Menu
(0)

Search

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ここが凄かった ─ 圧巻の水中体験、推しはスパイダーとクオリッチ

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ジェームズ・キャメロン監督による、人類史上最大規模の映画シリーズ最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が劇場公開中だ。その盛り上がりに合わせ、2025年12月29日には、フジテレビ系にてシリーズ前作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が地上波初放送となる(19:00〜22:52)。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、画期的な3D映画として映画史を塗り替えた第1作『アバター』(2009)から13年ぶりに公開されたシリーズ第2作だ。映像技術は大幅にアップデート。物語もまた、より深く、より感情的な広がりを獲得した。

公開当時は、その圧倒的な映像美と没入体験を求め、IMAXや4DXといったプレミアムラージフォーマットが好評を博した。最終的に日本国内では興行収入43億円超、動員236万人以上を記録。全世界興行収入は23億ドルを突破し、シリーズの勢いが衰えていないことを強く印象づけた。

Avatar TheWayOfWater
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
デジタル配信中(購入/レンタル)
4K UHD コレクターズ・エディション(数量限定)発売中
© 2024 20th Century Studios.
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン

常識を超えた水中没入体験

本作の映像体験は、やはり劇場で3D鑑賞してこそ真価を発揮する。舞台を海へと移した『ウェイ・オブ・ウォーター』では、CGI最大の難題とされてきた「水」の表現をついに克服した。透明でありながら反射し、屈折し、常に形を変え続ける水は、空気中を前提とした従来のレンダリング技術と相性が悪く、リアルさを追求すればするほど破綻が生じやすい存在だった。

キャメロンはこの問題に、まったく新しいアプローチで挑んだ。実際の水中で俳優の演技を記録するパフォーマンス・キャプチャーと、水を物理法則に基づいて計算する最新の流体シミュレーション技術を融合。水面、水中、光、気泡、水流がすべて連動することで、観客は映像を「観る」のではなく、水に包まれた世界へと“入り込む”感覚。劇場での水中シーンでは、キャラクターと共に無意識のうちに息を止めたくなるような擬似水中体験が可能となった。

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
(C) 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

この水中パフォーマンス・キャプチャーの実現には、出演陣の肉体的な挑戦も欠かせなかった。巨大プールでの長時間撮影に備え、キャストたちは本格的な「息止め」トレーニングに取り組んでいる。

撮影当時70歳にしてナヴィ族の少女キリを演じたシガニー・ウィーバーは、1年以上にもわたって米軍ダイバーと共にフリーダイビングに励み続けた結果、なんと6分以上の素潜りに成功。これは超人トム・クルーズ並の記録である。

ほか、ネイティリ役のゾーイ・サルダナも5分間、ロナル役のケイト・ウィンスレットに至っては最長7分14秒もの息止めに成功。出演陣は皆、プロアスリート並みの厳しい訓練を経て撮影に挑んだ。

「ケイトは準備の鬼なんです」とサルダナは賞賛する。「役作りのためにフリーダイビングを必死で習得していました。ケイトの役は水中で育ったという設定なので、森に生息するナヴィ族とは身体的に異なるのです。だから彼女は水中でも極めて落ち着いていなくてはならず、自然に見えるというわけです」。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

推しキャラはスパイダーとクオリッチ

物語の中心となるのは、元海兵隊員ジェイク・サリー(サム・ワーシントン)と、その家族だ。ナヴィの肉体を得たジェイクは、妻ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)や子どもたちとともに、神秘の星パンドラで平穏な日々を送っていた。しかし地球人の侵略が再び始まり、彼らは森を捨て、海の一族のもとへと身を潜めることになる。迫り来る脅威の中で、家族の絆が試されていく。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
© 2023 20th Century Studios.

ストーリー面でぜひ注目して見ていただきたいのは、ナヴィ族と暮らす中で唯一の人間キャラクターであるスパイダーと、その父であるクオリッチだ。スパイダーはナヴィ族とともに育った人間の少年で、ジェイクとネイティリの養子として暮らしている。人懐っこくて明るい性格で、ナヴィ族での暮らしにもすっかり溶け込んでいる。一方で、人間を深く憎むネイティリは、彼の存在を完全には受け入れきれていない。

かつて人間としてパンドラを侵略した海兵隊大佐クオリッチは、本作でナヴィ族の肉体を持つ“リコンビナント”として復活する。ナヴィ族を敵視しながらも、自らはナヴィとして環境に順応していくという、極めてねじれた存在だ。実の息子であるスパイダーへの執着は、どこかダース・ベイダーとルーク・スカイウォーカーを思わせる複雑な親子ドラマを生み出している。

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 

監督のジェームズ・キャメロンは、シリーズを通じたクオリッチの変化が見どころだと語っている。「『アバター』は作品ごとに新たなヴィランが登場するスーパーヒーローものではないんです。でしょう?シリーズ全体を通して1人の敵対者がいる。で、そこに新たな敵役が登場していったとき、彼がどう進化していくのかが非常に面白いわけです。敵が増えて、味方が増えて、というね」。

最新作『ファイヤー・アンド・アッシュ』では、クオリッチとスパイダー、そしてジェイクたちの関係性がさらに揺さぶられる。単なる敵味方の構図を超え、より複雑で濃密なドラマへと発展していく点が大きな見どころだ。

デル・トロも絶賛、まだまだ進化する革新的シリーズ

映像面もドラマ面も格段にパワーアップした『ウェイ・オブ・ウォーター』。公開当時、ギレルモ・デル・トロ監督は次のように絶賛していた。

「驚くべき達成。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』には、堂々たる風景とエモーションが、本当に壮大なスケールであふれている。達人(キャメロン監督)の最高到達点です。」

『ウェイ・オブ・ウォーター』時、「これはあくまで第1章。より大きな物語が繋がってきます」と語っていたキャメロン監督。「今作含め続編を作ることを踏まえて新しいツール、ソフト、技術を作ってきました。パンドラがどんな世界なのか、海、砂漠、山、北極のような景色もすべて準備をして取り組んでいます」。第3作『ファイヤー・アンド・アッシュ』では、難しい水に加えて「火」の表現まで大々的に登場。さらにはナヴィ族の中からヴィランとなる種族も登場し、物語はより壮大となった。

2031年公開予定の『アバター5』まで続く壮大な計画。その現在地を確かめる意味でも、このタイミングで『ウェイ・オブ・ウォーター』を改めて観直す価値は大きい。まだシリーズを劇場で観たことがないという方は、ぜひ公開中の『ファイヤー・アンド・アッシュ』3D鑑賞をオススメしたい。

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ちなみにジェームズ・キャメロン監督は2023年10月に『ウェイ・オブ・ウォーター』のため来日した後、東京からツアー最終地となるロサンゼルスに向かう機内で新型コロナウイルスに感染。残念ながら、オーラスのLAプレミアを欠席することとなった。

しかし2025年の『ファイヤー・アンド・アッシュ』でも再来日。日本での体験やファンの存在を嬉しく思ってくれているようだ。

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly