方が全く違う。

今作は、言うならばザラザラしていて、1980年代のニューヨークのようです。もちろん実際にはニューヨークではないんですけれど。(当時のニューヨークで)地下鉄がスプレーでめちゃくちゃに落書きされていて、僕も乗りながらそういうのを見ていた覚えがあります。クリーンではないけれど、どこか温かくて、見覚えのある街です。

『ザ・バットマン』は、そのセットがとにかく素晴らしい。大きな教会のセットがあるんですけど、そこに入っていくと天井も美しくて。ちょっとした手すりの細かいところまでも、かなり作り込まれているんです。

──あなたのキャラクターは腐敗した世界に生きているとのことですが、ゴッサム市警のジェームズ・ゴードンとはどのような関係ですか?

えーっと、あんまりないです(笑)。政治腐敗したゴッサムという同じ世界にいるのですが、街を牛耳っているのは誰なのか、支配者は誰なのかは謎です。この街は腐敗によって動かされているので、もし腐敗がなくなったら、街には何もなくなって止まってしまう。

──他のキャストたちと違って、コミックに由来しないキャラクターを演じられているわけですが、準備はどのように行いましたか?

マット(・リーヴス監督)との対話ですね。準備として、何本か映画をオススメしてもらいました。『チャイナタウン』(1974)や『タクシー・ドライバー』(1976)のような1970年代の映画に、フィルム・ノワールですね。探偵刑事フィクションがどう始まっていったかを考えていきました。バットマンもいろいろな意味で探偵ですから。本作は『イヤーワン』『イヤーツー』といったコミックに基づいていて、マットもコミックに立ち返って脚本を書かれていますが、僕はそういうコミックを読み直すアプローチではなかった。演じている時も、(コミックのような)素材よりも自分の想像を頼りにしました。

──製作は秘密主義で進められたと思います。大変だったことはありますか?

いつも秘密主義ですよ。事情もわかりますし。世の中にはネタバレをしたがる人もいますので、そういったところからはネタバレを守る必要がある。(秘密主義は)いろいろな映画で感じますよ。僕はレビューも読まないようにしているし、友達から映画について話されるのも避けるようにしている。

最近、ホアキン・フェニックス主演のマイク・ミルズ監督作『カモン カモン』を観たのですが、それも前情報無しで観た。妻が『ロスト・ドーター』という映画をやっていて、ヴェネツィア国際映画祭やテルユライド映画祭で一緒に出品されていたので、ふらっと寄って観たんです。こういう観方ができれば、映画を台無しにすることなくワクワクできると思う。『ザ・バットマン』を楽しみにしている人たちに対しても、ネタバレをしてはいけないという大きな責任を感じています。

──本作の製作ではコロナ禍による撮影中断などが多くあったと思います。実直に言って、大変でしたか?

2020年の1月〜2月に撮影を始めて、11月に再開して、役のためにまた頭を刈って撮影に戻りました。この役では髪を刈っていたので、その後の作品の撮影ではウィッグをかぶりましたね。難しかったのは、他の仕事との調整です。もちろん撮影自体も大変でしたけれど、進んだり中断したりするのはそこまで悪くない。ただ、スケジュール調整がね。パンデミック最初の年、僕は4作品動いていたので、どう調整すべきかは難しかった。隔離時間は孤独でしたよ(笑)。

ザ・バットマン
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

DC映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2022年3月11日(金)に全国公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。