【ネタバレ】スター・ウォーズ『ローグ・ワン』壮絶舞台裏ドキュメント ─ 公開6ヶ月前の大量再撮影&再編集、その経緯と真相を紐解く

ここでトニーは、ギャレス監督の撮影方法や映像素材の問題ではなく、むしろ脚本そのものがはらんでいた問題を指摘している。それこそが、「『ローグ・ワン』を大量の再撮影へ導いたものはなんだったのか」という疑問に対するもうひとつの答えなのだ。トニーいわく、創作に大勢が関わりすぎたことが混乱の原因だったという。
「作品にいろんな人の手が入っていて、かなり混乱していました。[中略](問題は)登場人物の純度です。純度のないところから始めても、ダメになってしまうだけ。とんでもなくグチャグチャなものが出来上がりますよ。」

主に脚本を担当したクリス・ワイツ氏によれば、本作ではもうひとりの脚本家ゲイリー・ウィッタによる草稿のあと、複数の脚本家がリライトに加わっていたとのこと。キーパーソンであるトニーが一時参加したのを皮切りに、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)のクリストファー・マッカリー、『コンテイジョン』(2011)のスコット・Z・バーンズ、『フォースの覚醒』(2015)のマイケル・アーントが執筆に参加。再撮影の段階で、再びトニーにバトンが回ってきたというわけなのだ。
トニーは混乱の調停人を務め、結果として「脚本」のクレジットに収まっている。トニーによれば、いざ蓋を開いてみると、事態を収束させる方法はきわめてシンプルだったそうだ。「この映画にはいろんな人たちが出てきて、そのみんなが死んでしまうんです。つまり犠牲を描く映画なんですよ」。
このように冷静な視点から作品を見事に仕上げてみせたトニーは、自身が『スター・ウォーズ』に興味がなかったことをさらりと明かしている。別の『スター・ウォーズ』作品にも「別にそそられない」のだそうだ。
「今まで『スター・ウォーズ』に興味を持ったことがなかったので、畏敬の念みたいなものはありませんでした。怖くもありませんでしたね。[中略]『ローグ・ワン』は、いろんな意味で『スター・ウォーズ』ではないと思います。僕にとってはバトル・オブ・ブリテン(第二次世界大戦におけるドイツ空軍とイギリス空軍の戦い)の映画ですね。」
結果として『ローグ・ワン』は、ギャレス監督による志の高い創造性と、トニーによる熟練のテクニックが融合して生まれた作品といっていい。しかしながら一番の皮肉は、ギャレス監督があえて多くを決め込まず、あえて大勢の声を取り入れながら製作を進めていたらしいことであろう。公開以前、監督はインタビューでこのように語っていたのである。
「僕が創作上の権限をすべて持っていて、“こうして、ああして、ああする。誰の意見も聞くつもりはない、頭の中で決めてるから”って言ってしまえば、それは帝国軍みたいな映画製作でしょう。今回の映画づくりはむしろ反乱軍に近い。僕はほかの人たちよりも反乱軍らしいと思うんですよ。」
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