【ネタバレ】スター・ウォーズ『ローグ・ワン』壮絶舞台裏ドキュメント ─ 公開6ヶ月前の大量再撮影&再編集、その経緯と真相を紐解く


ところがこの方法は、製作そのものを、そしてギャレス監督本人を苦難の道へと導くことになった。まず、撮影した映像の出来が良いものかどうか、実際の映像を見ても判断しづらかったというのだ。しかも監督は、本編の3分の1以上を「従軍ドキュメンタリー」ともいうべきスタイルで撮る構想だった。その結果、撮影された映像素材は何十時間ぶんにもなったという。
「普通、僕たちはA、B、C、D、Eという(正しい)順序で映像を繋いでいきます。でもこの映画では組み合わせの選択肢があまりにも多く、(映画を)構築しうる方法がたくさんありすぎました。ふさわしい繋ぎ方を見つけるのに時間がかかったんです。」
編集作業に遅延が発生し、製作のスケジュールは全体的に大きくずれ込んでいった。当時の様子を、編集スタッフのコリン・グーディーも監督と同じような言葉で語っている。『ホビット』シリーズのジャベス・オルセンと共同しての編集作業は、早くから困難を極めていたようだ。
「たとえば、ジェダの市場での戦闘シーンみたいに規模の大きな場面では、すごい量の映像が届いたのをなんとか切り抜けました。ギャレスとの仕事がそうなるのは分かってましたし、どんなものが彼の目に止まり、好まれるかは知っていましたから。だから、あるシーンでジャベスを手伝ったこともあれば、ジャベスが編集したシーンを数週間後に私が編集し直したこともありましたよ。ただ、あまりにもいろんなバージョンが出来上がって、状況がつかみづらくなったんです。」
コリンは初回編集の時点から、なんらかの撮り直しが必要になることは予想していたという。しかし前述の通り、『ローグ・ワン』の再撮影は、おそらくコリンの想定すらも大幅に超えていくものだったはずだ。再撮影が行われた2016年夏、編集チームには、再撮影のキーパーソンであるトニー・ギルロイの弟ジョン・ギルロイが加わっている。再撮影で腕をふるったのがトニーなら、その意志にもとづいて再編集を担ったジョンだったのだろう。そのジョンいわく、「再撮影こそが映画を現在の形にしてくれた」とのこと。作業を経てストーリーは再構築され、より豊かなものになったという。
再撮影&再編集で変更されたポイント
製作の初期から編集スタッフとして企画に携わっていたコリン、そして再撮影・再編集から参加したジョンの二人は、『ローグ・ワン』の内容がいかにして変更されていったかを劇場公開後のインタビューで明らかにしている。どうやら本編は、物語の始まりから大幅に変更されていたようだ。
コリン:オープニングのポイントは人物紹介です。物語のプロローグはいつも同じで、ジン(・アーソ)の少女時代でした。ただし当初は、大人になったジンが登場するのは(反乱同盟軍の)会議シーンだったんです。良い導入とはいえなかったので、ジンを囚人にして、キャシアン(・アンドー)の任務によって脱走させることにしました。
ジョン:キャシアンやボーディー・ルックといった脇役を、もっと上手に使いたかったんです。キャシアンがスパイとともに登場する場面や、ボーディーがソウ・ゲレラに会うためにジェダをうろつく場面は後から追加されたシーンでした。[中略]正しく種を蒔くことが重要なんですよ。映画を正しく始めることが、良い第二幕や第三幕につながりますから。

編集チームにとって最大の難関となったのは、第三幕、すなわち映画のクライマックスだった。とりわけ高く評価されている終盤部分の編集は、本編でもずば抜けて難しかったという。その難易度について、コリンは「ルービックキューブのよう」、ジョンは「とんでもなく難しいパズルを解いているよう」と形容しているのだ。
ジョン:第三幕は大きく変更しました。いろんな出来事が起こり、アクションの舞台も7つほどあったので、登場人物という観点で構造を大きく組み替えたんです。自分でよく理解していた部分はあまり変更したくなかったんですが……そうはいかなかったですね。登場人物の動きを、いくつか当初の予定とは異なるものに変更しています。さも、初めからそうだったかのように。