Menu
(0)

Search

なぜ『ザ・バットマン』はオリジンを描かないのか?なぜバットモービルはマッスルカー調なのか?マット・リーヴス監督単独インタビュー

THE BATMAN-ザ・バットマン-
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

今回はオリジン・ストーリーはやらないぞと、最初から決めていたんです。なぜなら、素晴らしいオリジンはこれまで何度も作品になっているからです。どれも非常に素晴らしい。もはやバットマンのファンではない方々も、オリジンの内容は知っているでしょう。マーサの真珠のネックレスや、ブルースの両親が殺害されたことも、もう誰でも知っている。浸透しきっているんだから、今回は違うことをやりたいなと。

私は、もし自分がバットマンの映画をやるなら、素晴らしいバットマン映画はすでにたくさん存在するのだから、何か決定的なことをやりたいと思っていたんです。それで、これは決定的になるぞと思ったのは、「両親を失ったブルースがバットマンになる」という物語じゃなくて、「不完全なバットマンを描く」という物語。そんな彼の初期の日々を観るんです。まだ自分自身をコントロールできていないし、自分を突き動かしているものが何かさえ理解していない、自分の闇の部分とも折り合いがついていないような状態です。まるで自分の中に眠る野獣と向き合っているようなエゴを描く、ダークなコミックのように。彼が戦っている相手は、犯罪者たちだけではありません。自分自身とも戦っているのです。そういった物語なら、決定的で、他と違う作品になると思ったんです。

なので今作は、「バットマンのオリジンは既に過去の話だが、キャリアの初期である」ということです。そこで描かれる事件が、最終的に彼のオリジンに誘っていくんです。私は、「世界最高の探偵」としてのバットマンを描きたかったんです。これまでの映画は、彼が実は探偵であるということや、ノワールの雰囲気に寄せることがなかったですよね。事件現場で謎を解く、といったことがなかった。だから我々はその要素に寄せたんです。

その旅の中で、ゴッサムの腐敗の真相や、彼のオリジン、彼の家族、そして、「なぜ彼はバットマンになったのか」という謎につながっていくんです。なぜ彼は(バットマンに)変貌したのか?変貌しなければならなかったわけです。それこそが私のやりたかったことであり、これまでとの違いを作る方法でした。

つまり、私は意図的にオリジンをやりませんでした。なぜなら、オリジンを避ければ、それは決定的なものになるし、その中でオリジンに言及する、というのが新鮮だと思ったからです。

THE BATMAN-ザ・バットマン-
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

──バットモービルのデザインもこれまでとは違いますね。今回のバットモービルはマッスルカーのようです。

そうです。今回のブルースなら、どんなバージョンのバットモービルを求めるだろうかと想像したんです。(『ダークナイト』の)ノーランのものも素晴らしかった。あれは戦車のようで、すごく理にかなっていましたね。

ただし今回のブルースは、活動初期で、もっと孤独なんです。まだルーシャス・フォックス(※バットマンのテクノロジー開発者。『ダークナイト』ではモーガン・フリーマンが演じたキャラクター)もいないし、手助けしてくれる人はいない。彼はギアヘッド(※車やバイクなどのメカに興味を持っている人)でもあって、自分のガレージでキットカーを組み立ててしまうような男なんです。そこで、彼ならマッスルカーのようなものを組み立てるだろうと考えました。

そもそも、バットモービルは何のために用意するのか?何の目的で作るのか?だって、普段から街中でバットモービルを乗り回すわけじゃないでしょう?だから、何か特定の目的があるはずなんです。彼は「脅威」として作っているんです。それは、バットスーツに関しても同じです。

なので、今作でマッスルカー的なバットモービルが影の中から出現するのは、バットマンが影の中から出現することと同じなのです。スティーヴン・キングの『クリスティーン』(1983)みたいにしたかった。犯罪者たちを威嚇するわけですよ。あそこに何者かがいる、闇の中から出現する、とね。彼の正体は不明であり、恐怖を生み出すんです。まるで幽霊のようにね。

この作品で私が行ったことは、その全てに「もし彼が現実に存在したら、どんな人物だろうか」といったフィルターを通しています。それをやってから、他作品との差別化や新鮮さを図っています。だからバットモービルも新しいし、バットスーツも新しい。全てが新しいんです。お馴染みの要素にも触れてはいますけれど、これまで見たことのないような形で、新しい光を当てられた姿を見つけてくれたら嬉しいです。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューさせていただきました。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly