なぜ『モータルコンバット/ネクストラウンド』は前作主人公コール・ヤングが脇役に回ったのか? ─ 「アベンジャーズじゃないアベンジャーズが出ているようなもの」と脚本家

映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』では、前作『モータルコンバット』(2021)で主人公を務めたコール・ヤングの扱いが大きく変化している。前作では観客の視点を担うオリジナルキャラクターとして物語を導いたコールだが、本作ではカール・アーバン演じるジョニー・ケイジが中心的な存在となり、物語の重心もゲームでおなじみのキャラクターたちへと移された。
なぜ、前作主人公は後退することになったのか。脚本を務めたジェレミー・スレイターが、その経緯を米Varietyに語っている。
この記事には、『モータルコンバット/ネクストラウンド』の内容に触れています。
前作『モータルコンバット』(2021)で物語の中心に置かれていたのが、ルイス・タン演じる映画オリジナルキャラクター、コール・ヤングだった。かつては総合格闘技の選手だったが、現在は地下格闘技のリングで日銭を稼ぐ日々。そんな彼は、ある時、胸に刻まれたドラゴンの痣をきっかけに、地球と魔界の命運をかけた戦いへと巻き込まれていく。
やがて明らかになるのは、コールが真田広之演じるハサシ・ハンゾウ、すなわちスコーピオンの血を引く末裔であるという事実だ。選ばれし戦士たちがそれぞれ固有の力“奥義”を覚醒させていくなか、コールはなかなかその力を引き出すことができない。しかし、家族を守るためにレイコ将軍と対峙した時、ついに衝撃を操るアーマーを生み出す力に覚醒。終盤ではハンゾウの血が付いたクナイを通じてスコーピオンを呼び戻し、サブ・ゼロとの戦いに決着をつけた。

つまり前作のコールは、観客と同じ目線で『モータルコンバット』の世界に足を踏み入れ、ハサシの血筋として物語の核心に接続される“視点キャラクター”だった。ところが続編『モータルコンバット/ネクストラウンド』では、その立ち位置が大きく変化している。コールは物語の中心から退き、代わってカール・アーバン演じるジョニー・ケイジが主役級のキャラクターとして登場するのだ。
脚本家のスレイターによれば、コールの扱いを変える案は、複数の脚本家が集められたラウンドテーブルの場で先にアイデアが挙がっていた段階だったという。「その時は僕が書いていたわけではなかったので、他人事だったんです」とスレイターは振り返る。「ただ座ってアイデアを出しているだけなら、“あのキャラクターを殺せばいい”と言うのは簡単です」。
もっとも、スレイターはコール役のルイス・タンに対して強い敬意を示している。「彼は俳優として本当に素晴らしいし、人間としてもすばらしく、世界レベルの武術家です」としたうえで、問題は俳優本人ではなく、キャラクターの立ち位置にあったと説明した。
コール・ヤングは、ゲーム版には登場しない映画オリジナルのキャラクターだ。スレイターによれば、前作におけるコールの起用は、スタジオ側の意向によるものだったという。観客が物語に入り込むための“視点キャラクター”が必要とされていたのだ。
しかし、シリーズのファンにとっては事情が異なった。『モータルコンバット』には、長年愛されてきたキャラクターが数多く存在する。リュウ・カン、ソニア、ライデン、スコーピオン、サブ・ゼロ、そしてジョニー・ケイジ。ファンは30年以上にわたって、そうしたキャラクターたちの活躍をスクリーンで見たいと待ち望んできた。
スレイターは、ファンの反応をこう例えている。「『アベンジャーズ』映画にアイアンマンやキャプテン・アメリカがいるのに、そこにボブという人物がいて、“こいつはアベンジャーズじゃないだろう”と思われるようなものです」。
つまり、コールがスクリーンタイムを占めるほど、ファンが本当に見たいキャラクターたちの出番が減ってしまう。スレイターは、そこに不満が生まれることを理解していた。「ファンは30年待って、これらのキャラクターと時間を過ごしたいと思っている。そこに本来のキャラクターではない人物が時間を使っていると、反感が出てしまうんです」。
その結果、『ネクストラウンド』では、前作で不在だったジョニー・ケイジが本格参戦。カール・アーバンが演じるこの人気キャラクターが、物語の新たな中心人物として据えられることになった。ジョニーはゲーム版でもシリーズを代表するキャラクターのひとりであり、映画スターという設定も含めて、実写映画との相性は高い。前作であえて温存されていた存在が、続編で物語の顔となった形だ。

一方で、スレイターはコールの扱いについて完全な終止符を打ったわけではない。「『モータルコンバット』の世界では、死は決して永久的なものではありません」とスレイターは語る。「コール・ヤングを再び見ることはないかもしれませんが、だからといって、何らかの形でルイス・タンを再び見ることがないという意味ではありません」。
さらにスレイターは、本作におけるいくつかの“死”が、単なる退場ではなく今後の物語につながる可能性も示唆している。決断が難しかったキャラクターの死についても、「長期的な計画がある」とし、「それらの死の一部は、将来のストーリーを準備するために必要なものだった」と説明した。
前作では、ゲームファン以外の観客を物語へ導くために、コール・ヤングという新しい視点が用意された。しかし続編では、ファンが長年求めてきた“本来の『モータルコンバット』”へと舵が切られた。ジョニー・ケイジを中心に据えた構成は、その象徴といえるだろう。
『モータルコンバット/ネクストラウンド』は公開中。
Source:Variety


























