『トップガン マーヴェリック』よくばりセット ─ おもしろ裏話コンプリートまとめ

トム・クルーズ主演の傑作スカイ・アクション『トップガン』(1986)36年ぶりの続編として登場し、全世界約15億ドルの超ヒットを記録し、洋画離れが叫ばれる日本でも137.1億円の興行収入を叩き出した『トップガン マーヴェリック』(2022)には、知れば知るほど面白い裏話がいくつもある。
この記事では、地上波初放送となる『トップガン マーヴェリック』よくばりセットとして、映画がマッハ10で面白くなるトリビアを全40ネタまとめた。
コロナ禍で公開延期を繰り返すも、トム・クルーズがストリーミング配信を絶対拒否
『トップガン マーヴェリック』は撮影後にコロナ禍を迎えたため、公開にあたっては幾度も調整が加えられた。公開予定日は、2019年7月12日→2020年6月26日→24日→12月23日→2021年7月2日→11月19日→2022年5月27日と変更を繰り返した。
当時はコロナ禍で劇場公開が難しい代わりにストリーミング配信を活用する方法が主流となりつつあったが、「僕は大スクリーンのために映画を作ります」とこだわるトム・クルーズはこれを絶対拒否。劇場公開の方針を貫いた。結果として劇場で大ヒットを記録し、映画はほとんど瀕死状態だったハリウッドの救世主となった。
スティーブン・スピルバーグはトム・クルーズに会うと彼を抱きしめ、「君がハリウッドを救った。劇場配給を救ったんだ。本気だよ。『トップガン マーヴェリック』が映画業界を丸ごと救った」と伝えている。
空撮、「太陽の位置や山のどの部分にいる時にどのセリフを言うかまで覚えた」

周知のように『トップガン マーヴェリック』では、戦闘機のコックピットにカメラを積載し、キャストたちは実際に高速飛行する機体の中でG(重力負荷)に耐えながら演技を行なっている。キャストたちは猛スピードで飛行しながら、「太陽の位置やルート、山のどの部分にいる時に、どのセリフをいつ言うのかまで」記憶して撮影に挑むという凄技をこなした。
ハングマン役グレン・パウエル、アイスマン役ヴァル・キルマーにいじられる

本作におけるハングマンは、前作のアイスマン的な立ち位置となったと言えるだろう。ハングマン役のグレン・パウエルが撮影滞在先のホテルをチェックアウトしようとエレベーターで荷物を運んでいたところ、なんとアイスマン役キルマーと偶然一緒になった。その時パウエルは、筋トレ用のウエイトとプロテイン、そしてテキーラを運んでおり、キルマー先輩は「『トップガン』そのものだな!僕の『トップガン』でもそうだった」と面白がってイジり、写真を撮ったということだ。
ハングマン役グレン・パウエル、トム・クルーズにドッキリかまされる
ハングマン役のグレン・パウエルはトム・クルーズにヘリコプターで送り届けられる際にドッキリをかまされている。本作の追加撮影が行われていたある日、トムはパウエルを乗せて、イギリスのパインウッド・スタジオからロンドンまでヘリを操縦していた。するとトムは突然「ヤバいヤバい!」と焦りながら、上空でヘリを落下させ始めたという。「俺は、ロンドンのど真ん中でトムと煙に巻かれて死ぬ無名の男になるのか?」と、パウエルは本気で焦ったということだ。
トム・クルーズ再演の鍵となったのはグースの息子、ルースター

製作陣がトム・クルーズ再演へ向けた話し合いの上で欠かせないキャラクターだったと振り返るのが、マーヴェリックの親友にして戦闘機上の相棒でもあった亡きグースの息子ルースター。演じるのは『セッション』マイルズ・テラーである。
ルースターは1作目でも、マーヴェリックやグースらが『火の玉ロック』を伴奏しながら歌うシーンでも登場している。「観客の皆さんが、僕が演じているのがあの小さな少年だということに気づいたら、感動してしまうでしょう」とテラー。ジョセフ・コシンスキー監督は、ルースターとマーヴェリックの物語こそが「感情的に引き込むことができて、トムがまたキャラクターを演じることにワクワクしてくれるようなると思ったストーリーラインでした」と話している。
ハングマン役グレン・パウエルはルースター役に落選してヘコんでいたがトム・クルーズに激アツアドバイスをもらって出演
ルースターのライバルであるハングマン役でブレイクしたグレン・パウエルだが、当初はルースター役を希望してオーディションを受けていた。出演する気満々でノリノリだったパウエルだが、電話で落選を知らされると、ショックを受けながらも「寝室に貼ってあったトム・クルーズのポスターを全部剥がす」とXにイジけて投稿。それから悲しくなってきて、一人バルコニーに座っていたという。
その1時間後に、狙っていたルースター役がマイルズ・テラーに決定したというニュースが出始め、ますます悲しくなってしまったパウエル。しかし、その後にトム・クルーズから直々に電話があり、別のアイデアを発案されてハングマン役にたどり着いた。
ハングマンには憎まれ役のような部分もあるキャラクターで、当初パウエルはあまり納得していなかった。「ドラコ・マルフォイにはなりたくない」と躊躇していたパウエルに対し、トム・クルーズから「この映画の出演者は全員が自分の能力を疑っている。その中で、君だけが自分を疑っていないんだ。だから、君が一つでも言い訳をしたら、この映画は成立しなくなる。思いっきり、クソ野郎になれ!」とアツすぎるアドバイスをもらい、心動かされて出演を決意したという。
他にもパウエルには、デンゼル・ワシントンも助言を行なってる。『グレート・ディベーター 栄光の教室』(2007)でパウエルと共演したワシントンは、早い段階から『トップガン マーヴェリック』が大成功することを確信しており、出演に迷うパウエルに対して「本当にやったほうがいいと思うぞ」と推していたのだそう。
バーの選曲はエドガー・ライトが行った

