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映画業界の闇描く『アシスタント』公開決定 ─ 憧れの映画業界、その実態は誰もが見て見ぬ振りする暗部

『アシスタント』
© 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

「オザークへようこそ」「令嬢アンナの真実」ジュリア・ガーナー主演作『THE ASSISTANT(原題)」が、邦題を『アシスタント』として2023年6月16日に日本公開することが決定した。本作のティザービジュアルと場面写真3枚が公開されている。

憧れの映画業界、のはずだった。新人アシスタントが気づいてしまったのは、誰もが見て見ぬふりをしている その“闇(しくみ)”。『アシスタント』は、『ジョンベネ殺害事件の謎』(2017)で知られるドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンが、2017 年にハリウッドを発端に巻き起こった「#Me Too 運動」を題材に、今⽇の職場における⼤きな問題を掘り下げた作品だ。

名⾨⼤学を卒業したばかりのジェーン(ジュリア・ガーナー)は、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職する。業界の⼤物である会⻑のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺⾵景なオフィス。早朝から深夜まで、平凡な事務作業に追われる毎⽇。常態化しているハラスメントの積み重ね……。

しかし、彼⼥は⾃分が即座に交換可能な下働きでしかないということも、将来⼤きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかないこともわかっている。ある⽇、会⻑の許されない⾏為を知ったジェーンは、この問題に⽴ち上がることを決意するが……。

アシスタント
© 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.
『アシスタント』
(C) 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

ニューヨーク・タイムズスクエアの裏⼿にある薄汚れたオフィスで、18 ⽇間という短期間で撮影された本作。映画プロデューサーを⽬指して⼤⼿エンターテイメント会社で働き始めた、若く野⼼ある新⼈アシスタントの⼀⽇の物語を通して、映画業界を舞台にしながら、さまざまな職場が抱える問題とヒエラルキー最下層の⼈々に共通する経験を浮き彫りにしている。サンダンス・ベルリンを始めとした、世界中の映画祭やメディアによって⾼く評価されている作品だ。

『アシスタント』
© 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

公開されたのは、表情やタイトルが⼀切なく、性別や年齢、国籍も不確かな匿名の⼈物を主題に作品を制作する 3DCG アーティスト・POOL がアートワーク を⼿掛けたティザービジュアル。薄暗いオフィスで正⾯を⾒つめて⼀⼈佇む主⼈公・ジェーンの姿が描かれ、彼⼥の孤独とやがて気づくことになる組織の“闇”を感じさせるビジュアルとなっている。

また、背後に垣間⾒える不在の会⻑室は、本編では顔を⾒せない絶対的な権⼒者の存在を暗⽰。POOL が作り出す、実在するかのように⽣々しい「顔のない」⼈物には、英語で匿名の⼥性を指す“Jane Doe” に由来する名を持ち、数百にも及ぶ労働者へ対して⾏われたリサーチとインタビューによって得られた膨⼤な実話(とりわけ⼥性の痛みや混乱の経験)から形成されたジェーンというキャラクターの意味が託されており、POOL は「⾃分の⽬の前で当たり前に起きている⼥性蔑視や抑圧を再確認させられます。この映画がその気づきへの⼊り⼝になる事を切に願っております」と本作についてコメントしている。

『アシスタント』
© 2019 Luminary Productions, LLC. All Rights Reserved.

ヒエラルキーの末端で働く人々の代弁者でもあり、現代のジャンヌ・ディエルマンとも言えるジェーンを全身全霊で演じたのは、Netflix オリジナル「オザークへようこそ」(2017)で3度にわたるエミー賞助演女優賞に輝いたジュリア・ガーナー。近年では Netflixオリジナル「令嬢アンナの真実」で主演に抜擢、2023 年 3 月には GUCCI のフレグランスコレクション「GUCCI GUILTY」のニューフェイスとなるなど、いま注目の若手俳優として急速に地位を確立している。細かな演技の積み重ねによって、オフィスで働く人間の仕草やクセ、息苦しいストレス、そしてトップ企業に巣食うハラスメントや搾取の空気と、末端社員である自らの信念との間の葛藤を巧みに表現している。

24時間のあいだ、まるで透明な存在のようにさまざまな暴力の矛先になるジェーン。自分の意見はほとんど述べず、寡黙に状況を見つめる彼女の目を通じて、観客は自分が同じ立場ならどうするか考えさせられる。

また同時に、本作は『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)にも連なる、職場のパワハラや性的虐待を許容し蔓延させているシステムへの痛烈な告発とも言える。一つの確信によって、自らも気づかぬうちに組織のシステムに加担していることを知ったとき、ジェーンはどのような選択をするのか? 架空の映画会社の一日が、目に見えない<闇(しくみ)>を明るみに出す。誰も無関係ではいられない、87分の静かな衝撃。

『アシスタント』は2023年6月16日、新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

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THE RIVER編集部THE RIVER

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