『ビッグ・フィッシュ』父エドワードのモデルは原作者自身の父だった ─ 脚本家も父との別れを経験、物語に込められた実体験

ティム・バートン監督による名作ファンタジー『ビッグ・フィッシュ』(2003)。奇想天外なホラ話を語り続ける父エドワード・ブルームには、実在のモデルがいた。原作者ダニエル・ウォレスの父親だ。さらに、映画版の脚本を手がけたジョン・オーガストも、父親を亡くした自身の経験を物語に反映させていた。(2026年10月23日(金)〜10月29日(木)の1週間限定で、ヒューマントラストシネマ渋谷にてリバイバル上映)
『ビッグ・フィッシュ』は、壮大な冒険譚を語る父エドワードと、その話を信じられず、父の本当の姿を知ろうとする息子ウィルの物語。誰からも愛される魅力的な父親だが、最も身近な存在であるはずの息子は、父が何を考えているのか理解できずにいる。
原作者ウォレスは、2004年に行われた文芸サイトStrange Horizonsのインタビューで、自身の父親との関係が『ビッグ・フィッシュ』の創作につながったことを認めている。
ウォレスによれば、実際の父親は「多くの点で『ビッグ・フィッシュ』の父親に似ていた」という。「魅力的な人でしたが、その魅力を使って他人を遠ざけていたのです」。人を惹きつける社交性を持ちながらも、他人が自分の内面に踏み込むことは許さない。そんな父親の姿が、エドワードの人物像に重なっている。
ウォレスは、映画化に向けてオーガストと1998年に行った対談でも、実父の性格について語っている。父親は問題に直面することで奮い立つ人物であり、何も問題がなければ自ら問題を作り出すことさえあったという。その行動の原動力となっていたのは、不安や心配だった。
興味深いことに、ウォレスが当初執筆していた原稿は、完成した小説よりもずっと暗い内容だったという。「父親に対する怒りや苦々しさ、恨みがありました」と振り返るウォレス。編集者から、もう少し肯定的な作品にするよう求められ、暗い要素を抑えたのだという。
一方、映画版の脚本を手がけたオーガストにとっても、『ビッグ・フィッシュ』は個人的な意味を持つ作品だった。2013年、ブロードウェイ・ミュージカル版の開幕に際して、米Playbillの取材でこう振り返っている。
「原稿を読んだとき、私は数年前に父を亡くしていました。だから、それがどういうことなのかはわかっていたんです。でも、自分自身の経験をそのまま書きたいわけではありませんでした。これは、自伝的な作品にすることなく、自分がよく知っていることを描ける機会だったんです」。
オーガストは映画化にあたり、息子ウィルの年齢を当時の自分と同じ28歳に、父エドワードの年齢を自身の父親と同じに設定した。自分自身をウィルに重ねることで、父と息子の関係を描こうとしたのだ。
ただし、オーガスト自身の父親はエドワードのような人物ではなかったという。米映画芸術科学アカデミーのインタビューでは、「父はエドワード・ブルームとはまったく似ていませんでした。でも、映画のウィルが抱くのと同じ疑問を、私も父に対して抱いていたんです」と説明。「父の行動を予測することはできても、その頭の中で何が起きているのか、根本的には理解できませんでした。私たちは、お互いをよく知っている他人のようなものでした」と語っている。
さらに2020年、自身のポッドキャスト番組「Scriptnotes」では、映画の父子の別れについて、より踏み込んだ思いを明かしている。
「父は私が大学生の頃に亡くなりました。父と交わすことのできなかった会話が、『ビッグ・フィッシュ』に大きな影響を与えています。映画の臨終の場面は、まさに私が父と交わしたかった会話なんです」。
ウォレスが自身の父親との複雑な関係から生み出した物語に、オーガストが父を失った経験を重ねた『ビッグ・フィッシュ』。ウォレスの原作と映画版では物語の語り方や結末の描写に違いがあるが、父親のことを本当には理解できない息子が、それでも父の人生を受け止めようとするという核心は共通している。
ちなみにオーガストによれば、ウォレス自身も、父親が亡くなった後、その友人たちから話を聞くことで、生前以上に父親のことを知るようになったという。父の知らなかった一面を、他人の語る物語を通して知っていく。『ビッグ・フィッシュ』が描く父と息子の関係には、そんな現実の経験も息づいていたのだ。
『ビッグ・フィッシュ』は、2026年10月23日(金)〜29日(木)の1週間限定で、ヒューマントラストシネマ渋谷にてリバイバル上映される。THE RIVERの独自企画「REVIVAL by THE RIVER」第3弾。
上映概要

企画名:REVIVAL by THE RIVER vol.3
上映作品:『ビッグ・フィッシュ』(2003)
上映期間:2026年10月23日(金)〜10月29日(木)
全日 18:10より上映
上映劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)
チケット発売:
オンライン販売
10月16日(金) 18:00~ 会員先行販売 / 21:00~ 一般販売
窓口販売
10月17日(土) 朝オープン時~
※オンライン販売で残席があった場合のみ
チケット料金:1,600円(各種割引サービスはご利用いただけません)
上映時間は後日劇場ホームページをご確認ください。
▼ 『ビッグ・フィッシュ』の記事
Source:Strange Horizons, John August, Playbill, Academy of Motion Picture Arts and Sciences, Scriptnotes
























