『アイアンマン』撮影監督「AIがマーベルを置き換えるかも」 ─ 「『300 <スリーハンドレッド>』は初期のAI映画のようなものだった」

『アイアンマン』(2008)『アイアンマン2』(2010)の撮影監督マシュー・リバティークが、映画業界における人工知能(AI)の影響について持論を語った。映画そのものがAIに取って代わられることはないとしつつ、マーベルやDCの大作映画では、製作コストを削減するためにAIの活用が進むと予想している。
米Varietyのインタビューで語ったもの。リバティークは『ブラック・スワン』(2010)『アリー/スター誕生』(2018)『マエストロ:その音楽と愛と』(2023)などで知られ、アカデミー賞撮影賞に3度ノミネートされた名手だ。スペインで開催されたエボリューション・マヨルカ国際映画祭では、撮影監督としての功績を称える賞を受賞した。
映画製作におけるAIの台頭について尋ねられたリバティークは、次のように語った。
「AIが映画に取って代わることはありません。取って代わる可能性があるのは、マーベルです。マーベルやDCのような大手スタジオは巨大な映画を作っていますし、そこでは明らかに技術が重要な役割を担っています。映画に莫大な費用をかけているので、コストを抑えるためには、VFX(視覚効果)にAIを導入せざるを得なくなるだろうというのは理解できます。」
もっとも、リバティークはマーベルがAI俳優を起用することはないと考えている。マーベル作品が観客を惹きつける理由として、クリス・エヴァンスやロバート・ダウニー・Jr.といった俳優たちの個性を挙げた。
「彼らはいつだってキャラクターに個性を与えることができていました。クリス・エヴァンスにしても、ロバート・ダウニー・Jr.にしても、彼ら自身がキャラクターとなり、人々はそのキャラクターを好きになるのです。ティリー・ノーウッド版のバットウーマンやブラック・ウィドウが登場するとは思いません。ロバート・パティンソンと同じことができるAIキャラクターを作れるなんて、僕には言わないでください。そんなことはできませんよ。」
ティリー・ノーウッドは、AIによって生成された架空の女優。リバティークは、技術的にキャラクターを作り出せても、生身の俳優の個性や演技まで再現することはできないと考えているようだ。
一方、AIによって製作できる映画の例として挙げたのは、ザック・スナイダー監督の『300 <スリーハンドレッド>』(2006)だ。同作は巨大な倉庫内のグリーンバックでほぼ全編が撮影され、背景の大部分がデジタル技術によって作り出されている。
「あれは基本的に、初期のAI映画のようなものでした。自分の映画をああいう見た目にしたいのなら、どうぞやってください。でも、繰り返しになりますが、僕たちは人間として、そういう映画にどうやって共感するのでしょうか? こうした映画の一部は、観客層が本当に限られています。年齢や性別、さらには社会的な交流のあり方によっても限られるのです。」
続いてリバティークは、ヨアキム・トリアー監督の人間ドラマ『センチメンタル・バリュー』(2025)を引き合いに出し、「誰もAIで『センチメンタル・バリュー』を作ろうとはしないでしょう」と強調した。「AIが僕たち全員の仕事を奪うという考えには、少しブレーキをかけた方がいいと思います」と述べ、人間が社会全体として映画に背を向けることはないと主張。「僕たちには映画が必要なのですから」と続けている。
もっとも、リバティークはAI技術の導入そのものに反対しているわけではない。長年の盟友であるダーレン・アロノフスキー監督とは、次回作に向けてAIのテストを計画しているという。アロノフスキーは2025年、映像製作事業「Primordial Soup」を立ち上げ、Google DeepMindとの提携を発表している。
リバティークによれば、AIの活用についてはすでにアロノフスキーと話し合っており、近くテストを実施する予定だ。リバティーク自身は、AIに与える情報が多いほど求める結果が得られると考えている一方、アロノフスキーは、どれほど少ない情報で映像を作れるのかに興味を持っているという。
ただし、次回作でAIをどの程度使用するのかは明かしていない。従来通りの撮影方法を維持し、人間の手で映画を作ることには変わりがないという。
「僕たちはこれまで通り映画を作ります。撮影現場に立つんです。ダーレンは膝をついて、指であちこちのものを動かして、いつも通りのことをするでしょう。でもAIは、それとは別のものです。AIが彼の仕事を置き換えるとは思いません。ただ、彼は興味を持っているんです。」
二人が検討しているのは、従来通りカメラで撮影した映像にAIを活用し、何ができるのかを探ることだ。リバティークは、アロノフスキーが新技術を研究する資金を得ていることを歓迎しており、自身もAIについてもっと理解する必要があると感じているという。
実際、リバティーク自身もポストプロダクションでAIを使用した経験があり、例えば映像に生じた不要な反射光の修正には有効だと認めている。従来、こうした作業は低賃金で働く海外のスタッフに委託されることもあったが、AIを活用すれば効率化できる。一方、その利便性によって仕事を失う人々には複雑な思いを抱いているという。
