もう「ヒーテッド・ライバルリー」を知らない自分に戻れない ─ スポ根×クィア・ロマンスが描く、「男らしさ」のその先

『ブロークバック・マウンテン』や『ブエノスアイレス』が描かなかったもう一つの世界
セクシーでユーモアに溢れる彼らが本作を刺激的なものにしているのは間違いなく、アクセルとブレーキを同時にベタ踏みするようなスリルと興奮がある。筆者は前述の『ブロークバック・マウンテン』をクィア・ロマンスの最高峰作品だと公開から20年過ぎた今も疑わないけれど、結ばれなかった相手を永遠に思い続けるセンチメンタルだけが、必ずしもクィア・ロマンスの最高の結末だとは思っていない。喪失や犠牲を伴う悲劇的なエンディングこそ至高と言い続けるのは、いささか時代錯誤かもしれない。
後ろめたさを抱えて神妙な顔で思い煩うだけでなく、目の前にいる相手を思いやり、より良い道を模索する物語がいまの世の中にもっと送り出されてほしいとも思う。ウォン・カーウァイが『ブエノスアイレス』で、グザヴィエ・ドランが『わたしはロランス』で残した甘美な後味は、この先も語り継がれるのだから、そのあとに続く系譜が軒並み引き継がなくてもいいはずだ。
カナダ人ジャーナリストのレイチェル・ギーザは著書『ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか』(DU BOOKS刊)で、アイスホッケーを含むスポーツがいかに男性性を醸成するかを論じている。彼女が同性パートナーとの間に養子として迎えた息子が、アイスホッケーやゲームに興じ、「伝統的な」男の子に育っていく様子を興味深く思ったことが本著の成り立ちだ。「男らしくある」ことの危うさや脆さ、弊害を、歴史や教育、宗教など多様な視点と事例を交えてフラットに説き、その上で「人はジェンダーに関係なく、タフさと優しさ、勇敢さと繊細さ、競争心と思いやりという、人間に備わるあらゆる性質を同時にもつことができる」と掲げるメッセージは「ヒーテッド・ライバルリー」が持つ本質と完全に符合するし、福音のような強さも感じられる。
『ブロークバック・マウンテン』でイニスとジャックに起こりえたかもしれないもう1つの世界を、「ヒーテッド・ライバルリー」のシェーンとイリヤが見せてくれるのではないかと希望を見出している。「2人はその後も幸せに暮らしました」では終わらない、ハッピー・エバー・アフターの向こう側にある物語をまだまだ続けてほしいのだ。
「ヒーテッド・ライバルリー」はU-NEXTで配信中。
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Source:Deadline,The Wrap,2,,3,SNL1,SNL2,NBC,The Hollywood Reporter,People,GQ,Vanity Fair,Instagram
























