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故ロバート・ダウニー・シニア、幻の監督作『パトニー・スウォープ』日本初公開決定 ─ ポール・トーマス・アンダーソンら、後世の監督に影響

パドニー・スウォープ

2021年7月、85歳でこの世を去ったロバート・ダウニー・シニア。息子でありハリウッドを代表するスター俳優ロバート・ダウニー・Jr.は父の死に際し、ハリウッドに組せずあくまでインディペンデントにこだわった父親について「彼はアメリカ映画界における偉大なる真の異端児だった」と語った。

それから約1年となる2022年夏、1969年製作の『パトニー・スウォープ』が日本初公開となることが決定した。舞台は1960年代のニューヨーク。マディソン・アヴェニューの名門広告会社の創業者が突然亡くなり、会社の唯一の黒人役員(といっても楽曲担当)であるパトニー・スウォープが、予想外の結果によって新社長に選出される。早速、スウォープは会社の名前を変更し、ほぼすべての白人役員を解雇。破壊的で奇抜だが、悪趣味ともいえる広告キャンペーンは次々とヒット商品を生み出し、会社は新たな成功へと飛躍していく。その最中、スウォープは国家安全保障への脅威であるとして、アメリカ大統領ミミオの陰謀に巻き込まれることになり……。

パドニー・スウォープ

本作品が全米映画ファンの間で新たに注目を浴びるきっかけとなったのは、2016年にナショナル・フィルム・レジストリーに選出され、その後マーティン・スコセッシが設立したフィルム・ファンデーションとアカデミーフィルムアーカイブによって、2019年にデジタル復元がなされたことである。この復元においては、アメリカの優れた映画を後世に残すことを目的として設立されたジョージ・ルーカス・ファミリー・ファンデーションの資金援助も得ている。

『パトニー・スウォープ』は、ジム・ジャームッシュやポール・トーマス・アンダーソンなど、多くの映画作家に影響を与えた作品として知られる。特にアンダーソンは本作品を最も影響を受けた作品の一つに挙げ、『ブギーナイツ』(1997)で創造したドン・チードルが演じるバック・スウォープというキャラクターは本作へのオマージュだ。また、ダウニーを役者として『ブギーナイツ』や『マグノリア』(1999)で起用した。

パドニー・スウォープ

パドニー・スウォープ

1969年の全米公開時、『パトニー・スウォープ』は独自の過激なユーモアで世の中のあらゆる欺瞞を風刺する時代の先駆者そのものの映画だった。ポスターが刺激的すぎるとして、各地の映画館で掲載拒否運動が起こったというエピソードも有名で、「最も悪意に満ちた悪徳の映画」(デイリー・ニューズ)と酷評される一方、ジェーン・フォンダがテレビで「『イージー・ライダー』も凄いけどもう一本見るべき映画が『パトニー・スウォープ』」と語るなど、評価は真っ二つ。アメリカン・ニューシネマの到来に沸くアメリカ映画界も、時代の先を行き過ぎた本作の過激さを受け入れ切れずにいた。

パドニー・スウォープ

それから50年の時を経て、BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が声高に叫ばれる現代は、その先見性をどのように見るか。2022年の今、まさにタイムリーな作品が蘇る。

映画『パトニー・スウォープ』は2022年夏、渋谷ホワイトシネクイントにて公開。順次全国公開予定。

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THE RIVER編集部THE RIVER

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