『ゴーストバスターズ』のスピンオフアニメを知ってる？ ─ サブストーリー豊富＆日本クリエイターも活躍、米公式YouTubeで無料配信中

80年代超常現象SFコメディとして今も人気を博している『ゴーストバスターズ』シリーズには、1986年から1991年までアメリカで放送されたアニメシリーズが存在するのをご存知だろうか。その名も『リアル・ゴーストバスターズ』。「リアル」と冠されたタイトルを巡る事情は後述するとして、本シリーズは人間とゴーストとのバトルを描いた映画版のスピンオフ作品として知られている。

2022年2月4日より日本でも公開を迎えたシリーズ33年ぶりの正統な続編『ゴーストバスターズ／アフターライフ』のおかげもあり、『ゴーストバスターズ』への熱が再び高まりつつある現在。この機会に30年以上続く人気フランチャイズを漁る方もいるはずだが、そんな方にはこの『リアル・ゴーストバスターズ』を紹介したい。

主人公は映画版でもお馴染み、ピーター・ベンクマン博士、イゴン・スペングラー博士、レイモンド・スタンツ博士、そしてウィンストン・ゼドモアの4人。さらにゴーストバスターズの秘書ジャニーンとマスコットゴーストのスライマーも加わり、主に6名のメインキャラクターで物語が展開していく。

「リアル・ゴーストバスターズ」には、映画版の製作者・監督のアイヴァン・ライトマンやビル・マーレイ＆ダン・エイクロイドといった出演者は関与しておらず、製作陣・キャストは一新された。また、ゴーストバスターズの4人の姿を見るとそれぞれ色の違う制服を着用していることに気づくはずだが、このアニメシリーズは映画版から異なる設定もあり、新鮮な「ゴーストバスターズ」を味わうことができる。ちなみに、声優を決めるオーディションには、ウィンストン役のアーニー・ハドソンのみ映画版キャストから参加したものの、ハドソンは落選したというエピソードがある。

それはさておき「リアル・ゴーストバスターズ」は、日本のクリエイターも多数参加していることでも注目だ。シーズン1＆2（全140話あるエピソードのうち78話分）の製作には、名作『ルパン三世 カリオストロの城』（1979）を手掛けたプロデューサーの片山哲生が名を連ねており、シーズン2では全13分の監督を漫画家に転身する直前の樋口雅一が務めた。このほか、絵コンテアーティストとして数名の日本人が参加しており、アニメ大国である日本の協力を大いに仰いだ作品なのである。

アニメシリーズが映画版と違う点として面白いのは、高級ホテルで大暴れしたあの醜いゴースト「スライマー」が、ゴーストバスターズの“一員”としてECTO-1に乗り込み、共に行動しているところ。まさに“マスコット”キャラとして、ゴーストバスターズの面々とナチュラルに会話したり（英語っぽい言葉も話す）、ゴースト退治に参加したり、ときに感受性豊かに涙を流したり、映画では不気味だったスライマーの姿はない。代わりに、幽霊には見えない動物のような個性的なゴーストたちが登場していることもアニメ版の特徴だろう。

この「リアル・ゴーストバスターズ」、実はシリーズの公式 YouTubeアカウントで英語版が無料配信されている（プレイリストはこちら）。140話全てのエピソードを観られるわけではないが、1986年9月に放送された貴重な初回パイロット版や、いたずらを働いて叱られたスライマーがいじけて家出してしまう回「Slimer, Come Home!」など、公式側も印象的なエピソードを厳選している模様。英語音声のみだが、YouTubeの自動翻訳機能を用いればなんとか話についていけるはずだ。

ところで、「リアル・ゴーストバスターズ」というタイトルだが、これには複雑な背景が存在している。シリーズが開始した1986年の時点で、すでに「Ghostbusters」というテレビドラマが存在しており、同作の権利を持っていた米Filmationとアニメの製作側の間では、タイトル使用を巡る揉め事が起きていた。これを受け、アニメの製作側は「The Real」と頭に付けたのだが、「本物のゴーストバスターズ」とはなんとも風刺の効いたタイトルだ。ちなみに、1997年には「リアル・ゴーストバスターズ」の続編アニメ「エクストリーム・ゴーストバスターズ」も製作されている。