「彼らには同情します。今では部屋にいながらいろいろな作業ができるようになりましたが、それを手放しで喜ぶのは無神経なことです。実際に仕事が奪われているのですから。ただ、そうした仕事は、もともと僕たちの業界の人々から奪われて、海外のいわば搾取工場のような場所に渡されていたものでもあります。」
リバティークは、AIによる仕事の代替がどこまで進むのかを見極めることは難しいと指摘。いつから本格的に人間の仕事が置き換えられ、次にどのような変化が業界全体に影響を及ぼすのかと、懸念を示している。
また、リバティークは最近、アーティストのダスティン・イェリンによる短編映画『Goodbye Lamby(原題)』に撮影監督として参加した。同作は、イェリンの彫刻作品の内部に広がる世界をAIで描き出すもの。リバティークは、従来ならストップモーション・アニメーションで製作されていたタイプの映像だと説明し、現実世界を再現する必要がないため、AIが比較的うまく機能したと評価している。
興味深いのは、その製作過程でも人間による作業が不可欠だったことだ。リバティークによれば、AIへの指示を担当するスタッフから、実際に照明を設置するよう求められたという。AIに希望する照明効果を言葉で理解させるより、屋根の穴に実際に照明を置く方が簡単だったためだ。AIを使った映像製作であっても、従来の撮影技術が役立つことを示すエピソードだ。
一方、リバティークはAIが既存作品を参照する仕組みや、創作者の権利についても懸念を示している。過去には、自身の撮影スタイルを模倣するようAIに指示して生成された映像が、2度にわたって送られてきたという。
「これまでに2回、AIに『マシュー・リバティークのスタイルで撮影して』と指示して作った映像が送られてきたことがあります。どうして僕の仕事が全部、誰でも勝手に使っていいものになっているんでしょうか? 本当に不快です。もちろん、そんな映像を送ってもらえるのは光栄なことでもあります。でも、ひどい話ですよ。」
そもそも、リバティーク自身は自分に固有の撮影スタイルがあるとは考えていないという。映画に自分の作風を押しつけるのではなく、物語を理解し、監督のビジョンを実現することが自身の仕事だと説明。オリヴィア・ワイルド、ジョディ・フォスター、ジョン・ファヴローなど、監督が違えば求められる表現も異なるため、これまでの仕事を単一の「マシュー・リバティーク風」のスタイルとして抽出することは間違っていると批判した。
さらにリバティークは、AIによる映像製作において、誰が創作上の判断を下すのかという問題を提起した。
「誰がプロンプトを指示するのでしょうか? 誰が美的センスを持っているのでしょうか? 映画をそれぞれ違うものにしているのは、人間という要素なんです。」
リバティークは、近年の映画では照明表現が均質化していることも問題視している。特にデヴィッド・フィンチャー監督の映像表現が広く参照されていることについて、「どれもTemuで買ったデヴィッド・フィンチャーの模造品みたいです」と皮肉を交えて指摘。自身にとって重要なのは最終的な映像の仕上がりであり、これまでAIで生成された映像で本当に感銘を受けたものはなく、今後そうした作品に出会えるかどうかもわからないという。
リバティーク自身、『アイアンマン』シリーズのほか、『ヴェノム』(2018)やDC映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)でも撮影を担当している。スーパーヒーロー映画の映像製作を熟知する人物による発言だ。
実際、マーベル・スタジオではAIを用いた映像製作がすでに試みられている。2023年のドラマ「シークレット・インベージョン」では、オープニング映像に生成AI技術が採用され、物議を醸した。また、マーベル作品のVFX製作をめぐっては、過密なスケジュールやスタッフの労働環境が問題視されてきた経緯もある。
AIによるVFXの効率化は、こうした現場の負担を軽減する可能性がある一方、従来の仕事を奪う懸念も伴う。リバティークはそうした現実を認めながらも、映画をそれぞれ異なる作品にしているのは人間の創造性であり、その役割まですべてAIに置き換えられるとは考えていないようだ。
▼ マーベルの記事

目の血管10本破裂、「ヴィジョンクエスト」撮影「大袈裟に演りすぎた」 ─ 2週間も目が真っ赤に CGで消したそう 
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』パニッシャーとのNGシーンが公開 ─ 「放して」「俺触ってねぇって」 楽しそう 
マヌケじゃない?あの『デアデビル』例の公園戦闘シーン、ベン・アフレック本人も不安だった マトリックス or マヌケ? 
レイバンとマーベルがコラボ ─ スパイダーマン、キャプテン・アメリカ、ドクター・ドゥーム、デッドプールのサングラス登場 子ども向けモデルも! 
『ゴーストライダー』ヴィラン役に「ヒーテッド・ライバルリー」ブレイク俳優が交渉中、ライアン・ゴズリングと対決へ 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』にも





























