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【ネタバレ】スター・ウォーズ『ローグ・ワン』壮絶舞台裏ドキュメント ─ 公開6ヶ月前の大量再撮影&再編集、その経緯と真相を紐解く

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)は――あえてこう言ってもいいだろう――『スター・ウォーズ』史上はじめての“リアルな戦争映画”である。監督を務めた『GODZILLA ゴジラ』(2014)のギャレス・エドワーズは、ディズニーに自身のアイデアを提案するため、第二次世界大戦やベトナム戦争の記録写真を加工し、軍事ヘリの代わりにXウィングを合成し、塹壕に潜む兵士に反乱軍のヘルメットを被せたという。手持ちカメラや主観ショットの採用といった工夫の数々は、現代の戦争映画の手法で『スター・ウォーズ』を撮るという試みにほかならなかった。

しかし、である。『ローグ・ワン』における最大の戦場とは、ソウ・ゲレラの居所ジェダでも、帝国軍の研究施設があるイードゥーでも、ましてや軍事施設があるスカリフでもなかった。実は、映画製作の舞台裏こそが『ローグ・ワン』最大の戦場だったのである。


一体どういうことなのか。まずは劇場公開の半年前、2016年5月末にさかのぼることにしよう。とあるひとつの報道が米国メディアを駆け巡っていた。そこには「ディズニー幹部が『スター・ウォーズ』次回作でパニック」「『ローグ・ワン』が危機的状況、高額を投じて夏に再撮影」との言葉が躍っていた。

この記事には、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレが含まれています。必ずご鑑賞後にお読みください。

公開まで6ヶ月未満、再撮影の決定

第一報はシンプルなものだった。ギャレス監督による『ローグ・ワン』の編集第一弾にディズニーが納得しなかったため、7月に4週間におよぶ長期の再撮影が行われるというのである。再撮影が実施される時点で、2016年12月16日の劇場公開まではすでに6ヶ月を切っている計算だ。しかも撮り直しだけで約1ヶ月が費やされるとあっては、全体に残された時間はそれ以上に短くなってしまう。

さらに不安を煽ったのは、6月上旬ごろから流れ始めた再撮影の内容に関する報道だった。ハリウッドの大作映画で再撮影が行われることはさして珍しくないことだが、本作の場合、明らかに“普通”の域を脱していたのである。いわく「本編の約半分を撮り直すため、新たな監督が参加し、脚本も再執筆されている」、「新監督は『ボーン・アイデンティティー』シリーズのトニー・ギルロイ」。この2点については、おおよそ誤った情報でなかったことがのちに明らかになっている。

当時、ディズニーは『ローグ・ワン』のテイストがあまりにも『スター・ウォーズ』らしからぬものだったことから、“明るい冒険活劇”の要素を求めたとも、『エピソード4/新たなる希望』(1977)に直結するようトーンを調整するよう望んだとも伝えられた。これらの情報がどこまで正しかったかは、完成した映画を見てもいまひとつ不明瞭である。『ローグ・ワン』が従来の『スター・ウォーズ』と異なる仕上がりになったことは間違いなく、決して“明るい冒険活劇”というテイストではないからだ。この情報のうち、本編とぴったり一致するのは、『ローグ・ワン』が『新たなる希望』に直結しているということのみだろう。

いずれにせよ『ローグ・ワン』は、限られたスケジュールの中で再撮影に突入することとなった。報道通り、再撮影&再編集のキーパーソンとなったのはトニー・ギルロイ。ギャレス監督の意向を汲み、ディズニー/ルーカスフィルムの要望に応えながら作品を仕上げていく作業を担当して、少なくとも週20万ドル、合計500万ドル以上の報酬を受け取ったといわれている

スター・ウォーズ

なぜ再撮影は行われたのか?

