Menu
(0)

Search

【ネタバレ】スター・ウォーズ『ローグ・ワン』壮絶舞台裏ドキュメント ─ 公開6ヶ月前の大量再撮影&再編集、その経緯と真相を紐解く

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

なにかの問題を解決しなければならないがために、ほかのすべてが変わってしまうんですよ。すべてが別の何かに繋がっているので、ひとつの場面をどこか変えると、ほかの場面も変えなきゃいけなくなるんです。

『ローグ・ワン』のクライマックスといえば、ジンやキャシアンら反乱同盟軍のメンバーが惑星スカリフに降り立ち、いよいよデス・スターの設計図を奪取せんとして帝国軍との激しい戦いを繰り広げる場面である。

この通称「スカリフ戦」に大きな変更が加えられているらしいことは、公開当時から少なからぬファンが指摘していた。なにせ予告編に含まれていた、ジンやキャシアンらが設計図のディスクを手にビーチを走る場面などは本編にまったく登場しなかったのである。この真相については、のちにギャレス監督が自ら明らかにしている

「当初、スカリフの通信タワーはメインの基地から離れている設定でした。設計図を送るために、ジンたちは(基地を)脱出してビーチを駆け抜け、タワーを上らなくてはならなかった。でも編集していて“長すぎる”と思ったんです。[中略](短縮するための)正確かつ迅速、現実的な解決策は、通信タワーを基地に入れてしまうことでした。だから、ジンたちはビーチを走らなくても良くなったんです。」

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

ジョンが言うところの「なにかの問題を解決しなければならないために、ほかのすべてが変わってしまう」の一例をご紹介しよう。基地と通信タワーが同じ施設になり、ジンたちがビーチに出なくなった結果、K-2SOの結末が変更されているようなのだ。テュディックいわく、当初の予定では、K-2SOは帝国軍のオーソン・クレニック総督に銃撃されて最期を迎えていたとのこと。しかも基地からタワーへ移動するため、K-2SOもジンたちと一緒にビーチを全力疾走していたのだという。

しかしジンたちが基地の外に出ないという変更がなされた結果、K-2SOの結末にも必然的に変化が生じることになった。ストーム・トルーパーを相手に見せた勇敢な最期は、すべて再撮影の段階で差し替えられたものなのである。ちなみにK-2SOがビーチを走るシーン、クレニックの銃撃を受けるシーンは実際に撮影されていたとのこと。ただしクレニックのブラスターに倒れた場所がビーチだったのか、あるいはタワーに到着したあとだったのかはわからない。

その後、『ローグ・ワン』は全編通じてのハイライトのひとつであるダース・ベイダーのアクションシーンに突入する。圧倒的な強さをもって反乱軍の艦上で兵士たちを次々と倒していく、“史上最恐のダース・ベイダー”が観られる場面だが、実はこの場面も再撮影の段階で追加されたものだ。

ちなみに編集を担当したコリン&ジョンの二人は、このダース・ベイダーのシーンがとりわけ印象に残っているのだそう。その理由について、ジョンはこのように述べている。

ジョン:メインのキャラクターが死んでしまう悲しい場面から、ベイダーが乗り込んできて“ご褒美”のアクションシーンが始まります。『スター・ウォーズ』ファンにはたまらない場面ですよね。しかも最後にはレイアが登場して、感動的な幕切れとなる。10分間に3種類のエモーションが詰まっているんです。人間の感情を操れるとは思いませんが、本当にカッコいい、最高の終わり方ですね。

キーパーソンが振り返る「最大の戦場」

奮闘の甲斐あって、『ローグ・ワン』は劇場公開後、『スター・ウォーズ』ファンや映画ファン、批評家からの高い評価を受けた。テイストとしては新機軸でありながら、「これこそが観たかったスター・ウォーズ」との絶賛、なかには「シリーズ最高傑作」との声も聞かれたのである。一時はパニック状態だとも伝えられた製作チームだったが、公開半年前の再撮影&再編集は見事に実を結んだのだ。

それから時は流れて、『ローグ・ワン』の公開から1年半近くが経過した2018年4月のことである。再撮影および再編集でキーパーソンとなった脚本家・映画監督のトニー・ギルロイが、当時の壮絶な舞台裏を初めて明かしている

トニーが『ローグ・ワン』に加わった時点で、ギャレス監督による編集版はすでに出来上がっていたとのこと。公開直前、監督は編集に時間がかかったことを強調していたが、参加当時、トニーの目には“それどころではない”状況が映っていたとみられる。「混乱して、散らかっていました。ドツボにはまっていて、それはもう酷い状況だったんです。とにかく前進するのに必死でした」。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly