最新作『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』が2017年7月1日に公開される『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは、まぎれもなく全世界の観客に愛される大ヒット・シリーズだ。壮大な世界観、軽妙なストーリー、痛快なアクション、ジャック・スパロウを演じるジョニー・デップの怪演……。あまたの魅力で多くのファンを生んだ第1作『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』（2003年）を手がけたのは、コメディ、ラブストーリー、ホラーなど幅広い作品で実績を重ねたゴア・ヴァービンスキー監督だ。

『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』までの3作品を監督したヴァービンスキーは、2003年の第1作公開当時、どのような思いを抱いていたのだろうか？ その複雑な胸中、そして製作のウラ話を、シリーズ第5作『最後の海賊』公開直前の今だからこそ振り返ってみよう。

自由すぎるジョニー・デップを支えた2人の人物

2003年7月、BBCのインタビューに登場したヴァービンスキー監督は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』が大ヒットを収められるのか、その複雑な心境を素直に語っていた。なぜなら、その直前までに製作された“海賊映画”の多くはヒットに届かなかったのだ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』も、当時はさほどヒットするとは思われていなかったのである。

「どうして映画がヒットするのかなんて分かりません。素晴らしい映画が大失敗することもあれば、ひどい映画がヒットすることもありますからね。でも、結局は演技とストーリーにかかっていると思うんです。僕は素晴らしいキャストと脚本家に恵まれてラッキーですよ」

『パイレーツ・オブ・カリビアン』でジョニー・デップが見せる演技は、公開当時から大きな話題を呼んでいた。その怪演ぶりは、当時のディズニーCEOであるマイケル・アイズナー氏を「ジョニーが作品を汚している」と激怒させたほどだという。しかし、のちにデップ自身が「クビになると思っていた」と振り返ったジャック・スパロウ役の演技は、まさしく監督がデップに望んだものだった。

「ジョニー・デップをキャスティングした時から、ああいった演技をやってもらうつもりでした。キーラ（・ナイトレイ）とオーランド（・ブルーム）が2人でラブストーリーをきちんと担ってくれたのは幸運だったと思います。そうでなければ、ジョニーに演技を少し控えてもらわないといけませんでした。2人が映画の一部を引き受けてくれたから、彼は主役の責任から自由になれたんですよ。ジョニーは自分自身のやり方で役を深めていました。ジャックの振る舞いや癖は、すべてジョニーが作り出したものです」

ちなみに『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』は、ヴァービンスキー監督が初めて大規模な海上撮影に挑んだ作品だ。その映像には膨大なVFX処理を要したが、監督は「僕はただ撮り続けるだけでした」とその様子を語っている。

「もしも石油タンカーが後ろを通ったら、フレームから消えるまで1時間だけ待って、カメラを回して、後からコンピュータで処理するんです。それがスケジュールを守る唯一の方法でした」

本作にはVFXが使用されたショットが約700あるが、監督によると、そのうち500ほどは都市の照明やホテルなど背景に映り込んだものを削除するため使われたものだという。海洋スペクタクルの裏側には、VFXスタッフの地道すぎる努力があったのだ……。

シリーズ最新作『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』は2017年7月1日公開。ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイの3人がスクリーンに揃うのは、ヴァービンスキー監督が手がけた第3作以来となる。スクリーンで新たに繰り広げられる冒険を絶対に見逃さないように！

Sources: http://www.bbc.co.uk/films/2003/07/29/gore_verbinski_pirates_of_the_caribbean_interview.shtml
http://www.christianitydaily.com/articles/6825/20151113/johnny-depp-interviews-actor-reveals-he-almost-got-fired-from-pirates-of-the-caribbean-the-curse-of-the-black-pearl.htm