そもそも、『ローグ・ワン』を大量の撮り直し作業へと導いたものはなんだったのか。この問いかけには、実は大きく分けてふたつの答えが存在する

そのひとつは、ズバリ「本作が戦争映画として作られていたこと」だった。まさに戦争映画を作り上げるようにして、ギャレス監督は撮影を進めていったことが関係者の口から明かされている。たとえばK-2SO役のアラン・テュディックは、実際に爆発が起こり人が吹っ飛ぶ、激しいアクションシーンの撮影をこのように振り返っているのだ。

「“これがみなさんの道です。ここから向こうに走ってください。道を変えず、進路を外れないように。絶対にここを通ってください”と言われて、みんなでビーチを走るんです。他の部隊と一緒に砂の上を走る。すると宇宙船が降りてきて、それをクレーンの上から撮ると、そこには射撃手がいる。宇宙人の射撃手がね。宇宙船の着陸が映ると、同時に煙が噴き出して、また別の方向から部隊がぞろぞろ出てくるんです。そして宇宙船が離陸し、頭上を飛んでいく。僕らが走っている間に、こういうことが起こるんです。」

こうした、あらゆる出来事が同時多発的に発生する複雑なシーンを撮る際でも、ギャレス監督はあえて撮影の内容を決め込まなかった。リアリズムを求めた監督は、「ハプニングに委ねることが新鮮さや斬新さにつながる」という確信のもと、「物事を“制御不能”に任せた」と語っている。「とても正しいとは思えないことをそのままにしておきました。うまくいけば、そこに宇宙船を合成すると、普通にやるよりもずっとリアルに見える。カオスを作ろうと試みたんです」。

ギャレス・エドワーズ
ギャレス・エドワーズ監督 Photo by Dick Thomas Johnson https://www.flickr.com/photos/31029865@N06/35758390786

ところがこの方法は、製作そのものを、そしてギャレス監督本人を苦難の道へと導くことになった。まず、撮影した映像の出来が良いものかどうか、実際の映像を見ても判断しづらかったというのだ。しかも監督は、本編の3分の1以上を「従軍ドキュメンタリー」ともいうべきスタイルで撮る構想だった。その結果、撮影された映像素材は何十時間ぶんにもなったという。

「普通、僕たちはA、B、C、D、Eという(正しい)順序で映像を繋いでいきます。でもこの映画では組み合わせの選択肢があまりにも多く、(映画を)構築しうる方法がたくさんありすぎました。ふさわしい繋ぎ方を見つけるのに時間がかかったんです。」

編集作業に遅延が発生し、製作のスケジュールは全体的に大きくずれ込んでいった。当時の様子を、編集スタッフのコリン・グーディーも監督と同じような言葉で語っている。『ホビット』シリーズのジャベス・オルセンと共同しての編集作業は、早くから困難を極めていたようだ。

「たとえば、ジェダの市場での戦闘シーンみたいに規模の大きな場面では、すごい量の映像が届いたのをなんとか切り抜けました。ギャレスとの仕事がそうなるのは分かってましたし、どんなものが彼の目に止まり、好まれるかは知っていましたから。だから、あるシーンでジャベスを手伝ったこともあれば、ジャベスが編集したシーンを数週間後に私が編集し直したこともありましたよ。ただ、あまりにもいろんなバージョンが出来上がって、状況がつかみづらくなったんです。」

コリンは初回編集の時点から、なんらかの撮り直しが必要になることは予想していたという。しかし前述の通り、『ローグ・ワン』の再撮影は、おそらくコリンの想定すらも大幅に超えていくものだったはずだ。再撮影が行われた2016年夏、編集チームには、再撮影のキーパーソンであるトニー・ギルロイの弟ジョン・ギルロイが加わっている。再撮影で腕をふるったのがトニーなら、その意志にもとづいて再編集を担ったジョンだったのだろう。そのジョンいわく、「再撮影こそが映画を現在の形にしてくれた」とのこと。作業を経てストーリーは再構築され、より豊かなものになったという。

再撮影&再編集で変更されたポイント

製作の初期から編集スタッフとして企画に携わっていたコリン、そして再撮影・再編集から参加したジョンの二人は、『ローグ・ワン』の内容がいかにして変更されていったかを劇場公開後のインタビューで明らかにしている。どうやら本編は、物語の始まりから大幅に変更されていたようだ。

コリン:オープニングのポイントは人物紹介です。物語のプロローグはいつも同じで、ジン(・アーソ)の少女時代でした。ただし当初は、大人になったジンが登場するのは(反乱同盟軍の)会議シーンだったんです。良い導入とはいえなかったので、ジンを囚人にして、キャシアン(・アンドー)の任務によって脱走させることにしました

