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「映画賭博」ハリウッドで禁止に ─ キャスティングや映画公開日、賞レースなどの出来事に賭ける「予測市場」が問題化

イメージ写真。 Photo by engin akyurt

次のジェームズ・ボンドを演じるのは誰か。映画の公開日はいつになるのか。アカデミー賞には誰がノミネートされるのか……。ハリウッドでは、こうした映画業界の大きな出来事を対象に、実際のお金を賭ける取引が行われているという。そんななか、映画スタジオや製作会社が、社員による賭けを禁止する動きを進めているそうだ。米The Hollywood Reporterが報じた。

問題となっているのは「予測市場(Prediction Market)」と呼ばれるサービスだ。Kalshi(カルシ)やPolymarket(ポリマーケット)といったプラットフォームでは、政治や経済、スポーツ、エンターテインメントなど、さまざまな未来の出来事について、金銭を伴う取引ができる。利用者は特定の結果が実現するかどうかを予想して取引し、予想が当たれば利益を得られる仕組みだ。

映画ファンにとって馴染み深い話題も、すでに賭けの対象になっている。例えばKalshiでは、『007』シリーズの次期ジェームズ・ボンド役を誰が演じるかという予測市場が存在。2026年10月28日に同社が公表したデータでは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのカラム・ターナーが45%、ドラマ「窓際のスパイ」のジャック・ロウデンが44%の確率で予想されていた。こうした数字は参加者の取引によって変動するものであり、映画スタジオ側が示した選考結果ではない。

さらにKalshiでは、次のボンドの悪役を誰が演じるか、ボンドガールは誰になるか、主題歌を誰が担当するかといった市場まで設けられている。競合するPolymarketの次期ボンド役予想市場でも、11月上旬時点で累計取引高が約190万ドルに達している。

次期ボンド役をめぐっては、実際にカラム・ターナーやジャック・ロウデン、ジョシュ・オコナーらが最終オーディションの候補に挙がったと報じられている。映画ファンの間で盛り上がるキャスティング予想が、現実のギャンブルに発展しているというのだから考えものだ。いわば「映画賭博」である。

こうした市場には大きな問題がある。映画の配役や公開日などは、公式発表よりも前に、スタジオや製作関係者の一部が知り得る情報だからだ。一般の参加者が噂や報道をもとに予想する一方で、内部情報を持つ人物は結果を事前に把握したうえで取引できてしまう。

報道によれば、複数のハリウッドの映画スタジオや製作会社は、社員に対して予測市場での取引を禁じる新たなガイドラインを通達している。その対象には、スタジオの業績、キャスティング、公開日などが含まれ、友人や家族に情報を渡して代わりに賭けてもらう行為も禁止される。少なくとも1社では、違反が疑われる従業員を匿名で通報できる窓口まで設けられたという。

また、THRやVariety、Deadlineといった業界有力メディアを傘下に持つPenske Media Corporation(PMC)も、最近になって社員向けの規定を更新。映画賞のノミネート、キャスティング、製作スケジュール、公開日などに関する予測市場での賭けを禁止した。

内部情報を利用した不正な取引は、すでに現実の問題になっている。2026年2月には、人気YouTuberのMrBeast(ミスタービースト)の動画編集者が、未公開情報を利用して同氏の動画に関する予測市場で取引していたとして、Kalshiから2年間の利用停止と約2万ドルの金銭的制裁を科された。Kalshiの公式処分通知によれば、不正取引によって得られた利益は約5,400ドル(およそ85万円)だったとされる。

次期ボンド役をめぐる賭けでも、不審な動きが報告されている。THRによると、賭けサイトのBetOnlineでは2026年11月上旬、カラム・ターナーに対する有力筋とみられる賭けが急増。長らく有力視されていたジャック・ロウデンを上回る動きが生じたことから、運営側は内部情報の漏洩を懸念し、次期ボンド役に関する賭けの受付を一時的に停止したという。

なお、米国では映画の興行収入を対象とした先物取引には、すでに法的な禁止規定がある。1958年に制定された「Onion Futures Act(タマネギ先物法)」は、2010年の法改正によって映画興行収入に関する先物契約も禁止対象に加えられた。

予測市場に詳しいコロンビア大学のジョシュア・ミッツ法学教授はTHRに対し、企業が内部情報を利用した取引を防ぐため、従業員へのルール周知や管理を迫られる状況になっていると説明。一方、ブロックチェーンを利用した取引は、身元を巧妙に隠されると追跡が極めて困難になるとも指摘している。

かつてはファン同士の予想や業界の噂話だった映画のキャスティング情報が、いまや金銭的な価値を持つ取引対象になっている。映画スタジオにとっては、未発表情報を外部に漏らさないだけでなく、それを知る社員自身が利益を得ることも防がなければならなくなった。

Source:The Hollywood Reporter, Kalshi, Polymarket, Kalshi Exchange, U.S. Code

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Joe Kishi

THE RIVER編集部。ハリウッド大作からインディー作品、アニメーションまで幅広くカバー。魂を揺さぶる瞬間に出会える記事を届けたい。

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