パイロットたちが行きつけにするバーのシーンでは、実は『ベイビー・ドライバー』(2017)『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)で知られる音楽通のエドガー・ライト監督が選曲を行なっている。製作陣から曲のアイデアを求められると、大急ぎでプレイリストを作って送ったのだそうだ。彼のアイデアによって、本編ではフォグハットの『スロー・ライド』が起用されている。
撮影素材は800時間分、編集者も夢でうなされる
本編で使用されている映像は、厳しい編集過程で厳選された究極のカットばかり。なんと撮影では全800時間分の映像素材を撮り溜めていたという。編集者にとっては膨大量であり、数ヶ月は眠れない状況が続いた。ようやく眠れたと思ったら、「ハングマンとフェニックスとルースターとマーヴェリックのアップが夢に出てくる」日々だったという。
トム・クルーズ来日、自腹で横浜に打ち上げ花火

トム・クルーズは本作のプロモーションのため、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーとともに2022年5月に来日。横浜港大さん橋・国際客船ターミナルで実施されたジャパンプレミアでは、陽が暮れるまで徹底的にファンサービスを周りまくる“神対応”ぶりを見せた後、サプライズで打ち上げ花火をプレゼント。トムが自腹で寄贈したものだという。
そのまま横浜から都内のTOHO シネマズ日比谷に移動したトムはプレミア試写会の舞台挨拶に登場。その後は会場を去る段取りだったが、本人の希望によって劇場に残って観客と一緒に鑑賞する流れに。この日訪れていた日本のファンは、トム・クルーズ本人と一緒に『トップガン マーヴェリック』をプレミア鑑賞するという一生ものの思い出を手にすることとなった。
ビーチアメフトシーン、撮影直前までパンプアップ
『トップガン』でのビーチバレーにオマージュを捧げ、本作ではパイロットたちがビーチで汗を輝かせながらアメフトするシーンが登場。若手キャストたちが鍛えた肉体を見せつけるシーンとなったが、このために彼らはカレンダーに丸を付けて備え、前日の夜遅くまでジムで鍛えまくり、カメラが回る直前まで筋肉をパンプアップさせて撮影に挑んでいたという(上の動画でも確認できる)。「あのシーンを撮るまでのプレッシャーは、ほかのどの映画よりも大きかったです」とはハングマン役グレン・パウエルの談。ちなみに撮影時、誰よりも張り切っていたのはトム・クルーズだったという。
なおこのシーンでは、1作目のビーチバレーシーンで聞こえる「ウォーウ!」という雄叫び音声がサンプリングされているという細かい小ネタもある。
マーヴェリックのジャケットと腕時計は1作目と同じもの

トム・クルーズが演じたマーヴェリックが本作で着用しているジャケットと腕時計は、1作目と全く同じものであり、レプリカではない。腕時計はプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーがずっと保管していたのだという。ちなみに、事前プロモ素材ではジャケット背面パッチから日本と台湾の国旗が消えていたが、これは本国宣伝側がなんらかの政治的事情に配慮して差し替えたものと推測される(本編では元に戻っている)。
1作目の恋人シャーロットが登場しない理由
本作でマーヴェリックは、養成学校の近くでバーを営むペニー・ベンジャミン(ジェニファー・コネリー)と恋愛関係にあった。1作目では養成学校の教官シャーロット(ケリー・マクギリス)と恋に落ちていたが、彼女はこの続編に全く登場しない。
物語上の都合として、コシンスキー監督は次のように説明している。「私たちが時間を費やしたのは、(シャーロットとの関係を語るような)そういう物語ではありません。全てのストーリーラインを過去に向けることは望んでいませんでした。新しいキャラクターを登場させることも重要だったんです」。
シャーロット役のケリー・マクギリスにもオファーはなかった模様。「私は年を取って、太りもしました。年齢相応の見た目です」とコメントしている。
グースの妻メグ・ライアンが登場しない理由
シャーロットと同様に、1作目で親友グースの妻キャロルを演じたメグ・ライアンも本作には登場しない。彼女にもオファーは行われておらず、その理由についてブラッカイマーは「ストーリーが変わったため、彼女のキャラクターの出番がなかったからです」「私は、若いパイロットたちに焦点を当てていましたから」と説明している。
ヘルメットにコールサインを描くのは『トップガン』由来

『トップガン』ではパイロットたちがヘルメットにコールサインを描いているが、これは元々米海軍にあった風習ではなく、『トップガン』ブームによって逆輸入されたもの。ちなみに1作目でコールサインをヘルメットにペイントしたのは、トニー・スコット監督の発案だったそう。