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『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の熱狂とは ─ 「シリーズ史上最高傑作」との評価も

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
Photo by Dick Thomas Johnson https://www.flickr.com/photos/31029865@N06/35410503460/

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)の劇場公開から2年が経過した。『ローグ・ワン』は、『スター・ウォーズ』史上初のアナザー・ストーリーであり、『エピソード3/シスの復讐』(2005)と『エピソード4/新たなる希望』(1977)の間に起こった出来事を描く物語。『新たなる希望』のオープニングクロールで描かれた、「デス・スターの設計図を盗んだ」人々についての作品だ。

2016年の公開当時、『スター・ウォーズ』をめぐる状況は――わずか2年前とはいえ――現在とは大きく異なった。前年、2015年には10年の沈黙を破る実写映画の新作『フォースの覚醒』が登場。ディズニー傘下のルーカスフィルムによって、シリーズが劇的な再起動を遂げた“直後”だったのだ。その状況下にあって、次に放たれるシリーズの新機軸が「『新たなる希望』に直結する前日譚」であるという趣向は実に気が利いていた。

公開までには製作トラブルも伝えられた本作だったが、それでも『ローグ・ワン』の公開直前、そして公開直後、『スター・ウォーズ』ファンはこの新作映画に熱狂したのである。当時の様子とともに、今もなお「スター・ウォーズ最高傑作」とすら語られる作品への評価を整理してみたい。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

28分間の試写会

2016年12月16日の劇場公開に先がけて、同年12月3日(米国時間)、『ローグ・ワン』の“28分間の”試写会がメディア関係者を対象に行われていた。本作を手がけたギャレス・エドワーズ監督は全編の上映を望んだというが、秘密主義で知られるルーカスフィルムは、あえて133分中28分のみを見せるという戦略に打って出た。しかし、この作戦は思いのほか大きな反響を呼ぶことになる。

スティーヴン・ワインストローブ氏(Collider)
「正直に言って、素晴らしいルックでした。とても広い視野、いくつも登場する世界、すさまじいアクション。とてもよかった。再撮影や製作のトラブルといった話題は問題になりません。本当に素晴らしい映像で、もっと観るのが楽しみです。」

ケヴィン・ポロウィ氏(Yahoo!)
「今のところ、とても良いです。非常に骨太で、K-2SOは楽しい。さらに感情が揺さぶられることになるでしょう。」

IMDb(インターネット・ムービー・データベース)
「懐かしくて新しい。ファンのみなさんは満足することでしょう。」

スコット・チットウッド氏(ComingSoon.net)
「とってもスター・ウォーズで、だけどぜんぜんスター・ウォーズじゃない。」

この段階へ至るまでに、ギャレス監督は“『スター・ウォーズ』らしからぬ、戦争映画のような映像表現を目指した”という旨のコメントを随所で発表していた。しかし実際に本編映像を観た人々からこうしたコメントが出てきたことは、ファンの期待感を煽るには十分だったのだ。米国のあらゆるメディアで全編への期待が語られ、映像への驚きが表現され、ジン・アーソやキャシアン・アンドー、K-2SOといったキャラクターへのポジティブな言葉が並んでいた。

ワールド・プレミアでの絶賛

そして2016年12月10日(米国時間)、『ローグ・ワン』はロサンゼルスのパンテージ・シアターにてワールド・プレミアを迎えている。上映が終わるや、一部試写時の前評判を裏切らない絶賛評がオンラインにはあふれたのだった。

デイン・クック氏(俳優・コメディアン)
「『ローグ・ワン』を観ました。史上最高の『スター・ウォーズ』映画かも、と言いましょう! 何度も何度も、繰り返し観るのが楽しみです。」

ウィル・ウィトン氏(俳優)
「『ローグ・ワン』くらい大好きな『スター・ウォーズ』を最後に観たのは、1977年(編注:『新たなる希望』公開年)のことでしたね。」

ケヴィン・スミス氏(映画監督・脚本家・俳優)
「ホーリー(聖なる)・シス!『ローグ・ワン』は信じられないほど良かった!まぎれもなく『帝国の逆襲』レベルの素晴らしさ!『スター・ウォーズ』ユニバースの見事な一章だ。」

『ローグ・ワン』の全編を目撃した人々の中には、さっそく、本作がたしかに従来の『スター・ウォーズ』とは異なる映画であることを言葉にし始める者も出てきていた。

スティーヴン・ワインストローブ氏(Collider)
『ローグ・ワン』には最初から最後まで心をつかまれました。驚くべきアクションと、ファンが大好きになる脚本の融合。みんなが幸せになることでしょう。第三幕(クライマックス)が本当に素晴らしいんです。『スター・ウォーズ』史上最高のアクションもあります。なるべく早くまた観ないと。」

アンソニー・ブリズニカン氏(Entertainment Weekly)
「『ローグ・ワン』が骨太の戦争映画ではないことを心配しているみなさん、もう心配しなくても大丈夫です。激しくて、容赦のない映画です。その気骨をたしかに味わえます。楽しい映画になることは予想していました。でも、感動で胸が詰まることは予想していませんでした。真に勇ましい場面や、今の私たちに必要な言葉があるのです。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

『ローグ・ワン』は劇場公開を迎えたあと、オリジナル3部作から『スター・ウォーズ』を愛してきたファンには、描かれざる物語を描ききった快作にして『スター・ウォーズ』の精神を継承する一本として愛され、新たな観客にもシリーズのイメージを刷新する作品として受け入れられた。日本国内のプロモーションでものちに声高に語られる「スター・ウォーズ史上最高傑作」との言葉は、決して間違ってはいないのだ。

米国の大手映画批評サイトRotten Tomatoesにて、本作は批評家スコア84%、観客スコア86%(2019年1月29日時点)という高水準を達成している。批評家・観客の両方からこれほど大きな支持を受けたのは、『帝国の逆襲』(1980)、『フォースの覚醒』、『新たなる希望』に次いで4番目。同サイトの数字がすべてではないものの、ひとつの指標としては十分に認められるものだろう。

『ローグ・ワン』の絶賛を受けて、ディズニー/ルーカスフィルムは、ディエゴ・ルナ演じるキャシアン・アンドーを描くドラマシリーズの製作を決定。こちらは2019年に米国でサービスが開始される新映像配信サービス「Disney+」の独占コンテンツになるという。『ローグ・ワン』の熱狂をふたたび起こすことができるのか、そのお披露目に期待がかかる。

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』MovieNEXは発売中。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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