『ザ・バットマン』は西暦何年の設定?『ジョーカー』とつながっている?プロデューサーに聞いた【単独インタビュー】

『ダークナイト』トリロジー以来となるバットマン単独映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が、2022年3月11日(金)に公開される。
バットマン2年目の物語を描くという本作。全く新しい物語が展開されるということで初心者にも優しい内容となっていそうだが、DCコミックスのファンとしては気になるポイントもたくさん。そこでTHE RIVERでは、『ザ・バットマン』を創り上げたプロデューサー、ディラン・クラークに単独インタビュー。監督のマット・リーヴスとは、『猿の惑星』シリーズでも仕事を共にしている深い仲だ。
新時代のバットマンはいかに誕生したのか?インスピレーションのもととなっているタイトルなどについても聞いている。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』プロデューサー ディラン・クラーク 単独インタビュー
──2019年の『ジョーカー』が批評面でも興行面でも成功したことで、DC映画はマーベルにはない唯一無二のスタイルを確立したと思います。『ザ・バットマン』の企画には、『ジョーカー』の成功も影響していますか?
本作は『ジョーカー』の頃から既に動いていました。『ザ・バットマン』と『ジョーカー』はだいたい同じ時期にGOサインが出たんです。ワーナーには、素晴らしいIP(知的財産)やキャラクターを使って、DC映画を製作したいという野心があったんですね。それで、『ジョーカー』はトッド・フィリップスに、『ザ・バットマン』はマット・リーヴスに託されて、キャラクターたちが掘り下げられることになった。野心的で、映画的なクオリティを追求する監督がいて、これまでとは違う作品を作るんだと。
私たちも『ジョーカー』の好評は嬉しかったです。コミックを映画化したポップコーン映画というわけではない、シリアスな作品でしたからね。我々が目指したのは、もう少しディープでリッチな作品です。
──本作はバットマン2年目の物語ということですが、時代設定でいうと何年になるのでしょうか?
いい質問ですね。「現代」です。何年という設定はありません。バットマン2年目の物語として、まだ完全ではない世界でのキャラクターたちを描きます。彼はヴィジランテとして知られていますが、完全にはバットマンという状態ではありません。
繰り返しになりますが、「今」だと感じてもらえると思います。ゴッサムを舞台にすると、現実世界の写鏡のようなことが描けるんです。確かにコミックのビジュアル表現に通ずるノワールらしさはありますが、街には現代的な感覚を持ってもらえると思います。今日に通ずる世界です。
──なるほど。『ジョーカー』は1981年という設定でした。念のため確認なのですが、『ジョーカー』との繋がりはないんですよね?
繋がっていません。『ジョーカー』は1980年代が舞台で、当時のニューヨークのような雰囲気でしたね。でも『ザ・バットマン』は「現在」の雰囲気です。

──本作から、ゴッサムとペンギンを題材にした2作のスピンオフが企画中ということなのですが※、このユニバースは今後どれくらい拡張されるのでしょうか?もちろん本作の成功次第だとは思うんですが、続編もあり得ますか?
そうですね。続編をやりたいという思いはずっとあります。本作はバットマン映画として独立していますが、観客に求めていただけるのなら。本作には登場していない素晴らしいキャラクターもいますからね。おっしゃる通り、HBO Maxでペンギンのドラマを進めています。本作でコリン・ファレルが演じたオズはもっと時間をかけて扱いたいし、リミテッド・シリーズならそれが可能になる。
ただ、この一作を最高なものにしようという思いで制作しました。もしそれがうまく出来て、観客にも気に入ってもらえたなら、今後に続いていけたらいいな、という感じ。ストリーミングサービスのHBO Maxでエピソードを作るというアイデアは動いているのですが、それは『ザ・バットマン』という劇場体験があってこそ。その将来はどうなるかは、わかりません。私とマットとしては、このキャラクターを末長く扱っていきたいと願っています。
※ 2022年3月9日、ゴッサムのスピンオフが頓挫したらしいとの情報が入っている。
──本作がすごく楽しみなので、公開前に心の準備をしておきたいです。そこで、本作に似た雰囲気を持つ映画を教えていただけますか?DC映画以外でお願いします。
(笑)。本作は犯罪映画、ノワール映画なので、ドラマティックで壮大。他の映画とは全然違います。私もマットも、いつも壮大な世界を作りたがるんですよね。
好きなのはフランシス・コッポラの映画で、『地獄の黙示録』(1979)は良いですよね。黒澤映画も大好きで、幾度となく参照しました。それから『チャイナタウン』(1974)も観ましたし、『コールガール』(1971)も観ました。
キャラクターに関するリサーチもたくさん行いましたが、世界観を作るにあたって、美術デザインやVFXスーパーバイザーとは早い段階から仕事を共にしました。真実味のあるものを求めていたからです。撮影監督にグリーグ・フレイザーが入ってくれたのは幸運でした。グリーグは光の使い方が素晴らしい。「シネマ」を作る才能がある、素晴らしいカメラマンです。
本作では、コミック映画らしさもありながら現実味があってリアルだという感想をいただいていて、それはすごく嬉しいです。非常にオリジナルな作品を作ることができたと感じています。

──本作には黒澤映画の影響もあるのですね?
私とマットのやること全てにおいて、黒澤の影響があると思います。黒澤映画の主人公とは、感情的に苦しまされていますよね。マットの『猿の惑星』のシーザーだって、黒澤タイプのヒーローだと思いますよ。
──本作では、バットマンのオリジンには触れられないそうです。
オリジンは常にそこにあります。彼の両親が10歳の頃に殺されて、というのはもうご存知ですよね。その設定はありますし、触れられています。彼の復讐心や怒り、正義を求めるという思いは、そのオリジンに由来しています。オリジン自体を描くというわけではないだけです。

──本作には、リドラーやペンギン、ファルコーネといった複数のヴィランが登場しますが、リドラーがメインヴィランということでよろしいでしょうか?
はい、リドラーがメインヴィランです。バットマン映画の美味しいところといえば、敵が主人公に対してパーソナルに語りかけるところ。リドラーは人を巧みに操る知能派で、マキャベリ的な犯罪者です。予告編にもあるように、彼は犯行現場にバットマンへ向けたカードを残していくんです。これが探偵物語としてのフックになる。リドラーは何を企んでいるのか?ブルース・ウェインにとってどんな意味があるのか?とね。リドラーこそが今作のエンジンです。
それからセリーナ・カイル。彼女は悪人ではありませんが、面白い特異性がある。犯罪にも平気で手を出します。オズがペンギンになるように、彼女も最終的にキャットウーマンになるんです。ですから、本作はリドラーやキャットウーマン、ペンギンにとってのオリジンストーリーでもあるのです。

DC映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は2022年3月11日(金)に全国公開。