ノーラン『オデュッセイア』が3時間以下なのはIMAX上映設備が物理的に限界だったから

クリストファー・ノーラン監督の最新作『オデュッセイア』は、上映時間2時間52分とされている。前作『オッペンハイマー』(2023)の3時間をわずかに下回った背景には、IMAXフィルム上映設備の物理的な限界があったという。
ノーランは米Letterboxdのインタビューで、「フィルムプリントでは、今も3時間が限界です」と説明。約20年にわたってIMAX作品で協働してきたデヴィッド・キーリーから、3時間を超えることが困難な理由を直接教えられたと明かしている。
IMAX 70mmフィルムは、劇場の映写室にある巨大な円盤状の装置「プラッター」に載せて上映される。ノーランはこれまで、プラッターをさらに大型化できないか、フィルムの端を固定する方法を変更できないかとキーリーに要求してきたという。
しかしキーリーは、映写室にノーランを連れていき、ある部品を示した。3時間の壁を超えるには、そのアームを含む映写システム全体を作り直さなければならず、さらに世界中のIMAXシアターに新たに導入するのは現実的ではない。そこでノーランも、最終的には「分かった。3時間未満にする」と受け入れた。
これはデジタル方式を含むIMAX上映全般の時間制限ではなく、巨大なフィルムプリントを使用するIMAX 70mm上映の問題。『オッペンハイマー』のIMAX 70mmフィルムは全長約11マイル、重さ約600ポンドに達し、上映時間3時間で既存設備の限界付近まで使い切っていた。
ノーランは2008年の『ダークナイト』以来、作品を重ねるたびにIMAXの用途を広げてきた。当時はドキュメンタリーなどで使われることが多かったIMAXフィルムカメラをハリウッドの長編劇映画へ持ち込み、銀行強盗やカーチェイスといった大規模シーンを撮影。60ポンドを超えるカメラを屋上やヘリコプターへ運び込み、約3分ごとにフィルムを交換しながら撮影を進めた。
続く『ダークナイト ライジング』(2012)では、IMAX撮影の割合をさらに拡大。撮影中には、キャットウーマンのスタントダブルがバットポッドに乗ったままIMAXカメラに衝突する事故も発生した。負傷者はいなかったが、カメラは破壊されたと伝えられている。
『インターステラー』(2014)では、2時間47分7秒に及ぶIMAXフィルムプリントを実現し、当時のIMAX上映最長記録を更新。『ダンケルク』(2017)では、全体のおよそ75%をIMAXフィルムで撮影し、巨大なカメラを航空機や船舶に搭載した。墜落場面の撮影では、模型機のコックピットに積まれたIMAXカメラがフィルムごと海底に水没する事態にも見舞われた。
『オッペンハイマー』では、当時存在しなかったIMAX撮影用の65mm白黒フィルムをコダックに開発させた。IMAXカメラ用の防水特殊レンズも新たに製作され、科学現象を表現する極端な接写撮影に用いられている。
そして『オデュッセイア』では、長年の課題だったIMAXカメラの作動音を抑える防音装置「ブリンプ」や新型カメラを導入し、長編劇映画として史上初となる全編IMAXフィルム撮影を実現した。防音装置を装着したカメラは約300ポンド(約136キロ)にも達し、撮影可能時間は一度につき約2分半から3分。それでもノーランは、会話場面を含む全編をIMAXで撮り切った。
新型カメラには、ノーランが「IMAXの師」と仰いだキーリーの名が付けられた。キーリーは『オデュッセイア』の作業を終えた約3週間後に亡くなっており、本作も彼に捧げられている。
『オデュッセイア』の2時間52分は、約20年にわたってIMAXの限界を押し広げてきたノーランが、物理的な限界の直前まで攻めた上映時間ということになりそうだ。映画は2026年9月11日、日本公開。国内でのIMAX上映も決定している。
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Source:Letterboxd




























