【解説】『ワンダーウーマン3』中止報道受けパティ・ジェンキンス監督が声明、「事実と異なる」と否定も

『ワンダーウーマン』パティ・ジェンキンス監督 声明文解説
全7パラグラフからなるやや長文となったが、留意するべきポイントは少数に絞ることができる。まず、報道の否定や訂正は前3段落のみであり、後4段落は関係者やファンへの感謝が主になっていることだ。ただ後述するように、このタイミングでジェンキンスが感謝の気持ちを厚く記していることには、それなりの意味があるかもしれない。
まず2段落目では、『ローグ・スコードロン』の企画が今どうなっているのかを説明している。もともと『ローグ・スコードロン』は2023年12月の米公開を予定していたが、先述の通りジェンキンスの稼働が埋まったため製作に入れず、一旦棚上げとなっていた。2022年9月のディズニーのイベント「D23」では、新作ラインナップ予定から『ローグ・スコードロン』の名が除外されていたのだが、あくまでもスケジュールが未定となっただけで、厳密にはお蔵入りとなったわけではなかった。
ジェンキンスの本声明は、これを裏付けるものになっている。『ローグ・スコードロン』は単純にジェンキンスの「順番待ち」状態になっているだけであり、今も生きている企画であるということだ。ただし諸々の予定が狂ったことによって、ジェンキンスも「実現できるかはわからない」としている。ルーカスフィルムはこの頃、発表されていた企画をひっそりと終了させることもあったので、この企画の大部分はルーカスフィルム側の裁量次第だろう。
『ワンダーウーマン3』中止報道への直接的なアンサーは3段落目を見れば良い。ジェンキンスは「私は降板していない(I never walked away)」と主張している。しかしながら、これは含みのある表現であり、「降板しておらず、今も企画に留まっている」ということなのか、あるいは「私が自ら責任を投げて降板したのではなく、降板させられた/せざるを得なかったのだ」とするものなのかはわかりにくい。
ジェンキンスは、DCは変革の最中にあるとし、クリエイティブ上の決断が難しいことに理解を示している。どこか吹っ切れたような論調になるのはこのあとからだ。ジェンキンスは、まるで『ワンダーウーマン』シリーズを卒業し、後代のクリエイターにキャラクターやシリーズを引き継がせるかのように、各方面への感謝を述べるようになっている。シリーズの今後についてを「私がいる・いないに関わらず」とする文面を見る限り、やはり製作に残留することは一応可能であるものの、本人にはあまりその意思がなさそうだと想像できる。
4段落目以降を読み進めれば、ジェンキンスはガル・ガドットのワンダーウーマンについて自身の将来的なビジョンや野心の多くを失っており、これまで支えてくれた関係者やファンに謝辞を述べ、自らの役目をここで終えようとしている気配が感じられるだろう。
これを受けたジェームズ・ガンは「私とピーター(・サフラン、共同CEO)とあなたとのやりとりは全て、快適でプロフェッショナルなものでした」とコメント。これはジェンキンスがあたかも取り乱したかのような印象を与える一部報道を否定するものであり、ジェンキンスの継続的な起用を何ら保証するものではない。
既に伝えられているように、「DCスタジオ」新CEOのジェームズ・ガンとピーター・サフランは、まだDCユニバース10ヶ年計画を立案している最中だ。既存の『ワンダーウーマン』シリーズ第3作がどうなるのかは分からず、ガル・ガドットが続投できるのか、そもそもこの状況で続投の意思があるのかは不明。少なくとも、ジェンキンスのこの声明を読んで、監督がスタジオの新方針を受け入れて続投すると考えることは難しいのではないか。
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