ジョン:キャシアンやボーディー・ルックといった脇役を、もっと上手に使いたかったんです。キャシアンがスパイとともに登場する場面や、ボーディーがソウ・ゲレラに会うためにジェダをうろつく場面は後から追加されたシーンでした。[中略]正しく種を蒔くことが重要なんですよ。映画を正しく始めることが、良い第二幕や第三幕につながりますから。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

編集チームにとって最大の難関となったのは、第三幕、すなわち映画のクライマックスだった。とりわけ高く評価されている終盤部分の編集は、本編でもずば抜けて難しかったという。その難易度について、コリンは「ルービックキューブのよう」、ジョンは「とんでもなく難しいパズルを解いているよう」と形容しているのだ。

ジョン:第三幕は大きく変更しました。いろんな出来事が起こり、アクションの舞台も7つほどあったので、登場人物という観点で構造を大きく組み替えたんです。自分でよく理解していた部分はあまり変更したくなかったんですが……そうはいかなかったですね。登場人物の動きを、いくつか当初の予定とは異なるものに変更しています。さも、初めからそうだったかのように。
なにかの問題を解決しなければならないがために、ほかのすべてが変わってしまうんですよ。すべてが別の何かに繋がっているので、ひとつの場面をどこか変えると、ほかの場面も変えなきゃいけなくなるんです。

『ローグ・ワン』のクライマックスといえば、ジンやキャシアンら反乱同盟軍のメンバーが惑星スカリフに降り立ち、いよいよデス・スターの設計図を奪取せんとして帝国軍との激しい戦いを繰り広げる場面である。

この通称「スカリフ戦」に大きな変更が加えられているらしいことは、公開当時から少なからぬファンが指摘していた。なにせ予告編に含まれていた、ジンやキャシアンらが設計図のディスクを手にビーチを走る場面などは本編にまったく登場しなかったのである。この真相については、のちにギャレス監督が自ら明らかにしている

「当初、スカリフの通信タワーはメインの基地から離れている設定でした。設計図を送るために、ジンたちは(基地を)脱出してビーチを駆け抜け、タワーを上らなくてはならなかった。でも編集していて“長すぎる”と思ったんです。[中略](短縮するための)正確かつ迅速、現実的な解決策は、通信タワーを基地に入れてしまうことでした。だから、ジンたちはビーチを走らなくても良くなったんです。」

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

ジョンが言うところの「なにかの問題を解決しなければならないために、ほかのすべてが変わってしまう」の一例をご紹介しよう。基地と通信タワーが同じ施設になり、ジンたちがビーチに出なくなった結果、K-2SOの結末が変更されているようなのだ。テュディックいわく、当初の予定では、K-2SOは帝国軍のオーソン・クレニック総督に銃撃されて最期を迎えていたとのこと。しかも基地からタワーへ移動するため、K-2SOもジンたちと一緒にビーチを全力疾走していたのだという。

しかしジンたちが基地の外に出ないという変更がなされた結果、K-2SOの結末にも必然的に変化が生じることになった。ストーム・トルーパーを相手に見せた勇敢な最期は、すべて再撮影の段階で差し替えられたものなのである。ちなみにK-2SOがビーチを走るシーン、クレニックの銃撃を受けるシーンは実際に撮影されていたとのこと。ただしクレニックのブラスターに倒れた場所がビーチだったのか、あるいはタワーに到着したあとだったのかはわからない。

その後、『ローグ・ワン』は全編通じてのハイライトのひとつであるダース・ベイダーのアクションシーンに突入する。圧倒的な強さをもって反乱軍の艦上で兵士たちを次々と倒していく、“史上最恐のダース・ベイダー”が観られる場面だが、実はこの場面も再撮影の段階で追加されたものだ。

ちなみに編集を担当したコリン&ジョンの二人は、このダース・ベイダーのシーンがとりわけ印象に残っているのだそう。その理由について、ジョンはこのように述べている。

ジョン:メインのキャラクターが死んでしまう悲しい場面から、ベイダーが乗り込んできて“ご褒美”のアクションシーンが始まります。『スター・ウォーズ』ファンにはたまらない場面ですよね。しかも最後にはレイアが登場して、感動的な幕切れとなる。10分間に3種類のエモーションが詰まっているんです。人間の感情を操れるとは思いませんが、本当にカッコいい、最高の終わり方ですね。

