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『スター・ウォーズ』新作、なぜ「ゲーム・オブ・スローンズ」脚本家は降板したのか ─ ジェダイの起源を描く予定も、「有毒ファン」のバッシング危惧か

デイヴィッド・ベニオフ&D・B・ワイス
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/28472987182/ Remixed by THE RIVER

「有毒ファンダム」のバッシングを危惧

スター・ウォーズ』からベニオフ&ワイスが降板したことについては、もうひとつの原因が伝えられている。それは、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)以降、特にSNSで問題視されている「有毒ファンダム(toxic fandom)」の問題だ。『最後のジェダイ』はその内容ゆえに激しい賛否両論を呼び、脚本・監督のライアン・ジョンソンには激しいバッシングや嫌がらせが行われ、殺害の脅迫もあったことが明かされている。また、ローズ・ティコ役のケリー・マリー・トランには、性別や人種に基づくヘイト発言が日常的に繰り返されていた。こうした出来事が取り上げられる中、プリクエル3部作でジャー・ジャー・ビンクスを演じたアーメッド・ベストは、かつてバッシングを苦に自殺を考えていたことを告白している

有害ファンダムの問題は、いまや『スター・ウォーズ』だけでなく、『キャプテン・マーベル』(2019)でブリー・ラーソンへの嫌がらせが行われるなど、オンラインで可視化されやすい状況にある。そしてベニオフ&ワイスの場合、「ゲーム・オブ・スローンズ」で、その経験を味わったばかり。2人は最終シーズンの展開をめぐって過激なファンからバッシングを受け、「脚本家はとんでもない無能」「最終シーズンを作り直せ」と要求する署名運動すら始まっていたのだ。これには出演者からも「無礼」「幼稚」との苦言が呈されていた

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The Hollywood Reporterによると、こうした経緯を受けて、ベニオフ&ワイスは『スター・ウォーズ』の参加を考え直すようになったと伝えられている。言葉は悪いけれども、俳優を追い込み、監督を攻撃対象にするファンが決して少なくないのである。情報源の人物は、『最後のジェダイ』のケースを引き合いに出し、「誰があんなことを経験したいんですか? これは“人生は短いんだし”というタイプの話ですよ」と証言したという。

ケネディ社長によるマネジメントか、Netflixとのスケジュール競合か、それとも有害ファンダムか。ベニオフ&ワイスの離脱は友好的に告知されたが、そこには解決しがたい問題がいくつも横たわっているようだ。現在、ディズニー/ルーカスフィルムは『スカイウォーカーの夜明け』後の新作映画について計画を立てられていない状態で、すでに新たなフィルムメーカーの検討に入っているという。

『スター・ウォーズ』シリーズでは、現在、『最後のジェダイ』ライアン・ジョンソン監督による新3部作と、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長がプロデュースする新作映画(タイトル未定)が企画されている。ただしジョンソン監督の新3部作は初期段階であり、ファイギ社長の新作も、ベニオフ&ワイス作品の予定されていた2022年に繰り上げられる可能性は低いという。それもそのはず、ファイギ社長はマーベル・シネマティック・ユニバースの「フェイズ4」開幕を間近に控える身。Disney+での新作ドラマも多数抱えている中で、急遽『スター・ウォーズ』に出向くほどの余裕はないということだろう。

Sources: THR, Variety

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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