Menu
(0)

Search

『ビッグ・フィッシュ』感動のエンディング曲はいかに生まれたか ─ パール・ジャム、父への思いを込めた名曲

ビッグ・フィッシュ
© 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ティム・バートン監督による名作ファンタジー『ビッグ・フィッシュ』(2003)が、2026年10月23日(金)〜10月29日(木)の1週間限定で、ヒューマントラストシネマ渋谷にてリバイバル上映を果たす。THE RIVERの独自企画「REVIVAL by THE RIVER」第3弾だ。奇想天外なホラ話を語り続ける父親と、その真実を知ろうとする息子の、感動の物語を劇場で堪能できる。

『ビッグ・フィッシュ』の劇伴は、バートンが長きにわたってコラボレートしてきたダニー・エルフマンが手がけている。エルフマンによるオーケストラスコアのほか、エルヴィス・プレスリーの「All Shook Up」やバディ・ホリーの「Everyday」などクラシック・ナンバーが心地よい。

父親と息子の間に横たわる確執、戸惑い、そして本当は深く理解し合いたいと願う複雑な思いを描くこの物語を締めくくるエンディング曲は、Pearl Jam(以下PJ)の「Man of the Hour」。本楽曲は、バートンがPJに直接依頼して制作されたトラックだ。

タイトルの「Man of the Hour=時の人、その時の主役」は、まさしく『ビッグ・フィッシュ』でアルバート・フィニーが演じた父エドワードを指す言葉だ。アコースティックギターによるサウンドも、コーラスで繰り返される歌詞「Cause the man of the hour is taking his final bow / Goodbye for now(主役の男が最後の挨拶をしてるから/じゃあね、また)」もきわめてシンプルだが、ボーカルのエディ・ヴェダーの渋く深みのある歌声が引き立っている。リリースから20年以上経った今も非常にファン人気が高く、今年4月に行われたヴェダーの来日ソロ公演でも、名古屋公演で披露された。

ヴェダーは『ビッグ・フィッシュ』の上映会が終わるとすぐさま「Man of the Hour」を書きあげている。翌日にはバンドに持ち込み、4日後にはレコーディングを行うスピード感をもって本楽曲の制作にあたった。ギタリストのマイク・マクレディは当時を振り返り「エディと僕はその後、映画について話し合ったけど、二人とも目頭が熱くなってた。映画から感じられた想像力と人間性に、僕たちは深く感動し、胸がいっぱいになったんだよ」と語っている。

PJにとっては渾身の一曲だが、ヴェダーは決して本楽曲をバートンに強くプッシュすることはなく、「気に入らなかったら、無理に使わなくてもいいから」と控えめな態度で接したのだという。しかしバートンは「Man of the Hour」をいたく気に入り、「映画の精神を見事に捉えている」とありがたく受け取った。バートンは「自分が尊敬するバンドが自分の好みに合わない作品を作ったとしたら、耐え難いものになりかねない」とも語っており、楽曲のオファーというものがいかに難しいかが窺える。

アメリカ・シアトルを中心に1990年代前半から活動するPJは、ニルヴァーナやサウンドガーデンなどとともに、オルタナティブ・ロック、グランジのムーブメントをけん引し、今もなお第一線で活動する、まさにロックバンドのレジェンド。デビュー時から若者の声をリアルに代弁してきたPJにとって、「父親」という存在は大きなテーマの1つだ。ヴェダーの両親は、彼が幼い時に離婚しており、実父だと信じていた母親の再婚相手が義理の父親だと後に知ることになる。そして実の父親の存在を知ったときには、父親はすでに亡くなっていた。その喪失感や行き場のない感情を、ヴェダーは「Alive」「Release」など初期楽曲にぶつけてきた。

一方で、「Man of the Hour」は熱くエモーショナルだが、どこか悟りを開いたような、諦観のような優しさと穏やかさが胸を打つ。ライブでの定番曲としてだけではなく、ルー・リード、ラモーンズのジョニー・ラモーン、Alice in Chainsのレイン・ステイリーといった親交の深いミュージシャンが亡くなったときには、この曲で追悼を捧げており、バンドの長年のキャリアを代表する1曲にもなっている。

ヴェダーのパーソナルな思いとその変遷が、『ビッグ・フィッシュ』でバートンが繰り広げる夢のようでいてビターな世界とクロスオーバーする様を、ぜひスクリーンで堪能してほしい。

上映概要

ビッグ・フィッシュ
© 2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

企画名:REVIVAL by THE RIVER vol.3

上映作品:『ビッグ・フィッシュ』(2003)

上映期間:2026年10月23日(金)〜10月29日(木)
全日 18:10より上映

上映劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)

チケット発売:
オンライン販売

10月16日(金) 18:00~ 会員先行販売 / 21:00~ 一般販売

窓口販売
10月17日(土) 朝オープン時~
※オンライン販売で残席があった場合のみ

チケット料金:1,600円(各種割引サービスはご利用いただけません)

上映時間は後日劇場ホームページをご確認ください。

▼ 『ビッグ・フィッシュ』の記事

    Source: AUDIOECLECTICA, Radiónica

    Writer

    アバター画像
    Yuka ShingaiYuka Shingai

    携帯向け音楽配信事業にて社内SE、マーケティング業務に従事した後、妊娠・出産を機にフリーライターに転向。 映画とお酒と化粧品が好き。日課のオンライン英会話でもしょっちゅう映画の話をしています。

    Ranking

    Daily

    Weekly

    Monthly