キーパーソンが振り返る「最大の戦場」

奮闘の甲斐あって、『ローグ・ワン』は劇場公開後、『スター・ウォーズ』ファンや映画ファン、批評家からの高い評価を受けた。テイストとしては新機軸でありながら、「これこそが観たかったスター・ウォーズ」との絶賛、なかには「シリーズ最高傑作」との声も聞かれたのである。一時はパニック状態だとも伝えられた製作チームだったが、公開半年前の再撮影&再編集は見事に実を結んだのだ。

それから時は流れて、『ローグ・ワン』の公開から1年半近くが経過した2018年4月のことである。再撮影および再編集でキーパーソンとなった脚本家・映画監督のトニー・ギルロイが、当時の壮絶な舞台裏を初めて明かしている

トニーが『ローグ・ワン』に加わった時点で、ギャレス監督による編集版はすでに出来上がっていたとのこと。公開直前、監督は編集に時間がかかったことを強調していたが、参加当時、トニーの目には“それどころではない”状況が映っていたとみられる。「混乱して、散らかっていました。ドツボにはまっていて、それはもう酷い状況だったんです。とにかく前進するのに必死でした」。

ここでトニーは、ギャレス監督の撮影方法や映像素材の問題ではなく、むしろ脚本そのものがはらんでいた問題指摘している。それこそが、「『ローグ・ワン』を大量の再撮影へ導いたものはなんだったのか」という疑問に対するもうひとつの答えなのだ。トニーいわく、創作に大勢が関わりすぎたことが混乱の原因だったという。

「作品にいろんな人の手が入っていて、かなり混乱していました。[中略](問題は)登場人物の純度です。純度のないところから始めても、ダメになってしまうだけ。とんでもなくグチャグチャなものが出来上がりますよ。」

トニー・ギルロイ
Photo by Eva Rinaldi https://www.flickr.com/photos/evarinaldiphotography/7732163606/

主に脚本を担当したクリス・ワイツ氏によれば、本作ではもうひとりの脚本家ゲイリー・ウィッタによる草稿のあと、複数の脚本家がリライトに加わっていたとのこと。キーパーソンであるトニーが一時参加したのを皮切りに、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)のクリストファー・マッカリー、『コンテイジョン』(2011)のスコット・Z・バーンズ、『フォースの覚醒』(2015)のマイケル・アーントが執筆に参加。再撮影の段階で、再びトニーにバトンが回ってきたというわけなのだ。

トニーは混乱の調停人を務め、結果として「脚本」のクレジットに収まっている。トニーによれば、いざ蓋を開いてみると、事態を収束させる方法はきわめてシンプルだったそうだ。「この映画にはいろんな人たちが出てきて、そのみんなが死んでしまうんです。つまり犠牲を描く映画なんですよ」

このように冷静な視点から作品を見事に仕上げてみせたトニーは、自身が『スター・ウォーズ』に興味がなかったことをさらりと明かしている。別の『スター・ウォーズ』作品にも「別にそそられない」のだそうだ。

「今まで『スター・ウォーズ』に興味を持ったことがなかったので、畏敬の念みたいなものはありませんでした。怖くもありませんでしたね。[中略]『ローグ・ワン』は、いろんな意味で『スター・ウォーズ』ではないと思います。僕にとってはバトル・オブ・ブリテン(第二次世界大戦におけるドイツ空軍とイギリス空軍の戦い)の映画ですね。」

結果として『ローグ・ワン』は、ギャレス監督による志の高い創造性と、トニーによる熟練のテクニックが融合して生まれた作品といっていい。しかしながら一番の皮肉は、ギャレス監督があえて多くを決め込まず、あえて大勢の声を取り入れながら製作を進めていたらしいことであろう。公開以前、監督はインタビューでこのように語っていたのである。

「僕が創作上の権限をすべて持っていて、“こうして、ああして、ああする。誰の意見も聞くつもりはない、頭の中で決めてるから”って言ってしまえば、それは帝国軍みたいな映画製作でしょう。今回の映画づくりはむしろ反乱軍に近い。僕はほかの人たちよりも反乱軍らしいと思うんですよ。」

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』MovieNEXは発売中。

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Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。国内舞台作品の執筆・創作にも携わっています。ビリー・アイリッシュのライブに行きたい。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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