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『バットマン vs スーパーマン』DC映画ユニバースの「これまで」と「これから」 ─ ユニバース激変、『ジョーカー』の位置づけから新バットマンの登場まで

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
© 2016 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & © DC Comics

映画バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016)は、ワーナー・ブラザース/DCコミックスによる、通称「DC映画ユニバース」の第2作だ。スーパーマンの単独映画である『マン・オブ・スティール』(2013)から始まったDC映画ユニバースは、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを世に送り出した『スーサイド・スクワッド』(2016)、大ヒットを記録した『ワンダーウーマン』(2017)へと連なっていく。

しかしながら現在のDC映画ユニバースは、『バットマン vs スーパーマン』が公開された当時の状況とは大きく変わってしまった。マーベル・シネマティック・ユニバースが「すべて繋がっている」と理解すればいいのに対して、こちらはやや事情が複雑だ。DCコミックス原作映画の最新作『ジョーカー』の位置づけや、今後の展開も含めて、ここで一度おさらいしておこう。

ジャスティス・リーグ

DC映画ユニバースに激動が訪れたのは、『バットマン vs スーパーマン』からストーリーが直結しているDC映画ユニバースの第5作『ジャスティス・リーグ』(2017)だった。『マン・オブ・スティール』から『ジャスティス・リーグ』まで、DC映画ユニバースのキーパーソンとして作品に関わっていたのは、『300 〈スリーハンドレッド〉』(2007)『ウォッチメン』(2009)でコミックの映画化を実現させたザック・スナイダー監督。当初のユニバースは、スナイダー監督のビジョンによって強力に牽引されていたのである。『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン』という2本の監督作は、特にその傾向が著しい。

そして、スーパーマンとバットマン、ワンダーウーマン、フラッシュアクアマン、サイボーグというDCヒーローが揃うクロスオーバー作品として登場したのが『ジャスティス・リーグ』だ。当初、スナイダー監督は本作を2部作で構想していたものの、スケジュールの都合により、2作目は無期延期となり、単独作品として製作がスタートした。ところが2017年5月、スナイダー監督は、愛娘の死去を受けて同作を途中降板。後任者に迎えられたのは『アベンジャーズ』(2012)『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)のジョス・ウェドンだったが、ここからの雲行きが怪しかった。脚本家としてクレジットされたウェドンは、スナイダー監督の意志を継いで作品を仕上げるとされたものの、実際には脚本の大部分を執筆し直し、出来上がった作品の尺はスナイダーの構想よりも大幅に短くなっていたのである。これはワーナー幹部の判断だったとされるが、結果的に膨大な再撮影で製作費は膨れ上がってしまい、残念ながら興行収入はスタジオの期待にも届かなかった。

ザック・スナイダー
ザック・スナイダー Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/28487603362/

一連の経緯を受けて、『ジャスティス・リーグ』の公開直後にあたる2017年12月、ワーナーはDC映画ユニバースの指揮陣営の全面的な再編を決定、スナイダー監督の新作を発表する予定はないことを明らかにした。『バットマン vs スーパーマン』後にユニバースに参加し、『ワンダーウーマン』『アクアマン』の製作で辣腕を振るったとされるコミック界の巨匠ジェフ・ジョンズは映画製作の前線を離れ、プロデューサーのジョン・バーグは更迭された。後任者には『死霊館』シリーズや『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)などのウォルター・ハマダが就任し、DC映画ユニバースは全面的な再検討に入ったのである。

それにしても、この時期には奇妙な報道や話題が相次いでいた。『ジャスティス・リーグ』からスナイダー監督が離脱していたのは愛娘が逝去する前だったという報道が流れたほか、スナイダー自身は『ジャスティス・リーグ』の完成版を一度も観ていなかったのである。DCファンの間では、スナイダーが構想したままの『ジャスティス・リーグ』(通称「スナイダー・カット」)を公開するよう求める声が絶えないが、2019年10月現在、スナイダー・カットは発表されていない(アクアマン役のジェイソン・モモアによって実在することは認められている)。

ザック・スナイダーによる、幻の『ジャスティス・リーグ』3部作構想

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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